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アメリカ発有人宇宙船の復活に向けて。スペースX、3月2日打ち上げ試験

秋山文野サイエンスライター/翻訳者(宇宙開発)
スペースXによるクルードラゴン打ち上げのイメージ。Credit: SPACEX

2019年3月2日、SpaceX社はアメリカによる有人宇宙船の打ち上げ再開に向けて、民間宇宙船クルードラゴンの試験“Demo-1”を実施する。打ち上げ時刻は現地時間2日午前2時49分(日本時間午後4時49分)の予定。NASAの発表によると、現地の天候が当日打ち上げ可能である予測は80パーセントとしている。

3月2日の打ち上げを待つスペースXのFalcon9ロケットとクルードラゴン。Credit: SPACEX
3月2日の打ち上げを待つスペースXのFalcon9ロケットとクルードラゴン。Credit: SPACEX

2011年7月のスペースシャトル退役以来、アメリカでは有人宇宙船の運用を行っておらず、国際宇宙ステーション(ISS)に向かう宇宙飛行士はロシアのソユーズ宇宙船に搭乗してきた。NASAはアメリカ国土からの有人宇宙飛行を目指して民間企業による有人宇宙船の開発を開始し、2014年にスペースXとボーイングの2社を開発企業として選定した。

スペースXは同社のISS補給機ドラゴンと同様のカプセル型有人宇宙船クルードラゴンを開発してきた。これまで何度も重要なマイルストーンの延期があったものの、ついに無人での飛行実証と国際宇宙ステーションへのドッキング試験が行われる。

クルードラゴンの無人打ち上げ試験“Demo-1”は米フロリダ州のケネディ宇宙センター、LC39A発射台からFalcon 9ロケットに搭載され打ち上げられる。電子機器やドッキング、通信装置などの動作確認のほか、人が搭乗する際の気圧や温度などを維持する機能の試験が行われる予定だ。

ドッキング後はISSに滞在中の宇宙飛行士がハッチを開ける試験も行われる。2012年のドラゴン補給機初打ち上げの際、スペースXは貨物として搭載されていた冷凍庫にアイスクリームを詰めて送り、それまでISSでは食べられなかったデザートを届けて宇宙飛行士を喜ばせた。今回は同様のサプライズがあるかどうかはわからないが、打ち上げ翌日の3月3日午後5時30分以降にドッキングし、午後10時30分以降にハッチを開ける予定となっている。打ち上げから7日後の3月8日午後4時30分ごろISSを離脱し大気圏再突入、午後10時45分ごろに大西洋上に着水する予定だ。着水後は1時間以内にカプセルを回収する予定だという。※すべて日本時間

NASAでは、打ち上げから一連のミッションをNASA TVで中継する。

サイエンスライター/翻訳者(宇宙開発)

1990年代からパソコン雑誌の編集・ライターを経てサイエンスライターへ。ロケット/人工衛星プロジェクトから宇宙探査、宇宙政策、宇宙ビジネス、NewSpace事情、宇宙開発史まで。著書に電子書籍『「はやぶさ」7年60億kmのミッション完全解説』、訳書に『ロケットガールの誕生 コンピューターになった女性たち』ほか。2023年4月より文部科学省 宇宙開発利用部会臨時委員。

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