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天理がタックルの雨降らせ3回戦突破!第98回全国高校ラグビー大会

多羅正崇スポーツジャーナリスト
花園第1グラウンドになびいた横断幕(筆者撮影)

タックル、タックル、タックル――。純白ジャージーに身を包んだ天理(奈良)が、聖地にタックルの雨を降らせた。

対戦した中部大春日丘(愛知)の宮地真監督は、天理の堅陣が印象的だった。

「タックルが良いですよね。出足の鋭い、伝統のタックル。思うようにボールが動きませんでした」

第98回全国高校ラグビー大会は1月1日に3回戦を迎え、東大阪市花園ラグビー場(第1グラウンド)では、天理が21-10で中部大春日丘を下し、ベスト8進出を決めた。

天理は1月3日の準々決勝で、春の選抜大会を制した桐蔭学園(神奈川)と対戦する。

舞台は高校ラグビーの聖地「花園」。(筆者撮影)
舞台は高校ラグビーの聖地「花園」。(筆者撮影)

■FW平均体重は約8キロ差。小兵FWが魅せたタックルの華。

今大会の春日丘のフォワード(FW)平均体重は、全参加チーム中トップクラスの約95キロ。

一方の天理FWの平均体重は約87キロ。自陣でのFW戦となれば苦しい展開が予想された。

しかも天理は先発15人中9人が2年生。下級生が過半数を占める布陣で、重量FW誇る春日丘と第1グラウンドで対峙した。

先制点はなんと開始1分。

春日丘が相手ゴール前でのモール攻撃から、LO村松(3年)が粘ってトライを決めた。

出鼻を挫かれた格好の天理だが、重量FWに対する心構えはあった。キャプテンのNO8照井悠ー郎(3年)が明かした。

「(春日丘のFW勝負は)想定はしていました。特にラインアウトモールやリモール(モールを組み直す攻撃)でくるイメージがありました」

「自分たちは小さいので、自分たちに対してはどのチームもああいう戦い方をしてくると思います」(NO8照井キャプテン)

FW勝負で先制トライを奪った春日丘。その後も強力FWがリモール攻撃などをしかけていく。

しかし天理はしのぎ続けた。

「小さいことを活かして、(相手のモールには)低く入ってドライブしました。1対1では勝てないので、1人の相手に2、3人で入って接点で勝っていこう、とこだわってきました」(NO8照井キャプテン)

大柄な春日丘へ2人、3人と人数をかけて挑み続けた天理。(筆者撮影)
大柄な春日丘へ2人、3人と人数をかけて挑み続けた天理。(筆者撮影)

■「想像を上回る素晴らしいディフェンスでした」

天理は前半5分にすぐ取り返すと、同13分には防御裏へのキックを捕球し、2連続トライを挙げる。

前半22分にはPG成功で3点追加し、13-7とリードを広げた。

6点を追いかける春日丘も前半終了前、ロスタイムを5分以上もオーバーする感動的なアタックをしかける。

しかし天理は一人目が足下に矢のように刺さり、相手が体勢をコントロールするより前に二の矢、三の矢が突き刺さる。

リモールに対しても、一人目がモール底部へ魚雷のように突っ込み、続いてドドドッと刺さって勢いを殺す。

「プレッシャーはあると予想していましたが、想像を上回る素晴らしいディフェンスでした」

悔しさをこらえて相手をそう称賛したのは、春日丘のSH岡本泰斉キャプテンだ。

春日丘は猛攻実らずトライが取れなかった。

しかし天理の反則によるPG加点(3点)はもぎ取り、前半を3点差(10-13)で折り返した。

■エリア獲りで優勢となった天理。

春シーズンの腓骨骨折を乗り越え、同期と共にチームを引っ張ってきた春日丘の岡本キャプテンは、ゲーム運びも敗因として挙げた。

「ビハインドのときのキック合戦で焦ってしまいました。ゲーム運びのところでやられました」

自陣でプレーを続ければ、いずれ春日丘FWが存在感を発揮してしまう。

天理にとっては強力FWという相手の長所を消すべく、まずはキックによるエリア獲りの攻防で負けないことが重要だった。

「ウチもボールさえ持っていれば前に出ることができたので、エリアを獲って、いかに中盤を制することができるかでした」(天理・松隈孝照監督)

この日の天理はSO水野(3年)とFB本田(2年)のキックが好調。

天理は花園直前に高校日本代表候補のFB津野来真が左足中足骨を骨折し、花園を欠場。しかしエースの不在を埋める攻守で、エリア合戦で優勢となった。

効率的に敵陣へ入り、スキル豊富なハイテンポのアタックを展開した天理。(筆者撮影)
効率的に敵陣へ入り、スキル豊富なハイテンポのアタックを展開した天理。(筆者撮影)

シンビンでも崩れなかった防御網。

ただ春日丘にも大きなチャンスはあった。

後半6分、天理の3点リード(13-10)の状況で、2年生FWがハイタックルでシンビン(10分間の一時退場)となったのだ。

激しいディフェンスが裏面に出たのか、14人となった天理――。

春日丘が反転攻勢を仕掛けるチャンスだったが、天理はここでPR中山(2年)の突破を足場に、逆に14人でトライを奪ってしまう。

さらにキック合戦へ持ち込み、後半17分には3点追加。スコアを21-10と広げてしまった。

シンビンで反転攻勢ができなかった理由について、春日丘のSH岡本キャプテンは「相手のディフェンスで自分たちに焦りが出てしまいました」と振り返った。

■ラストプレーも天理の好タックル。

天理11点リードのまま、試合は後半ロスタイムへ突入した。

ラストプレーは相手ボールスクラム。と、ここでスクラムからこぼれ出たボールへ反応してターンオーバーが起きる。

すぐに左隅を攻めた春日丘のWTB大藪(3年)は、左タッチラインを疾走した。

意地の独走トライか――。

そう思われたゴール直前で、天理のCTB前川(2年)が足元に飛び込んで相手の身体をタッチへ引きずりだした。

そしてノーサイド。最後も天理の猛タックルが光る展開となった。

後半ロスタイムのラストプレーは天理CTB前川の好タックルだった。(筆者撮影)
後半ロスタイムのラストプレーは天理CTB前川の好タックルだった。(筆者撮影)

破れた春日丘は3年連続で1月1日に花園を去ることになった。試合後に春日丘のSH岡本キャプテンは、後輩へメッセージを送った。

「去年の報徳学園戦(5-12)の悔しさを忘れずにやってきました。今日もこの悔しさを忘れず、踏み台にしてくれることが、彼らにとっていいかなと思います」

一方、ベスト8進出を決めた天理のNO8照井キャプテンは、「ディフェンスでみんなが身体を張り続けくれました」と淡々と語った。

豊富な運動量で60分間献身を続け、天理が小よく大を制した。 (了)

後半ロスタイムの失トライを防いだCTB前川に駆け寄る天理メンバー。(筆者撮影)
後半ロスタイムの失トライを防いだCTB前川に駆け寄る天理メンバー。(筆者撮影)

※試合ハイライト映像

スポーツジャーナリスト

スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める

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