円高ドル安が進行、ドル円は141円を割り込み、昨年末の水準が視野に。その要因とは何か
ドル円は11日の10時半あたりから円買いドル売りが強まり、8月5日に付けた141円70銭を下回ってきた。141円70銭はテクニカル的にも重要なポイントとなっていた。
10時過ぎには米大統領選の候補者討論会が始まっていたが、日銀の中川審議委員が講演で、「見通しが実現していけば緩和度合いを調整していく」と発言したことも円買いドル売りを招いた可能性はある。しかし、チャートを意識したテクニカルな動きを誘発させる仕掛であった可能性が高い。
今年8月5日に日経平均は過去最大の下げ幅を記録していたが、この日のドル円は大きく下落(円高ドル安)しており、一時141円70銭を付けてきた。しかし、その後、ドル円は買い戻されて143円台を回復した。つまりこの日のドル円は日足で141円70銭を底として、大きな下髭を付けたこととなる。
その後、ドル円は150円近くまで戻す場面もあったが、9月11日あたりから米長期金利の低下に促されるように円高基調となった。そして11日にドル円は142円を割り込み、ポイントとなる141円70銭割れとなったのである。これにより円高ドル安が再開し、チャート上からは再び円高が加速する可能性が出てきた。
実際に11日の後場に入り141円も割り込んできた。目先の下値の目途は、昨年末に付けた140円70銭あたりとなるが、ここもあっさりと抜けてきそうである。また大きな節目の140円も見えてきた。
今回の円高ドル安の背景のひとつは日米金利差の縮小にあろう。
FRBは9月に利下げを行う可能性が高い。利下げ幅は0.25%もしくし0.50%が予想されている。それに対して日銀は9月は現状維持となりそうだが、10月もしくは12月の決定会合で、「見通しが実現していけば緩和度合いを調整していく」可能性が高い。
10月では日本では新政権が発足して間もないことや、11月の米大統領選の結果を確認して、12月の金融政策決定会合で0.25%の利上げを日銀は決定すると予想している。このように日米の中央銀行が反対方向に動くことで日米の政策金利差は縮小することになる。これも円高ドル安の要因となろう。
米長期金利が低下基調となっていたことも大きく影響している。11日の東京時間の米10年債利回りは3.62%に低下していた。
そもそも物価対策での円安修正を政府も意識し、神田前財務官はタイムリーな為替介入を行ったこともあって、円安ドル高トレンドを修正させることになった。ここに米長期金利の低下や日銀の政策修正も加わって、ドル円は昨年末の水準に接近しつつある。政府としてもこのあたりまでの修正は想定の範囲内ということではなかろうか。