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宇宙=ブラックホールで、私たちはブラックホールの中に住んでいた!?

どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。

今回は「宇宙の全物質を網羅した表が公開される」というテーマで動画をお送りします。

宇宙には様々な大きさと重さを持つ「もの」があります。

日常スケールでは、人間など地球に住む多細胞生物など、ミクロなスケールでは細菌や、原子、それ以上に分解できない最小単位の粒子である素粒子などが挙げられます。

またマクロなスケールでは惑星や恒星などの天体、恒星が大量に集まった銀河、銀河団などの構造などもそうです。

そんな宇宙に存在するあらゆる「もの」を、その半径と質量をもとにまとめて比較できる一つの表が公開されました。

その表は単純ではあるものの、「宇宙自体がブラックホールかもしれない」「ブラックホールの特異点は大きさがあるかもしれない」など、宇宙の本質に迫るような非常に興味深い洞察を得られます。

本動画では新たに公開された表について、その見方と、ここから得られる興味深い洞察についても詳しく解説していきます。

●表の重要部分の見方

○横軸と縦軸

Credit: Lineweaver et al.,American Journal of Physics, 2023.
Credit: Lineweaver et al.,American Journal of Physics, 2023.

この表は、宇宙に存在するあらゆる「もの」を、その大きさ(半径)と質量をもとに、一度に比較できるようにしたものです。

表の横軸が「もの」の半径で、単位は下を見ると「cm」、上を見ると「メガパーセク(約326万光年)」換算となります。

そして縦軸が「もの」の質量で、単位は左が「グラム(g)」と「太陽質量(M〇)」、右はエネルギー換算です。

E=mc^2という有名な公式により、「もの」が持つ質量はエネルギーでも表記が可能です。

横軸と縦軸の数値は対数表記なので、実際の数値は「10の(表記されている数値)乗」となります。

例えば縦軸の太陽質量の表記が「0」の場合、太陽質量の「10の0乗=1」倍、つまり太陽と同等の質量を持っていることを示しています。

実際その高さのライン上に太陽が記載されています。

ちなみに太陽半径は約10の11乗cmなので、cmの数値を見ると約11となっています。

また天の川銀河は、横軸から10の22乗~23乗cmの半径と、縦軸から太陽の10の12乗倍の質量を持っていることが理解できます。

○密度について

Credit: Lineweaver et al.,American Journal of Physics, 2023.
Credit: Lineweaver et al.,American Journal of Physics, 2023.

この表において、同じ密度の「もの」は、ある傾きの右肩上がりの直線上に並んでいます。

例えばウィルスや人間などの生命、地球や太陽など、原子が集まって構成される「もの」は、単体の原子と同程度の密度であることを示す直線状に並んでいます。

ここで左にズレるほど半径が小さく高密度に、右にズレるほど半径が大きく低密度になります。

太陽と質量は同程度だが、非常に小さく高密度な天体である「白色矮星(White Dwarf, WD)」と、さらに圧倒的に小さい超高密度天体である「中性子星(Neutron Star, NS)」は、太陽の左側に順に並んでいます。

また、青で着色されている領域は、銀河や銀河団など、天体同士が間隔をあけて重力で結合している巨大構造が分布する領域です。

青の領域は、単一の原子や、それが密集した生命の体や天体などの単一の「もの」より低密度であるため、原子と同程度の密度を持つ「もの」が並ぶ直線を右に平行移動した直線上に並んでいます。

○ブラックホールと禁止区域

Credit: Lineweaver et al.,American Journal of Physics, 2023.
Credit: Lineweaver et al.,American Journal of Physics, 2023.

ブラックホールは右肩上がりの直線上に並んでいます。

ただしブラックホールが並ぶ直線は、同程度の密度の「もの」が並ぶ直線よりも傾きが小さい点に注意です。

つまり大きいブラックホールほど、事象の地平面以内は低密度になっていくことを示しています。

実際に巨大なブラックホールほど、生きたまま事象の地平面内部に入ることができる可能性があると言われています。

具体的には、太陽の430万倍の質量を持つ「いて座A*」のような、超大質量ブラックホール(SuperMassive Black Hole, SMBH)の中で最も軽い部類のブラックホールならば、人間や太陽など、単体の原子や、原子が集まって形成された「もの」と同程度の密度を持っていることがわかります。

また、超大質量ブラックホールの中でも最大級のブラックホールクラスになると、その事象の地平面以内の密度は青い領域で示された、銀河や銀河団クラスの低密度となります。

ブラックホールの並ぶ直線を、少し異なる角度から考えてみましょう。

ある質量を持った「もの」を、質量を維持したまま圧縮すると、重力が強くなりすぎて、脱出速度が光速と等しい「事象の地平面」が形成され、それ以内からはあらゆる「もの」が脱出できなくなります。

これがブラックホールです。

あらゆる「もの」は圧縮するとブラックホールになり、低質量の「もの」ほど、ブラックホールにするために非常に高密度に圧縮する必要がある、とも解釈できます。

ある質量のブラックホールをそれ以上に圧縮することはできません。

つまりブラックホールが並ぶ直線より左側の領域は、一般相対性理論で説明不可能な、「物質が存在できない禁止区域」となります。

○素粒子と禁止区域

Credit: Lineweaver et al.,American Journal of Physics, 2023.
Credit: Lineweaver et al.,American Journal of Physics, 2023.

素粒子もまた、「コンプトン限界」の直線上に並んでいます。

難しすぎて僕自身詳しく理解できていないのが本音ですが、ある質量の「もの」がコンプトン限界よりも小さくなると、量子力学的な効果によってその「もの」の存在自体が曖昧になり、意味をなさなくなるそうです。

そのためコンプトン限界の直線より左側の領域もまた、量子力学で説明不可能な、「物質が存在できない禁止区域」となります。

宇宙に存在するどんな極端な物質でも、ブラックホールが並ぶ直線とコンプトン限界の直線に挟まれた領域に存在しています。

●特に興味深い2つの点

Credit: Lineweaver et al.,American Journal of Physics, 2023.
Credit: Lineweaver et al.,American Journal of Physics, 2023.

この表には、特に興味深い2つの点が見受けられます。

「Hubble radius」と書いてある黒丸の点と、「instanton」と書いてある白丸の点です。(どちらも強調のためピンクの丸でも囲っています)

○観測可能な宇宙自体が示す点

地球から観測可能な宇宙は、現在は地球を中心とした半径約465億光年(hubble radius, ハッブル半径)の球内です。

観測可能な宇宙の内部に存在する全物質の総質量も概算されています。

これらを踏まえて、観測可能な宇宙自体をこの表にプロットすると、黒丸の箇所になります。

すると驚くべきことに、観測可能な宇宙自体がブラックホールが並ぶ直線状に重なってしまうのです。

これをそのまま素直に解釈すると、「観測可能な宇宙自体がブラックホールである」ということになります。

ただしこの主張が正しいためには、観測可能な宇宙の外には本当に何もない「真空」が広がっている必要があるそうです。

実際は、観測可能な宇宙以遠にも地球近傍と変わらない普通の宇宙空間が続いているという考えが主流です。

黒丸がブラックホールの直線状に並ぶのは本当に興味深いですが、「単なる偶然である可能性が高い」とされています。

○インスタントン(instanton)

ブラックホールが並ぶ直線と、コンプトン限界の直線は直交しており、交点は「インスタントン」と呼ばれます。

インスタントンが、この宇宙で存在し得る最も小さい「もの」であり、その半径は、現代物理学における長さの最小単位である「プランク長(約1.616×10-35m)」です。

それより小さい長さは、現在物理学では記述できません。

インスタントンはとてつもなく小さいですが、0ではない有限の大きさを持つということが重要です。

インスタントンの存在は、宇宙の始まりの瞬間や、ブラックホールの特異点が、大きさがない点ではなく、有限の大きさ(プランク長)を持つ点である可能性を示唆しています。

また、インスタントンより左側の領域は、一般相対性理論と量子力学の両方に違反しています。

そのためこの領域を理解するためには、これらの理論を統合させた「量子重力理論(Quantum Gravity theory, QG)」が必要とされています。

単純な表ながらも、最大から最小まで、宇宙の究極の領域にも話が及ぶ、壮大な表でした。

https://pubs.aip.org/aapt/ajp/article/91/10/819/2911822/All-objects-and-some-questions
https://cosmosmagazine.com/science/graph-measures-objects-universe-black-hole/
https://www.universetoday.com/163927/everything-in-the-universe-fits-in-this-one-graph-even-the-impossible-stuff/
ブラックホールの中に別の宇宙が広がっている説
https://www.ipmu.jp/ja/20201224-PBH-multiverse
https://www.icepp.s.u-tokyo.ac.jp/docs/kouen_satou.pdf

「宇宙ヤバイch」というYouTubeチャンネルで、宇宙分野の最新ニュースや雑学などを発信しているYouTuberです。好きな天体は海王星です。

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