北朝鮮vs中国「非難合戦」が生むさらなる危機
中国が主導する安保会議、アジア相互協力信頼醸成会議(CICA)外相会合は28日、国連安全保障理事会決議に違反し、核実験や弾道ミサイル発射を続ける北朝鮮を非難する文言を盛り込んだ宣言を採択した。
このところ、中国は北朝鮮に対する非難を明確にしていたが、米国などの求めに応じて行動するケースが多く、国際会議で自ら音頭を取るのは珍しい。
(参考資料:CICA外相会合宣言の該当部分の日本語訳/中国語原文)
金正恩氏の「危険思想」
これを受けて、同会合に出席した韓国の尹炳世(ユン・ビョンセ)外相は北京の韓国大使館で記者懇談会を行い、宣言の採択は「北が国際社会で完全に孤立され、捨てられたことを示している」と述べた。
しかしそもそも、金正恩氏は中国を最初から「裏切り者」と決めつけ、それに立ち向かう姿勢に、自分なりのリーダーシップを認めている可能性がある。
そんな北朝鮮の情勢観を垣間見せる、ひとつの文章がある。朝鮮中央通信が今月の初めに配信した、朝鮮国際政治問題研究所論評員の寄稿文だ。「現世界政治秩序は不公正である」とする内容だが、名指しを避けつつも、異例の厳しさで長年の友邦・中国に対する批判を展開している。
一部を引用してみよう。
何とも悲壮感ただよう文章ではないか。
言うまでもなく、北朝鮮をそのような状況に追い込んだのは、金正恩氏の暴走に他ならない。しかし彼に言わせれば、自分は被害者であり、かつ「巨悪」に立ち向かう悲劇の英雄でもあるのだ。
筆者は、そのような被害妄想的な主張に耳を傾けようと言いたいわけではない。そうではなく、国際的孤立が金正恩氏のヒロイズムの「糧」となり、暴走にいっそう拍車がかかる危険性をわれわれは認識しておくべきではないだろうか。
(参考記事:中国にしつこくケンカを売る金正恩氏の「危険思想」の正体)