男装ユニット・風男塾が10周年 初期メンバーが全員卒業し、新体制で次の10年へ
初期メンバーが全員卒業。新たな体制で臨む、11年目
男装ユニット・風男塾(ふだんじゅく)が、結成10周年を迎えた。今年3月には初期メンバーである青明寺浦正(せいみょうじ・うらまさ)と赤園虎次郎(あかぞの・こじろう)が卒業し、新メンバ―二人を迎え入れ、新たな体制で次の10年へ向け、歩き始めた。その最初の大きな舞台となるのが、10月7日日比谷野外音楽堂(以下野音)で行われる『FUDAN10KU LIVE 10th ANNIVERSARYin野音』のステージだ。初期メンバーはもういない。新陳代謝を繰り返し、進化を続ける、瀬斗光黄(せと・こうき)、愛刃健水(あいば・けんすい)、仮屋世来音(かりやせ・らいと)、藤守怜生(ふじもり・れお)、紅竜真咲(くりゅう・まさき)、草歌部宙(くさかべ・そら)の6人に、10年という伝統をどう捉えているのか、野音へ向けての決意、これからへの意気込みなどを聞いた。
「今は10年間を全て語れるメンバーはいないが、先輩達も変わらず支えてくれている」(愛刃)
風男塾は2008年にお笑い芸人・はなわプロデュースでデビューして以来、様々な変化と進化を続けながらここまで走り続けてきた。初期メンバーが全員卒業し、在籍期間が現メンバーの中では長い愛刃は「まず10周年を迎える時に自分が存在すると思っていませんでした。風男塾は生まれ変わることを繰り返しているので、今は10年間全てを語れるメンバーがいないんです。でも過去の映像もたくさんあるので、加入時期は違ったとしてもメンバーそれぞれが色々な想いで10年という歴史を感じていると思います」と語った。卒業したメンバーは、今もライヴやイベントに顔を出し、後輩達へ様々なアドバイスをくれるという。そういう意味でメンバーは入れ替わったが、風男塾のDNAは脈々と受け継がれている。「だから先輩達は離れているようで、離れていないんです」(愛刃)。
「ファンの方にも先輩達の事を色々教えていただき、歴史を感じる」(藤守)
昨年4月に加入した藤守も、早くも“先輩”になった。「引っ張っていく側になりつつあります。俺のテーマカラーは紫色で、初代はリーダーだった紫集院曜介君でした。2011年に卒業して、紫色はそれ以来で、ファンの方も曜介君の事を色々教えてくれるのですが、そういうところで10周年というか、長い間先輩方が引っ張ってきてくれた事を実感しました」。
「突然一番上になって戸惑ったけど、とにかく何でも全員で話し合って、一緒に進んでいきたい」(瀬斗)
現メンバーの中で一番在籍期間が長い瀬斗は「こんなに長くいる事にびっくりしていますし、10周年を迎える時に自分が一番上っていうのも、加入当初は全く考えていませんでした。でもこうやって、初期メンバーがいなくても続いているのが改めてすごいと思います」と、振り返り、さらに「突然一番先輩という立ち位置になって、どうしていいかわからなかったのですが、健水君と俺が何事も先陣を切っていくというよりは、何でもみんなで話し合って決めてやっていきたい。すごく頼り甲斐のある後輩達なので助かっています。俺もそうだったけど、やっぱりついていくだけでは後輩も育たないと思うし、それをこの8年間で学びました。とにかく何でも話しあって、一緒にやっていきたい」と、風男塾の強さの秘密を教えてくれた。
「これからは俺達が新しい風男塾を作っていく。その試金石が野音ライヴ」(仮屋世)
2014年に加入した仮屋世は「節目の10年でベスト盤を発売して、イベントでも過去曲を歌う機会もたくさんあって、俺も途中加入ですけど、改めてすごいグループだなって思いました。でも、今まで続けてきてくれた事に感謝する気持ちはここまでで、11年目は俺達が新しい風男塾を作っていかなければいけない。その一発目の野音でのライヴがすごく勝負だと思っているので」と、新しい時代を切り拓きたいという強い思いを語ってくれた。
「今は先輩達とのステージ、レッスン、普段の生活、全てが勉強」(紅竜)
今年3月に加入した紅竜は「他の女性アイドルさんにない魅力として、女性の時と男性の時、同時に感じられて一度で二度美味しいところが魅力的だと思いました。外から見ていた時にすごく仲がいいというか、ライヴやテレビでも和気あいあいとしていて、それは入ってみても変わらない部分です。先輩達とのレッスン、ステージ、普段の生活、全てが日々勉強になっていて、曲と振り付けを覚えるのが大変ですが、皆さんが一緒に頑張ろうって支えてくれるので、感謝の気持ちしかないです」と、瞳を輝かせながら語ってくれた。
「これから頑張って、今の風男塾っていいよねって言ってもらえるようになりたい」(草歌部)
同じく3月に加入した草歌部は、実は風男塾のオーディションに一度落ちて、ようやくメンバー入りできた事もあり、風男塾に賭ける思いは人一倍強い。「歌う事は元々好きだったのですが、この声の低さとテンションの低さではアイドルなんて絶対無理だろうなと思っていました。でも風男塾の存在を知って、カッコよくて、ライヴに行ったり、映像を観ているうちにどんどん好きになって。でもオーディションを受けてもうまくいかなくて……。ただ諦めた事は一度もなくて、加入させていただけて感謝しています。素敵な先輩方に囲まれて、自分の未熟なところもすごく感じるので、もっともっと頑張って、今の風男塾っていいよねって言ってもらえるようになりたいです」と涙ながらに語っていた。草歌部が話す順番が来ると、藤守からサッとティッシュが渡されるほどの泣き虫で、頑張り屋だ。メンバー同士の息もピッタリだ。
2014年の野音ライヴ経験者は二人。「ライヴの楽しさは更新しているけど、野音で感じた気持ちよさを超えるものはない」(瀬斗)
仮屋世も言っていた、勝負の日比谷野音ライヴ。2014年に行った同所でのライヴを経験しているのは瀬斗と愛刃だけだ。「あの時ステージに立った瞬間緊張しすぎて、ライヴの事はあまり覚えていないです(笑)。でも客席の光景だけは覚えています」(愛刃)。「今までやったライヴの中で、一番と言っていいくらい、言い表せないほど気持ちよすぎて、アドレナリンが出まくっていました。中野サンプラザ公演ももちろん気持ちよかったのですが、正直、野音で感じたものを超えるものがまだないんです。もちろん、ライヴの楽しさを更新していっているのは間違いないのですが、あの野外の独特の雰囲気と気持ち良さ、あれに代わるものはないと思っています」(瀬斗)。
「先日175Rの復活ライヴを野音で観て、初めての野音だったのですが、すごく気持ち良くて、周りをビルに囲まれた緑の中で、どんどん暗くなっていって、音楽が響いていて、何この神秘的な空間は…という不思議な感覚でした。だからそんな舞台に立てるなんてすごく楽しみで、もうアドレナリンが出ています(笑)」(仮屋世)。「俺は音楽の趣味は父親の影響を受けていて、忌野清志郎さんとかが結構好きで、そんな父親が野音で唯一観たアーティストが忌野清志郎さんらしくて。「え、そこに立つの?すごいな。絶対観に行く」って言ってくれて、そういうところから凄さを感じています」(藤守)、「正直恐怖以外ないですが、でもこの先輩達とならできる!という気持ちに変わってきました」(紅竜)、「前回の野音の映像を観させていただいてここでやるんだって改めて気合が入りました。メンバーが変わっていて、自分達が加入してどう見えるんだろうと考えると、ドキドキしています」(草歌部)。
「野音のセットリストは、今までメンバー、スタッフと何度も話し合い、今まで一番時間をかけて作った」(愛刃)
新しい一歩に相応しい舞台にするために、メンバー、スタッフ共に気合が入っているようで、そのセットリストも気になるところだ。「アニバーサリーなので、ベスト盤的な内容のライヴになると思うのですが、セトリを決めるのが大変で、1か月くらい悩んで、それをなしにしてまた1からやり直すという事を繰り返しました。今までこんなに時間をかけてセトリを作った事はないです」(愛刃)。「スタッフさんも風男塾に対する愛とか熱量がみんなすごいので、ぶつかり合うんです。メンバーとも相談して、いいセトリになっているので当日がすごく楽しみです。お天気が心配ですが、大丈夫です、俺が晴れ男なので(笑)」(瀬斗)。
野音はこれまでの集大成であり、これからの風男塾を感じてもらう場
瀬斗は、常々1万人クラスのアリーナでライヴをやる事が目標と言っている。一歩一歩階段を上がっているという意味では、野音も通過点でしかない。「そうです、通過点に過ぎない!(笑)まだやりたい事がたくさんあるので、その一部を野音でまず観てもらって、トントントンって次に登っていきたいです(笑)」。野音は確かにこれまでの集大成ではあるが、新たな風男塾としての方向をファンに示す、所信表明の場でもある。瀬斗は新生風男塾のテーマを今だからこそ「心をひとつにする事」だと言っている。「先日、6人で行ったツアーのファイナルをO-EASTでやったのですが、その時、3年前の野音で感じた感覚と同じ気持ち良さを感じて。それはメンバー、スタッフが、同じ方向に向かってひとつになっている時に生まれるものです。この気持ちを持って、アニバーサリーのスタートダッシュを切れたら、絶対大きくなれると思います」。
それぞれが大きな“覚悟”を持ち、臨む大舞台・日比谷野音。グループ史上最強のチームワークで、ニューディケイドへの一歩を踏み出し、大きな足跡を残す。