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新型コロナワクチン接種後の血管炎リスク:皮膚症状から全身症状まで

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
ImageFXにて筆者作成

【新型コロナワクチン接種後の血管炎:その実態と注意点】

新型コロナウイルスのワクチン接種が世界中で進む中、稀ではありますが、接種後に血管炎という副反応が報告されています。血管炎とは、血管の壁に炎症が起こる病気のことです。今回は、ワクチン接種後の血管炎について、その症状や対処法、最新の研究結果をご紹介します。

【皮膚症状から始まる血管炎の兆候】

血管炎の症状は、まず皮膚に現れることが多いのが特徴です。接種後数日から2週間程度で、以下のような症状が現れる可能性があります:

1. 紫斑(皮膚の下で出血したような赤紫色の斑点)

2. じんましん様の発疹

3. 水疱やただれ

これらの症状が現れた場合、すぐに医療機関を受診することが大切です。皮膚科や内科の専門医が、症状の程度や全身状態を確認し、適切な治療を行います。

【全身に及ぶ可能性:腎臓や肺への影響】

皮膚症状だけでなく、全身に症状が及ぶケースもあります。特に注意が必要なのは、以下の症状です:

1. 腎臓の機能低下(尿の量が減る、むくみが出るなど)

2. 呼吸器の症状(咳、息切れなど)

3. 関節の痛みや筋肉の痛み

4. 発熱や倦怠感

これらの症状が現れた場合、血管炎が全身に広がっている可能性があります。すぐに医療機関を受診し、適切な検査と治療を受けることが重要です。

【治療法と予後:ステロイド薬が中心】

血管炎の治療は、主にステロイド薬を用いて行われます。症状の程度に応じて、以下のような治療法が選択されます:

1. 軽度の場合:ステロイドの塗布や内服

2. 中等度から重度の場合:ステロイド薬の点滴や内服、免疫抑制剤の併用

多くの場合、適切な治療を受けることで症状は改善します。研究結果によると、約70%の患者さんが完全に回復し、11%の方が部分的な回復を示しています。

ワクチン接種後の血管炎は非常に稀な副反応ですが、早期発見と適切な治療が重要です。皮膚症状が現れた場合は、躊躇せずに医療機関を受診することをお勧めします。

最後に、いくつか重要なポイントをまとめます:

1. ワクチン接種後の血管炎は稀ですが、注意が必要です。

2. 皮膚症状が最初の兆候となることが多いので、気をつけましょう。

3. 全身症状が現れた場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。

4. 適切な治療を受ければ、多くの場合は回復が期待できます。

ワクチン接種の利点は、依然としてリスクを大きく上回ります。特に、免疫系が弱い方にとっては、ワクチン接種が重要です。ただし、過去に血管炎や自己免疫疾患の既往がある方は、接種前に主治医と相談することをお勧めします。

参考文献:

Abuhammad, A., Albandak, M., Ayyad, M., et al. (2024). COVID-19 vaccine-associated vasculitis: A systematic review. SAGE Open Medicine, 12, 1-12. https://doi.org/10.1177/20503121241261165

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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