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仲邑菫初段が大阪から東京に移籍すると何が変わるのか

内藤由起子囲碁観戦記者・囲碁ライター
記者会見に臨む仲邑菫初段=2019年4月22日、大阪市北区、筆者撮影

強い棋士やライバルがたくさんいる東京で頑張りたい」と、仲邑菫初段が2021年1月1日より東京本院に移籍する発表がありました。

東京本院に所属するのと、大阪の関西総本部に所属しているのではどんな違いがあるのでしょうか。

送り出す関西の棋士と迎える東京本院所属の謝依旻六段の受け止めもききました。

仲邑菫初段が、来年1月1日から東京本院に移籍します。

「以前から東京で頑張ってみたいという話をしていました」と、師匠でもあり父親の信也九段。

来年4月から中学生になるので、このタイミングで移籍を希望したそうで、菫初段本人も楽しみにしていて、「歳の近い仲間と切磋琢磨しながら楽しくやって行ければ」と思っています。

一家で東京に転居しますが、今のところ、信也九段は関西総本部に在籍を続けるといいます。

棋士の受け止め

同じ関西総本部所属には、現在の碁界第一人者、井山裕太三冠がいます。

関西にいても強くなることはできるでしょうが、「勉強する環境は東京のほうがいい。やはりネットで打つのだけでは限界がある」と、関西総本部所属で井山三冠の弟分として知られる吉川一三段。研究会は東京のほうが多い。それが魅力だといいます。

ふだん東京に住んで勉強し、手合いのときだけ大阪に戻って打つ生活を村川大介九段や中野泰宏九段ら関西棋院の棋士が選んだこともあります。

吉川三段は「親が勧めたのかもしれませんが、菫ちゃん本人が東京に行きたいと言い出してもおかしくない。やりたいようにやるのが一番」と理解を示していました。

迎える東京本院所属、女流棋士史上最多の27タイトル獲得を誇る謝依旻六段も好意的です。「研究会など含め、やはり東京のほうが環境いい。公式戦で当たる相手も違ってきていい経験になります

予選手合いは地域ごと

挑戦手合制の七大タイトル棋戦などは、男女関係なく同じ土俵で打たれます

一番下のC予選から勝ち上がり、B予選、A予選、そして最終予選に勝ち残ると本戦トーナメントまたはリーグ戦を戦ってひとりが挑戦者となります。

C~A予選までは東京本院内と関西総本部、中部総本部の二カ所に分かれて打つことになります。

関西総本部所属は約50人、中部総本部は約30人で、棋士全体の15%ほど。東京本院に行けば、人数が多い分、違う棋士と当たることもプラスになると、謝六段はいうのです。

ただ、「色々な人と対戦するのはいいことですが、勝ち上がるのは大変」ともいいます。

仲邑初段は、これまでのように同期で一番の勝ち星をあげるような活躍は東京ではできない可能性もあるということでしょう。

それでも「苦労するとも限りませんよ。環境を変えることで気持が変わることもある。必ずプラスになるとは言い切れませんが、マイナスにはならない」と謝六段は後押しした。

今は実力をつけるとき。厳しい環境を菫初段自ら選んだのでしょう。

中学生のうちに女流タイトルを獲ることが、仲邑初段の最初の目標です。

来年からの活躍に期待したいと思います。

囲碁観戦記者・囲碁ライター

囲碁観戦記者・囲碁ライター。神奈川県平塚市出身。1966年生。お茶の水女子大学大学院修士課程修了。お茶の水女子大学囲碁部OG。会社員を経て現職。朝日新聞紙上で「囲碁名人戦」観戦記を担当。「週刊碁」「囲碁研究」等に随時、観戦記、取材記事、エッセイ等執筆。囲碁将棋チャンネル「本因坊家特集」「竜星戦ダイジェスト」等にレギュラー出演。著書に『井山裕太の碁 AI時代の新しい定石』(池田書店)『囲碁ライバル物語』(マイナビ出版)、『井山裕太の碁 強くなる考え方』(池田書店)、『それも一局 弟子たちが語る「木谷道場」のおしえ』(水曜社)等。囲碁ライター協会役員、東日本大学OBOG囲碁会役員。

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