Yahoo!ニュース

【李明博懲役17年】韓国メディアの反応 「じゃあ文政権は?」「本人に反省もなし?」真っ二つの5大紙

検察出頭時にメディアの取材に応じる李明博前大統領(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

李明博氏、懲役17年確定。韓国の大統領経験者としては4人めの実刑に――

29日の韓国発のニュース。書類上は実兄が所有者となっている自動車製品製造会社関連の資金横領疑い、その会社の米国での裁判費用89億ウォンをサムスンが肩代わりした疑いなど、16の疑惑が告発され、うち10が有罪判決となった。

これについて翌日の国内5大紙は社説でどう報じたのか。そこには熾烈な「左右分裂」があった。

まずは保守系の「朝中東(チョジュンドン)」と呼ばれる3大紙。徹底的な擁護論を展開した。

朝鮮日報

「李明博前大統領再び監獄に 同じ物差しを文政権に当てたなら」

保守系大手の同紙は捜査や判決の過程を問題視した。「有罪を当初から決めつけての捜査だった」、判決を担当したヤン・スンテ判事の多忙ぶりを「先週だけでも100件を超え」とし、さらに「何の罪なのか誰が悪いのか、何も分からない」「事件関係者6人はすでに無罪になっている」とした。

そのうえで、こう締めくくった。

「文在寅政権スタートに合わせて始まった”前政権狩り”も三年半になる。これと同じ物差しをこの政権に当てたのなら結果がどう出るか、気になる国民は少なくはないだろう」

中央日報  

3本ある社説のテーマに選出せず。

  • 同紙系の「JTBC」は「満期で出所すれば96歳」と報じた

東亜日報

「MB有罪確定。古臭い慣例、重箱の隅を突くような断罪に終止符を打つべき」

疑惑のうち、情報機関・国家情報院(国情院)から裏金を受け取った疑惑に関しては、返金がなされている。こういった事情から李大統領サイドは「保守勢力を完全に崩壊させようとする政治的報復の捜査だった」と発言。それほど強引な捜査だったとした。

さらに文政権への批判へと続いた。「朴槿恵弾劾後、すぐにベクトルをその前の大統領李明博に向けた」。

過去の清算(保守への攻撃)はいい加減にしろ、と痛烈に締めくくっている。

「この判決で過去の清算と断罪は事実上終わったと言える」

「文政権の残りの任期(1年6ヶ月)は清算と断罪の歴史を終え、新しい未来と統合のために努力をしなければならない」

「過去の間違いを正すのは当たり前だが、すべての事案を『清算と断罪』のフレームで処理するべきではない」

「清算に没頭している間に、新しいちりが積み重なっているという話も出てきている」

MBとは「ミョンバク」から来るニックネーム。また「重箱の~」の下りは現地語では「ちりのような細かい毛を移植するような真似」と記されているが、筆者が意訳した。

革新系(文在寅派)メディアは手厳しく批判

いっぽう左派・革新系の2大紙は李前大統領に痛烈な批判を浴びせた。

ハンギョレ新聞

「最終審判を受けてもふてぶてしい詭弁をずらりと並べるMB」

判決後、李前大統領には反省もない点を強く批判した。

裁判期間内にも容疑を否認、政治報復と主張し、判決後もプレスリリースを通じ「法治が崩れた」「大法院(韓国の最高裁)は公正でも正義でもなかった」と強引な主張をしているとした。

同紙はこの李氏の姿勢をさらに手厳しく書き立てた。

「意見文のなかの『国の未来が心配だ』との言葉には失笑を禁じえない」

「本人は4大江事業(国土を流れる4大河川の再整備事業)で失敗(その結果未来を不安にさせたのは本人)」

「前大統領が有罪判決を受けるほどの行為を犯したことこそが国家の品格を崩している」

最後に保守側から早くも出ている「特赦・恩赦の話」について強く牽制した。

「これは慎重に考えなければならない問題」

「李前大統領に騙され裏切られた国民の憤怒は決してこれを許さないだろう」

京郷新聞

「17年刑確定にも反省どころか”法治が崩れた”という李明博」

同じく左派・革新系の京郷新聞も痛烈な批判を繰り広げた。

まずは李前大統領が謝罪をしない点について

「李氏は国民を騙してきたことに対しての謝罪を行い、許しを請うて当然だ」

「国会議員、ソウル市長、大統領をやってきた人としての最低の道理」

と言及。さらに過去の大統領として4人めの有罪確定、これにまつわる「現状」を憂いた。

「詐欺師が法治や正義云々を語るなど盗人猛々しい」

「これによって全斗煥、盧泰愚、朴槿恵氏に続いて有罪確定となった4人目の前職大統領に」

「しかも同時に朴氏と李氏が受刑するというのは恥ずかしく、不幸な状況」

「二人の特赦・恩赦も論じられているが、これは市民への冒涜。罪を犯したのなら何人もその罰を受けるのは法治国家の基本。これを再確認する日になった」

(了)

参考記事:【懲役17年確定】李明博とはどんな人物なのか 「大阪生まれ」「竹島上陸」など日本との縁も多く

吉崎エイジーニョ ニュースコラム&ノンフィクション。専門は「朝鮮半島地域研究」。よって時事問題からK-POP、スポーツまで幅広く書きます。大阪外大(現阪大外国語学部)地域文化学科朝鮮語専攻卒。20代より日韓両国の媒体で「日韓サッカーニュースコラム」を執筆。「どのジャンルよりも正面衝突する日韓関係」を見てきました。サッカー専門のつもりが人生ままならず。ペンネームはそのままでやっています。本名英治。「Yahoo! 個人」月間MVAを2度受賞。北九州市小倉北区出身。仕事ご依頼はXのDMまでお願いいたします。

吉崎エイジーニョの最近の記事