原油価格が6年ぶりの安値更新、在庫保管能力の限界か
原油相場が再び下落し始めている。国際指標となるNYMEX原油先物相場(参考:原油価格をみるための基礎知識)の場合だと、昨年前半の1バレル=100ドル台から今年1月29日の43.58ドルまで50%を超える急落を形成した後、2月は50ドルの節目水準まで切り返し、ボトム形成を促す展開になっていた。しかし、ここにきて改めてファンド筋の投機売りが膨らんでおり、3月17日終値では43.46ドル、その後の電子取引では更に42ドル台中盤まで値下がりし、2009年3月以来となる約6年ぶりの安値を更新している。
背景にあるのは、米国内で原油在庫の急増傾向が続いていることだ。
原油相場急落で石油会社はシェールオイルの生産体制を見直す動きを活発化させており、現に石油リグ稼動数は昨年10月10日の1,609基をピークに、直近の3月13日時点では866基まで46%も減少している。このため、石油輸出国機構(OPEC)などからは原油需給・価格の安定化を報告する声が強まり、マーケットでも原油相場は底打ちしたとの分析が多く見受けられるようになっていた。国内で2月以降にガソリン小売価格が上昇に転じたのも、こうした原油価格環境の変化を反映したものである。
しかし、実際にはシェールオイル生産が大幅に鈍化しているわけはなく、米国内では在庫の急増傾向が確認されている。米エネルギー情報局(EIA)によると、直近の3月6日時点の全米原油在庫は4億4,890万バレルに達しているが、これは前年同期の3億7,000万バレルを実に21%も上回っている。ここ数年の米原油在庫は3億5,000万~4億バレルのレンジで推移していたが、製油所のメンテナンスシーズンを迎えて製油所向け需要が落ち込む中、過去最高レベルの在庫が米国内に溢れる状況になっている。
しかも、米国内の在庫保管能力が限界に近づいているのではないかとの見方が浮上していることが、原油価格の下落ペースを加速させている。3月13日に国際エネルギー機関(IEA)が米国の原油在庫の増加見通しと同時に、在庫貯蔵能力が限界に近いことに警告を発したことが、原油価格の底打ちムードを一気に払拭してしまっている。
過去に経験したことのない在庫を貯蔵するため、米国内では貯蔵施設の建設が急ピッチに進んでいる。しかし、在庫の増加ペースはそれを上回っており、今後は石油会社・保管業者が、原油のディスカウント販売を迫られるとの懸念が広がっている訳だ。昨年10~12月頃から一部でディスカウント販売の噂は聞かれていたが、それが全米規模に拡散するリスクが浮上している。その先には、保管能力不足からシェールオイルの生産調整といった動きも想定されることになるが、その前段階として原油が貯蔵施設から溢れ出る局面を迎える可能性が高まっていることが、原油価格を下押ししている。
石油会社は、米国産原油の輸出解禁をホワイトハウスに働き掛けているが、上手く行き過ぎたシェール革命が、原油価格の混乱を招いている。