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いまどきのペット事情...散歩なのに「犬をベビーカーに乗せる」ってどういう意味?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
バビーカーに乗る犬 撮影は筆者

最近、街の中や公園でベビーカー(カート)に乗っている犬を見かけることがあります。

犬は、走り回っているイメージがありますね。そして、散歩するはずなのに、犬がベビーカーに乗って飼い主が懸命に押している姿を見て、「なにか、おかしくない? 犬なら歩くべきよ。甘やかしすぎ」と舌打ちしている人もいるかもしれません。

しかし、そういうわけにはいかないことがあるのです。今回は、現在のペットにとっての「ベビーカー事情」を解説します。

シニアの犬

写真:YATA/イメージマート

ほんの20年前なら、犬の寿命も10年もないぐらいでしたが、最近では15年以上生きている子も多くいます。

シニアの犬(約7歳以上)は、やはり元気でも長い時間、お散歩するのが不得意になってきていることが多いです。そんなとき、ベビーカーに乗せると、人でいうところの車椅子の代わりにもなるわけです。

家から公園まではベビーカーに乗せて、公園でゆっくり散歩しているのです。寄る年波には勝てない犬がいる時代です。

貧血の子

犬や猫が、がんや慢性腎不全などで、貧血をしている子もいる時代です。ペットに貧血があるの?と思われるかもしれませんが、長寿になり、常に貧血気味の子もいます。そんな子も短い散歩をさせたいときに、ベビーカーに乗せると転倒の予防ができたりします。そのような子もベビーカーに乗っています。

心臓病の子

犬の小型犬に多い疾患で、僧帽弁閉鎖不全症というものがあります。シニアになると、小さな犬には珍しくない疾患です。

心臓病の子は、喜びすぎる、吠えるなど興奮すると、咳をしてチアノーゼを起こして倒れる場合もあります。

そんな子は、ベビーカーに乗せていると、他の犬に吠えることも少なくなるしし、興奮も抑えることができます。もし、咳き込んでもベビーカー内で安静を保つことができやすいからです

ベビーカーがテリトリーに

写真:Paylessimages/イメージマート

動物病院が混雑して犬が待っているときに、ベビーカーに乗っていると、自分のテリトリー感覚になれるので、ストレスが減ります。

ベビーカーの中に愛犬のお気に入りのフリースやクッションを入れることができるからです。それに他の犬も床より少し高いので、簡単に近寄ってくることができません。小型犬なら、ベビーカーに隠れることもできます。

犬がマーキングする

写真:アフロ

犬にリードをつけて歩かせていると初めてのところに行くと自分のテリトリーにしようとして、マーキングすることがあります。そのためオムツのようなマナーベルトもあります。でも、歩かないと、マーキングをしないので、ベビーカーに乗せておくと安心ということがあります。

犬が苦手な人 ペットアレルギーの人がいる

世の中には、犬が苦手な人、そしてペットのアレルギーの人がいます。そんな人のためにもベビーカーに乗せておくと、閉じた空間になるので、迷惑になることが少なくなります。そのために、ベビーカーに入れて移動をします。

マンションの共有部分は抱っこなので

写真:アフロ

最近は、ペット可のマンションも増えています。

それでも自分の部屋は大丈夫なのですが、階段、廊下、エレベーターなどの共有部分は、抱っこかケージに入れることになっているところが多いです。

その点、ペット用のベビーカーだと、玄関で犬を乗せてそのまま散歩に連れていくことができます。外までずっと抱っこが難しい飼い主には、ペット用バビーカーは助かりますね。

寒い日も暑い日も快適

写真:PantherMedia/イメージマート

ベビーカーに乗せると、地面から距離が出来るので、夏の熱中症対策になります。コンクリートのところは、ベビーカーに乗せて公園まで行き草のある日陰を散歩すればいいのです。ベビーカーのルーフが、日傘の役目もしますね。

また、寒い日は、ベビーカー車に乗せると風よけにもなり、中にフリースなどでペットを包んでおけばいいですね。湯たんぽを入れている飼い主もいます。

いつでも一緒にいたい

いまや、犬は家族の一員という人も多くいます。

犬は長生きしてもやはり命は有限なのです。そのため、いつでも一緒にいたいという人も増えています。そのうえ、犬の中には、分離不安行動といって、飼い主と離れて不安になり、部屋のものを噛んだり、精神的にそわそわしたりする子もいます。そんな子の飼い主は、やはり一緒にいる時間を増やそうとして、ベビーカーに乗せてどこにでも連れて行こうとします。

飼い主の高齢化

写真:アフロ

犬がいつでも元気に動いてくれるといいのですが、座り込んで動かなくなることもあります。飼い主が、若くて抱っこして、家に連れて帰ることができるといいのですが、高齢の飼い主だとそういうわけにはいきません。

その点、ベビーカーに乗せて押せば、割合に簡単に家に連れて帰ることができるのです。

番外編 ペット用の高級なベビーカーとは?

エアバギーに乗っているわんちゃん 撮影は筆者
エアバギーに乗っているわんちゃん 撮影は筆者

ベビーの基準をクリアしたフレームのペット用カートがあります。日本生まれの3輪ベビーカー「エアバギー」のメーカーが製造しています。

耐荷重内であれば何匹でもご利用いただけます。

ペット用なので飛び出し防止用リードがついています。このベビーカーは、タイヤがエアチューブ、砂利道などの振動を軽減してくれます。そして、重心が低くて安定感があります。

人の赤ちゃん用とほとんど同じなので、お値段もやはり高めです。バージョンやオプションによって値段は違いますが、6万円以上はするようです。でもペットの乗り心地もよく、使いやすく、飼い主も歩きやすいようです。ペットの場合は、長生きになっているので、10年以上ペット用ベビーカーを使うことができます。そのことを考えると割安感がありますね。

まとめ

令和の時代になり、犬は家族の一員と思う人がより増えました。犬がベビーカーに乗るって、どういうこと? と思われていたかもしれません。寿命も飛躍的に延び、飼い主の気持ちも変化して、このようなペット用ベビーカーがあることをご理解いただければ、と思っています。

彼らは自分の脚で走り回りたいけれど、そうできないのです。筆者は、待合室で自分のベビーカーにいる犬を抱きかかえて、診察室に連れて入っています。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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