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それでも代表選圧勝で始まる蓮舫民進党「反転攻勢」は「政権選択政党」にまでつながるのか

高橋亮平日本政治教育センター代表理事・メルカリ経営戦略室政策企画参事

「二重国籍問題」の影響は極めて限定的で「蓮舫圧勝」の公算

民進党の代表選挙が盛り上がらない。

唯一盛り上げているのが本質ではない蓮舫議員の「二重国籍問題」くらい・・・

そんな中、昨日この問題に大きな進展があった。

蓮舫氏が台湾籍が残っていたことを明らかにし、「混乱を招いたことをおわびしたい」と陳謝したのだ。

「違法性はない」と重ねて強調し、民進党代表選についても撤退しない意向を示した。

同日のテレビの番組では「籍を抜く作業が終わったら、この問題は終わる」と述べているが、ここまでくるとそんなに甘い話ではなくなる。

ただ、このまま戦った際の民進党代表選への影響はそれほど大きくはない。

マスコミ報道でも「蓮舫優勢」との声が大きいように、数字上でも過半数をうかがう勢いだ。

蓮舫氏が優位とされる党員・サポーター、地方議員の郵送投票は昨日13日に締め切られた。

偶然にもそのタイミングでの「台湾籍保有」の公表となった。

こうした状況の中では民進党代表選挙はこのまま圧勝でもって蓮舫氏が代表に当選する可能性が極めて高い。

当初の蓮舫代表による「反転攻勢構想」とは

これまでも、『蓮舫代表になっても無投票で「社会党末期の道」ならむしろ「小池新党」に期待が集まる』(http://blog.livedoor.jp/ryohey7654/archives/52065919.html)、『蓮舫・前原・玉木3候補が出揃った。民進党は2020の政権政党創造を目指せ!』(http://blog.livedoor.jp/ryohey7654/archives/52066477.html)などと、この民進党代表選挙について書いてきたが、蓮舫氏が代表になることへの期待は、間違いなく「選挙への強さ」であった。

その「反転攻勢」の第1手は、10月11日告示となる衆議院補欠選挙だった。

小池知事の転身による東京10区と、鳩山邦夫元総務大臣の死去に伴う福岡6区だが、次期参院選は2019年、衆院の任期も2018年という中で、自民党を2敗に追い込める可能性のある野党にとっては絶好のチャンスだった。

自民党にとっては、東京10区では小池新党が噂される中で、知事選で造反した若狭勝衆議院議員の対応という微妙な問題を抱え、福岡6区では既に自民党県連が公認申請している候補と鳩山邦夫氏の次男である鳩山二郎前大川市長の分裂選挙が確定的であり、非常にやりづらい選挙になっているからだ。

10月までに小池新党が結成されて若狭氏が離党して出馬となれば政局は荒れるが、それでも蓮舫氏が衆院10区に鞍替え出馬すれば圧勝の可能性があった。

たかが補選ではあるが、政局にとっては選挙の影響は大きく、こうした「反転攻勢」は、民進党に大きく風邪を吹かせ、この勢いのまま成果の出ない経済政策に対して対案を示し、解散に追い込み総選挙ということにでもなれば、政局は一変する可能性もあった。

しかし蓮舫氏は9月4日時点で既にこの補欠選挙での東京10区への鞍替えは否定している。

ではどう言った「反転攻勢」を考えているのだろうか。

一方で衆院への鞍替えについては前向きの発言が続く。

噂されるのは自宅のある東京5区(目黒区など)や隣の6区(世田谷区)、海江田さんの東京1区(千代田、港、新宿区)菅さんの東京18区(武蔵野市など)なども噂されている。

こうした選挙区で古い民進党との決別を発信しながら「反転攻勢」という戦略なのかもしれないが、それほどうまくいくだろうか。

今回の「二重国籍問題」を受け、仮に12月にもとも噂される解散総選挙が実施されたとしても、当初のイメージ通りに事が進まなくなってきている印象を受ける。

蓮舫氏を代表にという追い風になったのは間違いなく「選挙に強い」というそのイメージだ。

仮にその選挙で結果が出せないということになってくると、その状況は一変する可能性がある。

野党第1党の代表は、「攻め」だけではなく「守り」も求められる

こうした中、野党第1党とはいえ代表にもなれば「攻め」だけでなく「守り」も求められることになる。

その第1弾は、今月末にも召集される臨時国会にも日本維新の会が提出すると言っている、国会議員や国家公務員らが日本以外の国籍を持つ「二重国籍」を禁じる法案への対応だろう。

蓮舫氏としては、台湾籍の離脱手続きを進め、早期幕引きを図りたいところだろうが、法案が出れば象徴としてこの問題が取り扱わられることは間違いない。

代表選における蓮舫氏の説明を聞いていても二転三転することも多く、本質的な回答を行っていない印象を受けることが多かった。

国会での議論の中でもこうしたことになると、民進党への支持を上げるどころか、国民の印象を悪くしていく可能性もある。

そのためにも、「攻め」と同時に「守り」をどう乗り切るかも重要になってくる。

今回の代表選挙においても、民進党執行部は、代表選挙のやり直しや、蓮舫氏への代表選挙辞退への働きかけなどを行う選択肢もあった。

こうした中で特に大きな動きを取らなかったことは、この問題はそれほど大きな問題ではないという判断の中での対応なのだろうが、逆に国民や社会が大きな問題だと捉えることになった場合には、蓮舫氏個人の問題だけに止まらず、民進党全体の対応に対する問題に波及する可能性もある。

歴代代表は「年金未納疑惑」や「堀江メール問題」でも辞任

図表: 民主党代表の辞任理由一覧

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先日のコラム『蓮舫・前原・玉木3候補が出揃った。民進党は2020の政権政党創造を目指せ!』(http://blog.livedoor.jp/ryohey7654/archives/52066477.html)でも書いたように、民主党時代、代表経験者はわずか7人しかいない。

鳩山由紀夫氏、菅直人氏、小沢一郎氏、岡田克也氏、海江田万里氏、野田佳彦氏、前原誠司氏であるが、その全員が任期満了以外の代表辞任を経験している。

選挙結果によって代表辞任したのが3名、記憶に新しいのは2014年12月の総選挙で自らの議席を失ったため海江田代表が辞任、2012年12月には総選挙に敗北し政権から転落した責任を取って野田代表が辞任、2005年9月には郵政解散による総選挙で大敗し岡田代表が辞任している。

もう一つが政治と金による辞任で2名、2009年5月に自身の献金問題のけじめを取り次期選挙に向けて挙党態勢をとるためとして小沢代表が辞任、それを引き継いだ鳩山代表も自身の政治と金の問題で辞職した。

今回注目したいのは、それ以外の代表辞任理由だ。

鳩山由紀夫氏、菅直人氏は2度も代表辞任に追い込まれているわけだが、振り返って冷静に見ると、本当に辞任しなければならなかったのだろうかと思う部分もある。

政局とは、そんな問題で追い込まれていくということだ。

中でも民主党代表辞任の代表的な事例として取り上げられることも多いのが、「年金未納問題」と「偽メール問題」だ。

前者は、2004年の国会期間中に、当初3人の国務大臣の年金未納が発覚、「ふざけてますよね。“未納三兄弟”っていうんですよ」と年金未納問題批判を行っていた民主党代表だった菅直人氏自身にも未加入が発覚し、辞任に追い込まれた。当時の小泉内閣の首相を除く閣僚17人のうち7人にも未納・未加入の事実が指摘され、福田康夫 内閣官房長官も辞任に追い込まれ、最終的には110人を超える議員に未納期間があったことが明らかになった。

この菅氏の年金未納問題、菅氏は当初から行政側のミスであると何度も主張したが、行政側がその都度強く否定し、マスコミ報道等による世論により辞任に追い込まれたのだが、実際には、辞任後になって社会保険庁側が間違いを認め、国民年金脱退手続きを取り消したこと、同期間に国民年金の加入者であったことを証明する書面が送付されており、菅氏が主張したとおり国民年金の資格喪失は「行政上のミス」によるものであったことが明らかになっている。

言い換えれば「濡れ衣辞任」といったところだろうか。

もう一つの「偽メール問題」は、2006年の第164回通常国会において、当時の民主党衆院議員がライブドア事件および堀江貴文氏にまつわる質問を行った際に、証拠とされた電子メールが捏造であったことが発覚し、質問した議員は辞職。代表となったばかりの前原誠司代表含め民主党執行部は総退陣に追い込まれたというものだ。

結果的に代表辞任にまで追い込まれるきっかけになったのは、前原誠司代表が党首討論を前に「期待しておいてください」とで新たな証拠を提示し疑惑解明に期待感を持たせる発言であり、この発言から執行部まで関与したとして責任問題にまで波及した。

いずれの問題も今考えれば、「こんなことで!?」である。

「二重国籍問題」がこうした規模の問題になることは大いにある。

「政権選択政党」となるべき民進党の役員人事とは

図表: 政権選択政党のポジションイメージ

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これまでのコラムでも再三再四言ってきたことではあるが、今回の代表選は、たかが野党第1党の代表選挙ではなく、多くの国民の将来にとっても重要な選挙であると認識している。大袈裟かもしれないが、この選挙の結果如何によって、その後の日本の政治が大きく変わるのではないかと思うのだ。

繰り返しになるので、敢えて詳しくは書かないが、どうすれば「政権選択政党」になれるのかを真剣に考えてもらいたい。

代表選挙が終われば、次の争点は役員人事になる。

今回の代表選挙で蓮舫氏を応援した人たちへの論功行賞になってはいけない。

蓮舫氏の推進人を見ると、野田グループと言われる「花斉会」、横路グループや赤松グループと言われる旧社会党系の「新政局懇談会」、川端グループ・高木グループと言われる旧民社系の「民社協会」、代表選工房の当初は割れていたものの一本化した細野グループと言われる「自誓会」、旧維新の党は完全に分裂選挙になっており、そのうちの「旧結いの党」議員などが名前を連ねていることが分かる。

こうした支持団体がどれだけ今後の民進党運営の中で幅を利かせていくことになるのか、こうした中で誰がどのポジションに着くのかといったところについても、国民のみなさまにしっかりとチェックして行ってもらいたいと思う。

民主党時代からありがちの選挙が終わったら対立候補も要職に取り入れるということも含め、注目してもらいたい。

データに基づく蓮舫・前原・玉木3氏の評価

最後に、そうは言っても国会議員の投票日はまだ明日である。

準備しながら盛り上がらない代表選挙の中で、すっかり出しそびれた感があるが、3候補者の国会での活動データと、政治資金データについても紹介したい。

前者は、国会議員の活動データを集積する会で集積し、NPO法人万年野党が評価した第183国会から第189国会までのデータであり、こうした活動データで見ると、知名度では劣る玉木氏の国会での活躍がめざましいことが見えたりもする。

野党にたいして期待するのは、1つには国会での質問での問題の本質を明らかにすることと、修正していくことであり、さらに野党第1党としては、今後さらに代案を示し、法案提出していく立法能力である。

これまでもデータを見て共有してもらいながら、一方で、有権者や国民も民進党がそういう政党になろうとしているのかどうかを厳しい目で見ていく必要がある。

是非、こうした点にも注目してもらいたい。

後段の誠意資金のデータは、政治資金透明化プロジェクト(http://pft-project.jp)によって公開されているもので、日大の岩井奉信教授や毎日新聞の与良正男さんらとともに高橋亮平もプロジェクト呼びかけ人に名前も連ねさせてもらった。こうしデータは、有権者の皆さんもラポールジャパン(https://rapportjapan.info)のサイトから公表されている2014年の国会議員関係政治団体における政治資金情報を見ることができる。

今回の民進党代表選挙もそうだが、今後の選挙や日頃の国会議員の活動についても是非、こうしたデータについても見てみる習慣がついてくると、国会議員を見る目も変わってくるのではないかと思う。

図表: 民進党代表選立候補者3名の国会活動データと政治資金データ

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日本政治教育センター代表理事・メルカリ経営戦略室政策企画参事

元 中央大学特任准教授。一般社団法人生徒会活動支援協会理事長、神奈川県DX推進アドバイザー、事業創造大学院大学国際公共政策研究所研究員。26歳で市川市議、全国若手市議会議員の会会長、34歳で松戸市部長職、東京財団研究員、千葉市アドバイザー、内閣府事業の有識者委員、NPO法人万年野党事務局長、株式会社政策工房研究員、明治大学世代間政策研究所客員研究員等を歴任。AERA「日本を立て直す100人」に選ばれた他、テレビ朝日「朝まで生テレビ!」等多数メディアに出演。著書に『世代間格差ってなんだ』(PHP新書)、『20歳からの社会科』(日経プレミアシリーズ)、『18歳が政治を変える!』(現代人文社)ほか。

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