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「中古車に気を付けて!」ハリケーン・イアンから学ぶ教訓

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
ハリケーン・イアンによる洪水で冠水した車、フロリダ州(写真:ロイター/アフロ)

9月下旬、ハリケーン・イアンがフロリダ州を直撃しました。上陸時の風速は67メートルに及び、同州の観測史上4番目の強さでの上陸となりました。フロリダ州における死者数は今の時点で127人に及び、1935年以来最悪のハリケーン被害となっています。

死因の大半は、溺死でした。記録的な高潮が沿岸部に押し寄せたためです。ある町では、全面積の9割が壊滅的被害を受けたほどでした。

当然ながら多くの車が水に浸かり、その数たるや約36万台に達するとも見積もられています。さらにそのうち半数が、中古車市場に出回る可能性があるようです。

このため、「水害車を買わないように!!」と全米中で呼び掛けられています。

「水害車」とは

アメリカにおける水害車(flood car)とは、「完全または部分的に水に浸かり、車体、エンジンやその他の部品が損傷した車」を指します。浸水がひどい場合、修理をして一見直ったとしても不良品に違いなく、大概すぐ動かなくなってしまいます。

通常、こうして壊れた車を運転すること自体が違法ですが、悪徳業者などが車を乾燥させ見た目をきれいにして、水害車であることを伏せて販売するケースが出ているそうです。

しかも手の込んだことに、わざわざ遠くの場所で売りに出します。

洪水被害がよく起こる所ならば、購入者も水害車でないか疑いをかけ念入りにチェックするものですが、そうでない所の住民は、疑いもせず買ってしまいやすいというのです。

たとえば砂漠の広がるユタ州、ハリケーンのやってこないワシントン州やオレゴン州などといった地域が被害に遭いやすいといいます。

(↓コロラド州政府も、水害車に気を付けるように注意を呼び掛けている)

EV車が燃える

こうした中古車問題のほかに、バッテリーが海水に浸かって電気自動車(EV)が炎上する事故も複数報告されています。

先日もフロリダ州でEVが燃えて、その火が豪邸に燃え移ってしまったというニュースがありました。フロリダ州はカリフォルニア州に次ぎ、全米で2番目にEVの多い州です。

Auto Blogによると、10 万台あたりのEVの火災はガソリン車やハイブリッド車よりも少ないそうです。ただ面倒なことに、火のついたEVは消火にガソリン車の3~8倍もの水を必要とすることがあるそうです。その上おっかないことに、火が消えたと思っても再び燃え始めることがあるそうで、それを防ぐために車を真水に浸すなどの必要があるといいます。

ハリケーン・イアンに伴って起きたこのような出来事は、日本も対岸の火事とは言えないでしょう。大雨に見舞われることが多くなっている昨今、車が被害に遭わないように対策を練ることは当然のこと、他にも様々な注意が必要であることを思い知らされます。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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