フェラーリ本社からF1が町を通ってテストコースへ!レース再開に向け、ルクレールが意欲
新型コロナウィルス感染拡大の影響で休止中の「F1世界選手権」の再開に向け、各チームが動き出した。
F1の代名詞と言われる名門チーム「フェラーリ」は本拠地のイタリア・マラネロ市街地で、F1活動の再開を告げるデモ走行を実施。在籍2年目を迎えるシャルル・ルクレールが本社からテストコースに向けて町中を走って出陣した。
110日ぶりの走りは地元の町中で
「フェラーリ」の母国イタリアは今回のコロナ禍で多くの感染者が出て、3万人を超える人が命を落とした。
約2ヶ月に渡るロックダウンでフェラーリの工場は操業を停止。F1活動もオーストラリアGPが急遽中止されて以来、一切の走行ができていない。オーストラリアGPはフリー走行の直前でキャンセルとなったため、今季のF1カー「フェラーリSF1000」が走るのはバルセロナで行われたウインターテスト以来、約3ヶ月半ぶり(110日ぶり)のこと。
「F1世界選手権」はオーストリア・レッドブルリンクで7月5日(決勝)のオーストリアGPでシーズン開幕を迎えることになるが、そのキックオフとして行われた本拠地マラネロ市内のデモンストレーション走行は実に粋な演出だ。
今季用のマシン、SF1000はマラネロの中心部にあるフェラーリの本社工場からシャルル・ルクレールのドライブで市街地に出て、F1カーのデザイン工場の前を通り、フェラーリのテストコースである「フィオラノ・サーキット」へと自走で入っていった。
フィオラノ・サーキットは1周約3kmの自社テストコースで、創業者エンツォ・フェラーリがチームに相応しいレーシングドライバーを招いてオーディションを行ったことでも有名。フェラーリF1チーム「スクーデリア・フェラーリ」にとって大切な場所にF1マシンで乗り入れることは、まさにフェラーリの再出発を意味する演出だった。
早朝から行われたというデモンストレーション走行を担当したルクレールは「いつもは早起きすることはないんだけど、今日はそれに値する大きな理由があったね。僕がSF1000でマラネロの街をドライブしたことで、起こしちゃったかもしれない」とコメント。
「コクピットに戻るってことは家に帰ったような気分だよ。僕たちはサーキットに戻ってきたよと伝える楽しい演出だったね。オーストリアでSF1000をドライブするのが待ちきれないよ」と意欲を示した。
フェラーリの街、マラネロ
イタリア・モデナ県にある「マラネロ」は人口約1万7000人の小さな街だが、フェラーリの本社工場がある聖地として世界中の人々に知られる地名だ。
半径1km以内のコンパクトなロケーションに本社工場、フェラーリ博物館、フィオラノ・サーキットが点在するため、街の雰囲気はまさにフェラーリ一色。街の通りにはエンツォの息子、ディーノやアルベルト・アスカリ、タッツィオ・ヌヴォラーリらエンツォが愛したドライバーの名前が付けられているほか、ジル・ヴィルヌーブの銅像も町中にある。徒歩で散策し、フェラーリを存分に楽しめる街だ。
現在は著しくテスト走行が制限されているため、フィオラノ・サーキットで最新型のフェラーリF1が走ることはほとんどないが、フェラーリには旧型F1マシンを個人オーナーに販売する「コルサ・クリエンティ」というサービスがあり、フィオラノでは現在もオーナーのためのチェック走行が行われている。住民にとってはF1のエンジン音を聞くのはお馴染みかもしれない。
しかしながら、今季はF1が70周年を記念する年であり、初年度からF1 に参戦し続けるフェラーリにとってもF1参戦1000レース目を迎える節目の年だ。今回のデモンストレーションランはそんなお祝いの年に降りかかってきたコロナショックという苦境を新たな気持ちで乗り越えようという気持ちが伝わってくる演出だった。
新エースのシャルル・ルクレール、今季限りでフェラーリを離れることが決まっている元F1世界チャンピオンのセバスチャン・ベッテルによる2020年シーズンがいよいよ来月開幕する。