東北地方の年平均気温は過去最高に 地球温暖化で変わる気候
先日、気象庁から、去年2020年の天候のまとめが発表されました。それによると、東北地方の平均気温は、平年差+1.2度。これまでの最高は、1990年の平年差+1.1度ですから、それを0.1度上回り、1946年の統計開始以来、最も高くなりました。
気温が過去最高となった要因として挙げられるのが、地球温暖化と年々の自然変動です。
この冬の寒さは自然変動の範囲内
この冬は、昨シーズンとは打って変わって、寒さが厳しくなっています。日本付近で偏西風が南に蛇行し、極側の寒気が流れ込みやすくなっているためです。一見、近年の地球温暖化と逆行しているようにも思えますが、地球温暖化は、長期的に見て平均気温が上がってきているということで、ある特定の期間だけ見ても意味がありません。温暖化の気温の上昇幅よりも、年々の自然変動による気温の上下動の幅の方がはるかに大きく、温暖化していても寒い冬はやってくるわけです。この冬の寒さは、年々の自然変動の範囲で起こっていると言えます。
地球温暖化の影響はどれくらいあるか?
東北地方の平均気温が過去最高になったことに関して、地球温暖化の影響がどの程度あったのか。これは、詳細な評価(「イベントアトリビューション」という)が必要になるので、はっきりとしたことはわかりません。ただ、地球温暖化が進めば、高い気温が出やすくなるとされています。去年の高温は、自然変動の影響が大きいとみられますが、それを底上げしているのが地球温暖化であるといえるわけです。
東北地方の将来は?
東北地方の年平均気温は、年々上がってきています。この100年で1.30度上がりました。特に1990年以降は高温になる年が頻発しています。これには、年々の自然変動に加え、地球温暖化が影響しているものとみられています。
では、東北地方は、将来的にどこまで気温が上がってしまうのか。これに関しては、気象庁が詳細なシミュレーションを行っています。今後の温室効果ガスの排出量によって違ってきますが、エネルギー源のバランスを重視しつつ、高い経済成長を目指す「AⅠB」シナリオでは、今世紀末の年平均気温は、20世紀末と比べて、3度程度上昇するとされています。日々の気温変化で3度は大したことない数字ですが、年平均で3度は非常に大きな数字です。
さらに、最も高いレベルで温室効果ガスを排出し続けた場合、4~5度程度上昇する予想となっています。例えば、東北地方を代表する都市・仙台の年平均気温は、現在の福岡と同程度になるとされています。
地球温暖化は避けられない?
菅総理大臣は、去年10月の所信表明演説で、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにするという目標を示しました。2015年に採択された「パリ協定」の、いわゆる「2度目標」(世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2度より十分低く保つ)実現のために動き出したことになります。ただ「2度目標」という言葉からも想像できるように、実現できたとしても、地球温暖化の進行を完全にストップすることはできず、今後も気温はゆるやかに上昇するとされています。温室効果ガスは、長期にわたって空気中に滞留し、これまで排出した分の影響が今後も続いていくことが予想されます。
地球温暖化に適応する努力も必要
今後は、地球温暖化した社会に生活のスタイルを合わせていくことも必要になります。これを、地球温暖化の「適応策」と言います。東北地方で言えば、主要産業の一つである稲作のイネの品種を、より高温に対応できる品種に変えていくなどの対策を講じる必要があるかもしれません。
温室効果ガスの排出を抑えて、地球温暖化の進行を遅らせることは大前提です。ただ、それだけではどうにもならない部分があることにも目を向けなければいけません。
▼参考資料
仙台管区気象台「東北地方の気候の変化」
仙台管区気象台「東北地方の地球温暖化予測情報」
文部科学省・気象庁「日本の気候変動2020」