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基本は現金とクレジットカード…二人以上世帯の代金支払い方法の移り変わりをさぐる(2021年公開版)

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
↑ 今や支払いでは欠かせない存在のクレジットカード。二人以上世帯での利用実情は。(写真:maroke/イメージマート)

少額は現金、金額が大きくなるとクレジットカードも

対価支払いには現金だけでなくクレジットカードや電子マネーなど、多彩な手段を用いることができる。二人以上世帯における、お金の決済手段の移り変わりと現状を、金融広報中央委員会の「知るぽると」が毎年実施している調査「家計の金融行動に関する世論調査」(※)の公開結果から確認する。

まずは直近2020年における、金額別主要決済手段。4つの選択肢のうち「主なもの2つ」を答えてもらっている。

↑ 主な資金決済手段(二人以上世帯、2つまでの複数回答、支払金額別)(2020年)
↑ 主な資金決済手段(二人以上世帯、2つまでの複数回答、支払金額別)(2020年)

二人以上世帯の場合、小口決済でも電子マネーなどが使われる状況はあまりない。大体が現金支払いで、金額が大きくなるに連れ、クレジットカードの率が高くなる。5000円を超えると現金以上の率にまで上昇する。

ここで、電子マネーの利用頻度の低さに首をかしげてしまいそうになる。スマートフォンの普及、対応店舗数の拡大に伴い、少額決済が便利な電子マネーはもっと普及しているはずではないか、と。

質問用紙を確認すると、文言には「あなたのご家庭では、日常的支払い~」とある。つまり世帯構成員のプライベートでの支払いではなく「世帯全体の家計として」との認識で回答している可能性が高い。

クレジットカードを家族全体の買い物に使うことはあっても、基本的に個々の持ち物である(スマートフォンなどの携帯電話に組み込んでいる)電子マネーを「家庭全体向けの」買い物に使うことは多くない。電子マネーは「家計全体のお財布」ではなく、「世帯構成員本人のお小遣い・お財布」的な要素が強い(例えば無断で自分の電子マネーで、妹の漫画雑誌や家族全員の夕食の材料を買われたら、怒らないはずが無い)。そのように考えれば、二人以上世帯で電子マネーの「日常的支払」比率が低いのも納得できる(必然的に家庭(世帯)の支払い=個人の支払いとなる単身世帯では、電子マネーの利用頻度も高い結果が出ている)。

新型コロナなどで急激に増えるクレカや電子マネー利用率

二人以上世帯では現金とクレジットカードが主流で、電子マネーなどはあまり使われない。これが基本となるが、時代の流れとともに少しずつ変化も見受けられる。

↑ 主な資金決済手段(二人以上世帯、2つまでの複数回答で「現金」率、支払金額別)
↑ 主な資金決済手段(二人以上世帯、2つまでの複数回答で「現金」率、支払金額別)

↑ 主な資金決済手段(二人以上世帯、2つまでの複数回答で「クレジットカード」率、支払金額別)
↑ 主な資金決済手段(二人以上世帯、2つまでの複数回答で「クレジットカード」率、支払金額別)

↑ 主な資金決済手段(二人以上世帯、2つまでの複数回答で「電子マネー・デビットカード」率、支払金額別)
↑ 主な資金決済手段(二人以上世帯、2つまでの複数回答で「電子マネー・デビットカード」率、支払金額別)

グラフには直近分を含め過去12年間の値を反映させたが、12年の間で現金の値は各金額領域で漸減し(ただしごく少額の支払いにおいては現金の値はあまり変わらない)、クレジットカードや電子マネーの利用が少しずつ増加していたのが分かる。特に電子マネーは2010年以降急増しており、「おサイフケータイ」普及が大きなトリガーとなったことは容易に想像できる。また、その時期においてもクレジットカードの少額決済での利用頻度は落ちておらず(むしろ増加中)、現金の率が1000円超の金額では減少していることから、「おサイフケータイなどの電子マネーが現金の代わりに(少しずつながらも)使われ始めた」と考えれば道理は通る。

また電子マネーの動向を詳しく見ると、5000円以下ではますます利用率が高まるのに対し、それを超えると利用率の上昇度合いは半ば足踏み状態だった。少額決済の便利ツールとしての認識が強まり、クレジットカードとの使い分けが進んでいるようだ。

他方2020年では現金の値が大幅に減り、クレジットカードと電子マネー・デビットカードが大きく増えている。イレギュラーにすら見えるこの動きは、消費税率引き上げによる景況感下落への対策として2019年10月1日から2020年6月30日まで実施されたキャッシュレス・ポイント還元事業と、2020年春から確認された新型コロナウイルスの流行(で現金による接触型支払いが避けられたこと)によるものと思われる。たまたま偶然ではあるが、この2要素が同時に影響することで、ここまで大きな変化が生じたのだろう。

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※家計の金融行動に関する世論調査

直近分となる2020年分は二人以上世帯においては、層化二段無作為抽出法で選ばれた、世帯主が20歳以上でかつ世帯員が2名以上の世帯に対し郵送式で、2020年8月7日から9月15日にかけて行われたもので、対象世帯数は8000世帯、有効回答率は25.7%。単身世帯においてはインターネットモニター調査で、世帯主が20歳以上70歳未満・単身で世帯を構成する人に対し、2020年8月21日から9月2日にかけて行われたもので、対象世帯数は2500世帯。過去の調査も同様の方式で行われているが、二人以上世帯では2019年分以前の調査は訪問と郵送の複合・選択式だった。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

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(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロで無いプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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