Yahoo!ニュース

なぜNPBは1リーグ制導入を真剣に討議しないのか?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
今も日本のプロ野球人気は根強いがCSの開催方式に疑問を持つファンは少なくない(写真:アフロスポーツ)

 DeNAがセ・リーグで初めてリーグ3位から日本シリーズ出場を果たした。多くのメディアが“下克上”達成と盛り上がる一方で、首位・広島と14.5ゲームゲーム差つけられていたDeNAが日本シリーズ出場に出場していいのかという疑問視する声も挙がっている。

 そもそも2004年にパ・リーグが先行導入し、さらに2007年から両リーグで正式に実施することになったクライマックスシリーズ(CS)は、その形態に根本的な矛盾を抱えている。日本シリーズに出場するチームは本来、セ・パ両リーグの“覇者”であるべきなのに、今回のようにリーグ優勝したチームが出場できない事態が起こってしまうから、すべてのファンを納得させられないのだ。

 MLBのように各地区を勝ち上がったチームがリーグ優勝を争うかたちのプレーオフ形式なら問題はないし、誰もが納得できる。しかしCS実施前にすでにリーグ優勝が決まってしまうのは明らかな矛盾だろう。

 一部メディアやファンの中にはCS自体を廃止し、以前のようにリーグ優勝チームがそのまま日本シリーズに出場できるようにした方が良いという意見も少なくない。しかしCSというプレーオフ形式が現在では多くのファンに受け入れられ、プロ野球を盛り上げる人気コンテンツの1つになっているように思う。ならばプレーオフは残しておきたいところだ。

 もし現在の2リーグ12チーム制のままMLBのような整合性をもたせるならば、両リーグを3チームずつに地区分けするか、以前パ・リーグが実施していたシーズンを前後期制にして、まず各リーグでリーグ優勝を争うかたちにしなければならない。しかし現実的にみれば1地区3チームは少ないし、シーズン前後期制は長丁場のシーズンの醍醐味を失うことになる。

 ならば思い切って2リーグ制を廃止して1リーグに統轄し、12チームを3地区に分け、地区優勝3チームとワイルドカード1チームでタイトルを争うかたちにすべきではないだろうか。リーグ優勝は消滅しても地区優勝というタイトルが新たに誕生するし、さらに現在のMLBのようにワイルドカード進出を2チームで争うようにすればプレーオフに計5チームが参加できるようになり、6チーム参加できるCSと遜色はなくなる。

 また1リーグ制になってもセ・パ両リーグの特性を残したいのであればDH制を従来通りとし、これまで交流戦で実施されてきたかたちで元パ・リーグのチームの主催試合でDH制を採用すればよい。あくまで個人的な意見だが、東地区を日本ハム、楽天、巨人、ヤクルトの4チーム、中地区をロッテ、西武、DeNA、中日、西地区を阪神、オリックス、広島、ソフトバンク──に分ければそれぞれセ・パの2チームが入ることになり、バランスも保たれるだろう。

 CSが根本的な矛盾を抱える限り、自分の中にあるわだかまりを解消できることはない。むしろその矛盾を薄めるがごとくリーグ優勝チームに最大のアドバンテージを与える現行の開催方式は逆に不満を増してしまっている。やはりプレーオフもホーム&アウェイで堂々と開催すべきだ。

 かつてプロ野球界に1リーグ制導入が囁かれたこともあったが、当時は球界再編問題に揺れる中での一部球団の独断的な意見だった。だが今回は違う。12チーム一丸となって更なる発展を目指していく上での1リーグ統合だ。ぜひNPBを中心に真剣な討議をお願いしたい。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

菊地慶剛のスポーツメディア・リテラシー

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3、4回程度(不定期)

22年間のMLB取材に携わってきたスポーツライターが、今年から本格的に取材開始した日本プロ野球の実情をMLBと比較検討しながらレポートします。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

菊地慶剛の最近の記事