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世界的規模のメッセンジャーアプリ普及で台頭してきた「教科書には出てない英語、Pinglish」

佐藤仁学術研究員・著述家
Pinglishを解説する「えいごリアン」世代にはお馴染みのジャニカ

「Pinglish」(ピングリッシュ)という英語をご存じだろうか。

世界規模で急速に拡大しているスマホと、そこで利用されているメッセンジャーアプリでの英語での会話のことだ。日本ではほとんどの人が利用しているLINEだが、世界的にはWhatsAppやFacebookのメッセンジャーが多く利用されており、そこでは「Pinglish」という、簡易な英語で会話がされている。

2016年4月に「ジャニカの5秒で返信!英会話」という本を三修社から出版したジャニカが、2016年4月5日にイベントを都内で開催して、「Pinglish」の紹介をしていた。ジャニカはNHKでやっていた「えいごリアン」を見ていた世代にはお馴染みのタレントだ。メッセンジャーでメッセージが到着すると「Ping」とアラートがなることからジャニカはこのような英語を「Pinglish」と名付けた。「Ping me later!」( 後でSMS(ショートメッセージ)するね)のように「Text(テキスト)」と同じような感じで使われているそうだ。そういったテキストやスタンプなども含んだコミュニケーションツールの総称としてジャニカが「Pinglish」という名前を考え出した。

スマホのメッセンジャーには「Pinglish」がいっぱい

確かに海外の知人や友人の多くが利用しているのは見たことがあるが、「これは何を意味するのだろうか・・??」と思っていた用語、単語が多かった。例えば、メッセンジャーで海外の人が以下のような英語で表現をしているのを見たことがある人も多いだろう。

OMG:Oh My Gosh

WBU?:What about you?

MMM:yummy

NP:No Problem

GL:Good Luck

2moro:tommorrow

kk:Cool OK

tx:Thanks

txxxxxxxと感謝の気持ちが強いほどxが多い)

GNSD:Good Night, sweet dream

などだ。このくらいなら、日本人でもなんとか文脈から読み取れるものもあるだろうが、以下のような「Pinglish」はもはや純粋な日本人の理解を越えている。それでも欧米ではメッセンジャーでは老若男女問わず、広く利用されているようだ。

303:Mom(綴りが似ているから)

S^:Whats up?(発音が似ているから)

143:I love you(それぞれの文字数)

Food is a 10(10は10段階の評価で最高だから「食事は最高」の意味)

P911(親がいる予感、やばい。Parentsと米国の緊急通報の911)

**//(ウィンクのマーク)

14AA41:One for all, All for one

意味を聞くと「なるほどな」と思うものの多い。日本人が「109」と書いて「トーク」と読ませようとするのも同じようなものだ。

SMSが主流だった欧米で発展

Pinglish紹介イベントではロールプレイングゲームを交えて解説していた
Pinglish紹介イベントではロールプレイングゲームを交えて解説していた

海外では携帯電話の時代からショートメッセージ(SMS)を送信する文化があり、実は昔からこのような「Pinglish」は利用されていた。その背景として、SMSが20年以上前から利用されていた欧米では「SMSは1文字につきいくら」という料金設定だったので、利用者はSMS料金節約のために、このような短縮した英語が非常に発展した。さらに時代を遡ると、テレックスや、電報、その前のモールス信号の頃から、一文字いくらだったことから、省略英語は発達してきたそうだ。過去のFAXのマニュアルには「tx 4 YR FX(Thank you for your FAX)」は、学ぶべき英語として載っていたそうだ。このような背景から「Pinglish」はメッセンジャーアプリの普及によって、突然登場してきたものでも、決して若者だけの流行言葉ではないようだ。

そして欧米だけでなくアジア圏の人も「Pinglish」をよく使っている。世界規模でメッセンジャーアプリの普及によって、それらがコミュニケーションの中心になってきた。本でも海外の人とのメッセージのやり取りをする人が多くなるだろう。その時に「なんだ、この意味不明な文字は?」とか「文字化けか?」と思わずに、彼らはこういうスタイルでメッセージをするのだということと、それがどういう意味なのか、を理解しておくだけでも、慌てずにすむ。

またSMSの時代にはテキストで顔文字などを作成していたが、最近のメッセンジャーアプリはデフォルトでスタンプや絵文字が多数あるので、最近では海外でもテキストの顔文字は減少して、スタンプが多用されている。

なんでもアリの「Pinglish」

ジャニカ曰く、「Pinglish」にはいろいろなパターンや法則があるが、人によっていろいろなルールがあるので、相手によって使う「Pinglish」を変えながら、いろいろと使ってみることを勧めている。もちろん意味がわからなければ、通じないこともあるだろうが、そこは友人同士だから、何とかコミュニケーションもできるのだろう。教科書には出ていないリアルなコミュニケーションの英語をちょっと覗いてみるのも面白い。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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