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本人と球団の決断を見守りたい…中田翔の巨人移籍について上原浩治がどうしても言いたいこと

上原浩治元メジャーリーガー
(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

 髪は黒く染め直され、無精ひげもなかった。スーツに身を包んだ今日の心境を忘れないでほしい。

 日本ハムの中田翔選手が20日、巨人の一員になった。背番号は阿部慎之助選手もつけていた10番。チームメートへの暴力行為で出場停止処分を受けた32歳が、リーグを越えて再起の道を歩みだした。

 電撃移籍ともいえる無償トレードのキーワードは「再生と補強」だろう。同僚選手への暴力行為という報道が出た以上、中田選手が日本ハムで復帰の道を探るのは、球団にとっても判断が難しく、本人にとっても前途は多難だったはずだ。そこに巨人が手を差し伸べ、日本ハムも応じた。会見で反省と覚悟を口にした中田選手には、周囲への感謝を忘れてほしくない。

 日本ハムは20日、1、2軍の全試合出場停止処分の解除を日本野球機構(NPB)に届け出た。トレードによって処分が解け、再びプレーする機会を得られた。報道によると、舞台裏は、日本ハムの栗山英樹監督が巨人の原辰徳監督に電話で譲渡を打診。原監督が「見殺しにしてはいけない」と応じたという。責任感の強い原監督だ。これからも中田選手に目を光らせ、坂本勇人選手や菅野智之選手ら侍ジャパンでも顔なじみのある選手らも気にかけるはずだ。もう〝お山の大将〟ではいられない。グラウンドでプレーする機会が訪れても、厳しい視線は注がれる。それでも、野球選手としてグラウンドに立つ以上、結果を出し続けるしかない。

 打点王3度を獲得した高校時代から注目されたスラッガー。まだまだ老け込む年齢でもない。巨人にとっても固定できない一塁手として「補強」の意味合いもあった。中田選手と面識があるわけではないが、豪快な打撃で期待に応えていくことで、再生していけるのかを見守りたいと思う。

 暴力行為は決して許されることではない。ただ、メディアもファンも「やんちゃな中田」にこれまでは寛容だった気がする。一線を越えた本人がもちろん悪い。ただ、何かが一つ表沙汰になれば、ここぞとばかりに叩く世論には、正直に言えば好感を持てない。「それは違うだろう」とも思う。何より、被害にあった選手へのフォローを忘れてはならない。一部で名前も出ているが、本人が公表を望まないなら、特定はやめたほうがいい。思わぬ形で注目を集めてしまい、酷な状況だが、この選手もプロである以上は、結果を出していってほしい。

元メジャーリーガー

1975年4月3日生まれ。大阪府出身。98年、ドラフト1位で読売ジャイアンツに入団。1年目に20勝4敗で最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率の投手4冠、新人王と沢村賞も受賞。06年にはWBC日本代表に選ばれ初代王者に貢献。08年にボルチモア・オリオールズでメジャー挑戦。ボストン・レッドソックス時代の13年にはクローザーとしてワールドシリーズ制覇、リーグチャンピオンシップMVP。18年、10年ぶりに日本球界に復帰するも翌19年5月に現役引退。YouTube「上原浩治の雑談魂」https://www.youtube.com/channel/UCGynN2H7DcNjpN7Qng4dZmg

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