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ロシア産原油を石油製品に精製して輸出するオイルロンダリング疑惑

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 中国やインドはロシア産原油の輸入量が過去最高水準に膨らんでいるが、ここにあらたな疑惑が発生した。

 ロシア産原油を石油製品に精製して輸出する「オイルロンダリング(原油洗浄)」の中継拠点としてインドの関与が浮上してきたと14日の日本経済新聞が報じた。

 制裁で行き場を失ったロシア原油を大量に買い、ガソリンなどに精製して一部を欧米への輸出に回している。精製過程で原油の原産地を証明するのは難しく、制裁の抜け穴になりつつある。

 ロンダリング(laundering)とは「洗濯する」という意味を持つ。有名なローンダリングにマネーロンダリング(Money Laundering)があり、これは資金洗浄のことである。

 マネー・ローンダリングとは、一般に、犯罪によって得た収益を、その出所や真の所有者が分からないようにして、捜査機関等による収益の発見や検挙等を逃れようとする行為を言う(警察庁のサイトより)。

 日本政府はすでに欧米の先進国と協調してロシア産石油を原則禁輸とする方針を明らかにした。

 萩生田経済産業大臣は5月10日の閣議後記者会見において「ロシア産の原油を禁輸っていうんだけど、オイルロンダリングされたときに第三国を経由して市場に出てきたものがロシアのものかどうかというのを判断するのは物すごく難しい問題もあると思うんです」と語っていた。

 金融情報会社リフィニティブによると、6月にインドに到着したロシア原油は前年同月比4.2倍の2056万バレルだった。5月は同8.1倍の2376万バレルで、ロシアのウクライナ侵攻後に急増。中国の5月のロシア産原油輸入も前年同月比55%増と大幅に増えている。

 4~6月だけでロシアからインド西部の都市シッカに約2600万バレルの原油が到着した。前年同期比の5.3倍という急膨張ぶりだ。シッカに海路で届いた原油のうち、ロシア産は2割を占める。同時期にシッカの港から輸出された石油製品は約7500万バレルで、うち20%が欧米向けだった(14日付日本経済新聞)。

 第三国を経由した原油の原産地を証明するすべは現時点でない。さらに穀物についても、ロンダリングが取りざたされているようである。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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