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デ・ヨングがバルサをアップデート。ポゼッションのDNAを持つ男に課せられたタスク。

森田泰史スポーツライター
パスを出そうと試みるデ・ヨング(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

アウェーチームのサポーターが、フレンキー・デ・ヨングに拍手喝采を送った。

リーガエスパニョーラ第9節、エイバル対バルセロナの一戦。リオネル・メッシ、ルイス・スアレス、アントワーヌ・グリーズマンの全3選手が初めて同試合において得点を記録した試合で、エイバルのファンが虜になったのはデ・ヨングだった。

2018-19シーズン、アヤックスが欧州の舞台で輝いた。デ・ヨング、マタイス・デ・リフト、ダビド・ネレス、ハキム・ジィエフ、ドニー・ファン・デ・ベーク...。若い選手が躍動して、チャンピオンズリーグで次々と強豪を撃破してベスト4に勝ち残った。

デ・ヨングは今夏、移籍金は固定額7500万ユーロ(約90億円)+ボーナス1100万ユーロ(約13億円)でバルセロナに移籍している。シャビ・エルナンデス、アンドレス・イニエスタが去って以降、中盤のエッセンスを失っているバルセロナに「+α」をもたらす選手として、大きな期待が懸けられた。

■ベテランのように

金髪をなびかせ、少年のような笑顔を見せながら、ベテランのようにプレーする。ピッチ上の振る舞いから、デ・ヨングの年齢を推し量るのは難しい。

デ・ヨングは7歳でヴィレム・トヴェーのカンテラに入団。実はその時、フェイエノールトからも誘いを受けていた。両親はフェイエノールトのファンだったが、デ・ヨングはヴィレムを選んだ。そちらの方が、自身が成長できると考えていたという。

アヤックスがデ・ヨングに目を付けたのは、2011年だ。まだ彼が14歳の時である。マーク・オーフェルマルス(現スポーツディレクター)が、ヴィレムのU-16でプレーしていたデ・ヨングが3度ボールに触ったのを見て、才能を確信したといわれている。ただ、この時もデ・ヨングはすぐにアヤックス移籍を決断しなかった。

ヴィレムの下部組織で出場機会を積んだのち、18歳でアヤックスに移籍した。ヴィレム時代のデ・ヨングはトップ下のポジションに据えられていたが、アヤックス移籍後、徐々にポジションを下げている。

■バルサをアップデート

だが、デ・ヨングの攻撃姿勢は変わらなかった。

デ・ヨングは単なるパサーではない。クラシックな司令塔タイプでもない。彼の特徴は推進力だ。中盤でボールを運べる。2018年にバロンドールを受賞した、ルカ・モドリッチのようだ。そして、インテリオール、ボランチ、アンカー、センターバックでプレーできる。だが、どのポジションに置かれても、意識は変わらない。最終ラインからのビルドアップで、プレスをかけてくる相手FWをドリブルで剥がしていく。

それは大きなリスクだ。ただ、4-3-3のシステムでポゼッション・フットボールを目指すアヤックスやバルセロナのようなチームでは、そういったリスクが許容される。

そのリスクを恐れない姿勢、ポリバレントさは、アヤックスとバルセロナの「創造主」である故ヨハン・クライフの遺産だ。以前、クライフとの比較を問われたデ・ヨングは、こう答えている。

「比較は意味を持たないと思う。自分の仕事に集中するよ。もちろん、彼と比較されるのは素晴らしいことだ。だけど、クライフのレベルには、まだ遠く及ばない」

昨季までアヤックスでダブルボランチの一角を担っていたデ・ヨングだが、右インテリオールという不慣れなポジションに着実に適応している。メッシ、スアレス、グリーズマンの「MSG」に注目が集まる中、バルサをアップデートするのは、この男だ。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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