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日米株価の急落はチャートを意識した動きとも

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 ここにきての米国株式市場や東京株式市場の大幅な下落は、あらためてFRBの利上げが意識されたこともあるが、チャートを意識したテクニカルな動きであった可能性がある。

 米国の代表的な株価指数であるダウ工業株30種平均株価のチャートをみると2020年3月に18000円近くまで下落後、上昇トレンドが最近まで継続していた。じりじりと上昇し過去最高値を更新し続けるなど、ゴルディロックスとも呼ばれた相場ともなっていた。

 調整らしい調整もなかったところに、物価の急激な上昇を背景とした金融政策の引き締めが現実化したことで、ここにきての大きな調整売りになったともみられる。

 東京株式市場では日経平均の3万円が心理的な壁となりつつあったところに、米株の調整売りが入ったことで連れ安となった格好に。いまのところ日銀に動きはなさそうで、米株の下落によって買い方がポジション調整を迫られた格好か。

 ドル円は2020年1月の102円台からの上昇相場が続いている。こちらはここにきて調整売りとなるわけではなく、むしろ上昇が加速しつつある(円安ドル安が進行)。

 ドル円は米債の動きを睨んでと思われる。2020年3月に米10年債利回りは一時、0.31%まで低下したあと上昇基調となり、ここにきて節目の1.9%を付けてきた。ここでいったん押し目買いも入りそうだが、2%に向けて再び上昇してくる可能性も高い。それに対して日本の10年債利回りが上昇したといっても0.155%程度に過ぎない。

 原油先物のチャートを確認すると、WTI先物は2020年4月に一時マイナスに転じたあと、こちらも上昇基調となり、90ドル近くまで値を戻してきた。こちらはまだ勢いがありそうで、100ドルが視野にはいりつつある。

 原油価格の上昇と円安は日本の物価をさらに押し上げる可能性があることにも注意する必要があろう。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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