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「松坂大輔ゴルフ事件」、中日は罰を与えるのではなく擁護してあげるべきだった

豊浦彰太郎Baseball Writer
「平成の怪物」はWBC連覇の立役者で、令和の今も注目度は高い(写真:ロイター/アフロ)

練習日にゴルフをやった松坂大輔が中日からペナルティを受けた一件は残念だった。それは、彼がゴルフをしたからではなく、週刊誌から揶揄された選手を球団が守ってあげなかったからだ。

「役者」が揃いバズった

松坂は右肩負傷で2月にキャンプを離脱。リハビリを続けていたが、5月の二軍の練習日にゴルフをしていたことが週刊誌に取り上げられ、球団から処分を受けた。松坂は多くのファンからの批判にも晒されたが、このことに対しシカゴ・カブスのダルビッシュ有が松坂を擁護するツイートを発したこともあり、この一件は世間の大きな注目を集めることになった。

個人的にはダルビッシュ同様に「厳しすぎるんじゃないの」と思うが、今は世知辛いコンプライアンスの時代だ。まずは、その観点から是非を考えてみると、最終的には今回の松坂の行動が否定される文言が球団の規則にあるのか、またそれが選手に対し明確に示されているのか、ということになるのだろう。

球団規則上はグレーゾーン?

大スターであっても、練習をサボってゴルフに行ってはまずいと思う。しかい、今回の松坂の場合は、もともと練習には参加しない前提だった。チームを離れ関東の医師を訪ねるなら当然アイドリングタイムは発生する。その空き時間を自らの判断でゴルフに費やそうが、読書していようがあまり関係がないように思える。その間チームメイトは練習していたかもしれないが、何も朝から晩まで球団に拘束され猛練習を強いられている訳ではないだろう。では、練習時間から外れていたらオーケーなの?という枝葉末節論も出て来る。

ドラゴンズの球団規則にはどう書かれているのかは分からないが、結局そのあたりはグレーゾーンなのではないか。ある意味ではサラリーマンが出張帰りの新幹線の中で缶ビールをプッシュ、とやるのと同じだ。勤務時間内の飲酒は当然禁止で出張の帰路も勤務中だ。しかし、それを咎めるのは野暮というものだ。ということは、松坂ゴルフ事件も、解釈によっては許容範囲と言えなくもないと思う。一部には松坂の西武時代の道路交通法違反やそれに関連するスキャンダルとの関連性まで持ち出している声もあったが、彼とてこの業界でかれこれ20年生きている。「見つかんなきゃいいでしょ」という行為ではなかったと思う。

球団が守りたかったのは?

で、結論である。球団はなぜバッシングを受ける松坂を擁護するコメントを発表してあげなかったのか。松坂にとってもっとも大切なのは、一日も早く万全な体調を回復することだ。日々鍛錬が必要な二軍選手に付き合ってじっとしていることではないだろう。ダルビッシュのツイートではないが、肩を痛めた選手のリハビリには、ゴルフは気分のリフレッシュも含め悪くない選択かもしれない。なによりも復帰に向けてのステップもファンが望む早さではないかもしれないが、着実に進んでいる。

このように、松坂を守ってあげるステートメントの出し方もいくらでもあったと思う。しかし、球団が採った手段は、彼にペナルティを与え謝罪コメント出させることだった。ここで思う。もし、今回週刊誌に面白おかしく取り上げられる、ということがなかったとしても球団は同様にペナルティを与えただろうか?

選手を守ってあげるのは球団の務めだ。仮に内規上は好ましくなかったとしても、外部に対しては擁護する立場を取り、内部では誤解を招きかねない行為を戒めるということも可能だったと思う。

結局、球団が重視したのは、一日も早く幕引きしてしまうことだったのではないか。選手の立場より球団のメンツということだ。これは、残念と言わざるを得ない。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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