猫を虐殺し食べた大学院生が逮捕。「ノネコだから大丈夫だと思った」という主張は通るのか?
広島県呉市の山中で、猫にとっておぞましい事件が起こりました。
まいどなニュースは、大学院生が同市内の山中でわなにかかった猫の頭をバールのようなもので殴打するなどして殺害し、その猫を解体して自ら調理して食べたほか、毛皮や頭蓋骨の標本を作っていたと伝えています。
大学院生は「ノネコ(後で説明)なので、殺害しても大丈夫だと思った」と主張していましたが、その猫は地元の人が世話をしていた「地域猫」とわかりました。2023年3月28日までに、広島地検呉支部に動物愛護法違反の疑いで逮捕・送検された大学院生は処分保留のまま釈放され、検察が今後、任意での捜査を続けるそうです。検察は証拠不十分として2023年12月27日付けで不起訴にしました。
猫を殺害した動画に批判の声が集まる
同市内の山中にわなをしかけて、猫を食べて、その様子を動画投稿サイトにあげる(いまは削除されています)というのは、理解しがたい行動です。こうした生き物の尊い命を奪う行為に、地元の動物愛護団体だけではなく全国からネット上でも「信じられない」「残酷すぎてネコが可哀想で、なぜにこんな惨いこと」などの怒りの声が上がっています。
そもそも広島県に野生の猫は生息していないのです。日本の野生の猫は「イリオモテヤマネコ」と「ツシマヤマネコ」だけです。仮に同市にノネコがいても、それは人間が飼育放棄した猫がノネコになったのです。
「ノネコ」「野良猫」「地域猫」「飼い猫」の違いとは?
「ノネコ」「野良猫」「地域猫」「飼い猫」は、生物学的には、同じ猫です。
猫の生活様式の違いでこのように猫を分けています。
「ノネコ(野猫)」
野生化した猫で飼い主がおらず、山野などで主に野生生物を捕食して生きています。
「野良猫」
市街地または村落などを徘徊して、人から餌をもらう、家庭からでた残飯を食べている猫です。
「地域猫」
飼い主がいないけれど、地域のボランティアなどの人たちが世話をしている猫です。ほぼ不妊去勢手術などはされています。不妊去勢手術をした印として、耳をカットして「さくら猫」と呼ばれることもあります。
「飼い猫」
飼い主がいる猫で、基本的に家の中で飼われています。飼い主の中には、外に出す人もいます。首輪をつけていることが多く、マイクロチップが挿入されているので、わかりやすいです。
ノネコなら、食べてもいいのか?
文春オンラインは、以下のように伝えています。
つまり広島県農林水産局は、はっきり「ノネコは駆除の対象ではない」といっています。また、広島県猟友会もノネコの区別は難しいのでわなにかかっても放しているそうです。
なぜ、ノネコなどの言葉があるのか?
ノネコは、国内の希少動物の生息域に入って捕獲するのでこのような言葉ができたのではないでしょうか。
現在、環境省が例示している国内のノネコ被害は以下の通りです。
・北海道 天売島
ウトウ、ウミスズメ(捕食、繁殖地の攪乱)
・東京都 小笠原諸島
アカガシラカラスバト、オガサワラオオコウモリ(捕食、繁殖地の攪乱)
・鹿児島県 奄美大島と徳之島
アマミノクロウサギ、ケナガネズミ(捕食)
・沖縄県の山野
ヤンバルクイナ、ナミエガエル(捕食)
・長崎県 対馬
ツシマヤマネコ(生息域の競合と病気の媒介)
猫を外に出すと、島内の限りある獲物や縄張りを奪い合い、生存競争を激化させる、喧嘩によってケガを負わせるなどから、猫の伝染病である猫エイズウイルスを感染させる事が深刻視されています。
・沖縄県 西表島
イリオモテヤマネコ(生息域の競合と病気の媒介)
上の対馬と同じ理由です。
主な被害の内訳は、海鳥の巣に侵入して卵やヒナを食べてしまうために親鳥が寄り付かなくなって繁殖地が縮小し、希少な小型動物を食べて生息数を減らすというものです。
小笠原で生きる野生動物を守るため、(公社)東京都獣医師会の協力を得て、東京のどうぶつ病院へネコを引っ越しさせています。
ノネコを増やさないための取り組みを
飼い主が猫の不妊去勢手術、室内飼育やマイクロチップを導入していただくと、このような残酷な目に遭う可能性が少なくなります。
ノネコ問題は、島の問題としてクローズアップされることが多いのですが、それ以外のことでもこのように問題になることもあります。ノネコも飼い猫も生物学上では、同じ猫です。猫の習性をよく理解して、飼育してほしいです。