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快投続く田中将大、ヒジの故障再発の懸念も霧散しオフにはFA宣言確実?

豊浦彰太郎Baseball Writer
躍動感あふれる田中将大の投球(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

田中将大がまたしても素晴らしい投球を披露し、ヤンキースは2連敗で始まったア・リーグ・チャンピオンシップシリーズで王手を掛けるに至った。おそらく、オフを迎えると彼は契約に盛り込んであるオプトアウト(契約破棄)の権利を行使するだろう。

日本時間10月19日に行われたこの試合、ぼくは6時起床で観戦を始め、6回裏途中で泣く泣くテレビを切って出勤した。したがって、田中にとっての最終イニングとなった7回を見届けることはできなかったのだけれど、彼の投球には大いに感銘を受けた。今回も低めにしっかりタマを集め、ストライクゾーンから大きく外れるボール玉はほとんどなかった。スライダーとスプリッターを中心とするスタイルはいつもどおりだが、イニングごと、打者ごとに配給パターンは異なっており、彼のクレバーさを再認識させられた。

公式戦最後の登板となった9月29日のブルージェイズ戦から4先発連続での快投で、田中株は一気に上昇した感がある。今季、開幕時点から田中に関する世間の注目ポイントが、冒頭触れたオプトアウトの権利行使の可能性だった。田中は2014年開幕前にヤンキースと7年総額1億5500万ドルというビッグな契約を結んだが、4年目終了後に希望すれば残3年分の契約を破棄し、フリーエージェントとなれる条項を盛り込んであったのだ。選手にとって、オプトアウトはFA相場が年々上昇する前提に立つと(実際そうなっている)とても重要な権利だ。田中は来季以降ヤンキースとの間に3年合計6700万ドルの契約を残すが、年平均2200〜2300万ドルはエース級FAが手にする額としてはもはやリーズナブルとすら言えるレベルとなった。

今季の田中は、特に前半戦はとんでもない乱調登板が少なくなかった。メジャー初年度にヒジの故障を経験した彼は、故障再発のリスクと時として訪れる背信登板で、不良債権呼ばわりされることもあった。

しかし、気が付いて見ると今季は基本的には故障なくローテーションを全うした。3年前のヒジの故障時にトミー・ジョン手術を回避した対処が間違っていなかったことが証明されたのだ。シーズンを通じた防御率は5点に近く被弾の多さが目立ったが、投球内容は球宴前より後半戦、レギュラーシーズンよりポストシーズンと尻上がりに良くなっている。来季開幕を29歳で迎える田中が、このオフFAになるなりFAになることをちらつかせヤンキースと交渉するなりすれば、現在の彼の価値とFA相場の上昇トレンドから年平均2200万ドルの3年契約を超える条件は容易に引き出せるだろう。いや、年平均2500万ドルの5年契約くらいなら十分視野に入るだろう。

この秋、田中に次の登板機会があるとすれば、それは夢のワールドシリーズの舞台になる。で、あるのにこの段階でオフの銭闘を話題にするのは少々気がひけるが、彼がオプトアウトを宣言する可能性は極めて高いと思われるし、そうすべきだ。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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