現在0.001%、かつては4.800%の時代も…100年以上にわたる郵便貯金の金利推移をさぐる
・ゆうちょ銀行(郵便局)での通常貯金の金利は1915年当時は4.800%。太平洋戦争に至るに金利は落ち、戦後は上昇後にもみ合い、前世紀末に急落、今世紀に入ってからはほとんどゼロに近い状態が続く。
・定期預金の金利は1961年時点で5.000%。通常貯金同様に前世紀末に急落し、今世紀に入ってからはほとんどゼロに近い値。
金融機関にお金を預け入れれば金利に基づいた利子(利息)が発生し、出金時には元本以上のお金を手に入れることができる。昨今では金利はごくわずかで「金融機関に預けたお金には利子がつく」のを知らない人もいるほど。今回はゆうちょ銀行(郵便局)における金利の推移から、昔と今における金利(年利回り、税引き前)の違いの実情を確認する。
最初に示すのは、郵便貯金(分割民営化後はゆうちょ銀行の貯金)における、通常貯金(普通貯金)の金利推移。1年で複数回金利が変更した年もあるので、その場合は年末時点の値を適用している。
取得可能な最古の値は1915年の4.800%。これが1929年まで続く。100万円を1年間預け入れれば、104万8000円になる。金利がそのまま維持されれば、10年間で160万円近くに。
その後太平洋戦争に至るに金利は落ち、戦後は上昇したあとはもみ合い。戦後においてもっとも高金利だったのは1974年の4.320%。それ以降は何度か起伏を示しながらも金利は下落し、前世紀末には急落。今世紀に入ってからは少々の盛り上がりがあるも、大よそ地をはうような状態。直近(2022年1月時点)では0.001%。100万円を10年預け入れをしても100万100円にしかならない。
続いて定期貯金。あらかじめ預け入れ期間を指定して預ける貯金で、通常貯金と比べると高い金利が設定されている。現在のゆうちょ銀行では1か月、3か月、6か月、1年、2年、3年、4年、5年のいずれかの期間を指定できるが、過去においては色々と用意されている商品の条件が異なるため、できるだけ条件の似通ったものを時系列データとして連ねている。
最古の1961年時点では5.000%。その後金利は上昇し、1974年は最高値となる7.500%をつける。それ以降は何度か上下を繰り返しながら、通常貯金同様に前世紀末に急落。今世紀に入ってからはほぼゼロに等しい値。直近の2022年1月時点では0.002%で、通常貯金の2倍ではあるが、微々たる金利には違いない。仮に同条件で10年間預けたとしても、100万200円。
金利が非常に低い、ゼロに近い状態が続いているため、預貯金をした時の利子(利息)が微々たるものでしかなく、貯蓄における複利効果がほとんど生じない事態となっている。金融機関は利子を期待する場ではなく、安全のため、あるいはクレジットカードや公共料金の引き落とし手続きのためのお金を預け入れる場所でしかなくなっている。金利が高いことが魅力であると自称する数々の金融商品も、事実上存在意義の無いのが実情だ(流動性が通常貯金よりも低いため、むしろ低価値な存在とすら認識できてしまう)。
貯蓄という言葉の概念が大きく変化し、将来に備えるために有利な口座へ預け入れる必要が無くなっている。貯蓄用口座と通常の金銭のやり取りに用いる口座が同一のものとなるのも、この低金利状態では致し方あるまい。
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