オンラインサロンは新手の情報商材でなく新しい仮想の街になれるか
ここ最近、オンラインサロンのネガティブな話題がツイッター上などで話題になることが増えた印象があります。
個人的には、オンラインサロンに入ろうが入らなかろうが個人の自由ですし、中を見たことがない人間が外からどうこう言うような話ではないな、と思ってこれまでできるだけ触れずに来たのですが。
最近、オンラインサロンの問題をどう思うか、と聞かれる機会が増えたので、ここにまとめておきたいと思います。
■オンラインサロンへの注目は急上昇
まずオンラインサロンをご存じない方に簡単にご説明すると、月額会費制のネット上のコミュニティのこと、と言うのが一番簡単でしょうか。
それならネットコミュニティと言えば良いじゃないか、という話はあるんですが。
ネット黎明期の有料ネットコミュニティがなかなか上手くいかないビジネスだったのに対して、オンラインサロンという言葉が2012年頃から使われるようになり、堀江さんのような先駆者の成功によって着々と浸透してきたのが、去年あたりから一気に話題のキーワードになってきたようです。
サロンという言葉がフランス語で社交界を意味するという、言葉のイメージも良かったのかもしれません。
Googleトレンドの検索数の推移を見ると、見事に壁のように吹き上がっているのが分かります。
この直近のオンラインサロンブームの火付け役となっているのは、おそらくはキングコングの西野さんによる西野亮廣エンタメ研究所だと想像されますが、それについては後述するとして。
この話題の盛り上がりに合わせて、2012年頃は一部ネットユーザーの間の小さなブームだったオンラインサロンが、昨年あたりからメディアの注目も集めるようになり、結果的に今年に入ってからは大手媒体にも、オンラインサロンに対する問題提起や批判記事が掲載されるようになってきているようです。
例えばダイヤモンド・オンラインに1月に掲載された記事のタイトルは「オンラインサロン」に巣食う悪徳主宰者と手厳しいですし。
SPAの記事のタイトルもオンラインサロンの裏に経歴詐称疑惑。
参考:「オンラインサロン」に巣食う悪徳主宰者、セクハラ・タダ働きも
参考:22歳学生が見たオンラインサロンの裏。経歴詐称疑惑、30万円合宿
さらに、最近で一番話題になったのは、文春オンラインに掲載されたこちらの記事でしょう。
参考:情報弱者の貧困層をバカにする人、搾取する人 オンラインサロン界隈を眺めていて思うこと
この記事は、オンラインサロンだけの話を書いているわけではないですが、有料の「オンラインサロン界隈」が、情報弱者の貧困層を搾取する構造になっているのではないか、という問題提起の記事でした。
さらに直近では、オンラインサロンのインタビュー記事を掲載していた新R25が、ブログで該当記事が批判された直後になぜか記事を非公開にしたことで、メディアとしていかがなものかと問題提起をされるなど、オンラインサロン界隈を巡る議論はまさにカオスの様相を呈しています。
■オンラインサロンのリスクは低い?
私自身は、冒頭に書いたように、オンラインサロンに関しては自己責任で、個人の自由というのが基本的なスタンスでした。
そもそもオンラインサロンは月額課金という構造上、仮に誇大広告に騙されたとしても月額1000円とか5000円とかが中心であり、英会話スクールやビジネススクールとかの会費に比べれば、ある意味リスクが低く覗き見ができる仕組みだと思います。
数十万円の多額の入学金を支払ったのに、中身が全くない、というようなリスクは低いわけです。
入会してみて内容がイメージに合わなければ、すぐに辞めれば比較的浅い傷で済む仕組みにはなっていると思います。
オンラインサロンは宗教的とか洗脳だという話もあるようですが、こればっかりは中に入ってみなければ分かりませんし、大抵こういうコミュニティというのは中に残っている人が満足していても、辞めた人達はコミュニティに合わなくて辞めた人達ですから、辞めた人の声はネガティブになって当然という面はあると考えていました。
一方で、内情が良く分からない状態で、個々のオンラインサロンについて言及するのを極力避けてきたのも事実です。
結局、批判でも懸念でも、該当のオンラインサロンを紹介したりリンクすることで、そのオンラインサロンの宣伝になってしまう可能性があるからです。
ただ、最近のオンラインサロン界隈の騒動を見ていて、少しそうした私の自己責任というスタンスは変わりつつあります。
特に危ないな、と感じるのは、そういった自己責任論や低リスク論を言い訳に、一部のオンラインサロンが詐欺に近い構造になってきているのでは、と感じる点。
上述の記事にも紀藤正樹弁護士の「こうした断定的な勧誘の中には詐欺などの犯罪事案もあり、安易な儲け話には特に気を付けるべきです」という発言もありますが、オンラインサロンの会員勧誘にやっきになるあまり、会員以外の属性の人達をいたずらに攻撃したり、卑下してみたりという行為も見受けられます。
■オンラインサロンで逮捕者が出る可能性はあるか
また、オンラインサロンのメリットを大袈裟にうたっているケースも増えてきているようです。
象徴的だったのが、昨年9月頃に一部で話題になった「大学に行くよりオンラインサロン」論争でしょう。
参考:「大学に行くよりオンラインサロン」論争から学ぶネットの不毛なすれ違い
実はこの発言をしているオンラインサロンオーナーは、全員有名大学を卒業しているというのがポイント。
本人達からしたら、自分が大学生の時にオンラインサロンがあれば良かったのに、ぐらいの思いからの発言なんだとは思いますが、知らない人が聞くと大学よりオンラインサロンの方を薦めているように聞こえる発言というのは、正直かなり危ない推奨行為のように感じます。
危ない勧誘という意味では、ちょうど先週こんなニュースがありました。
参考:商品転売「せどり」のノウハウ教示と偽り現金詐取 容疑の9人逮捕
これはオンラインサロンではなく、あくまでウソの情報商材ですし被害総額の桁が違いますが、130万円の詐欺で逮捕されているわけです。当然、会員数が多いオンラインサロンで、もしこれに近い行為がされていたら、同様の事件扱いになりうるという意味で興味深い事例と言えます。
日本では訴訟行為は少ないですし、前述のようにオンラインサロンだと1人1人の被害額は、この情報商材のように大きくはなりにくいので、訴えようと思う人自体が少ないのかも知れませんが。
それに甘んじて、そういったグレーなオンラインサロン側が過激な勧誘行為を繰り返していると、いつか同様の逮捕記事になってしまう可能性は当然あります。
仮に、自分がオンラインサロンで詐欺にあった、と感じるのであれば、泣き寝入りするのではなく、類似の被害者が増える前に、しかるべき機関に相談するべきかもしれません。
オンラインサロンの運営者やプラットフォーム事業者も、1度立ち止まって振り返ってみた方が良いタイミングと言えるでしょう。
■オンラインサロンの本当の可能性とは
一方で個人的に、一連の記事を見ていて残念だなと感じるのが「オンラインサロン」という新しい可能性を秘めた仕組み自体が、十把一絡げに悪徳情報商材扱いされてしまうケースが増えている点。
本来、オンラインサロンが「今」注目を集めているのは、月額課金の情報商材ビジネスとしてではなく、ソーシャルメディア時代、シェアリングエコノミー時代の新しいコミュニティの形が見えてきているから。
グレーなオンラインサロンは、正しいオンラインサロンと対極の存在として受け止めるべきものではないかと思います。
個人的に、正しいオンラインサロンの運営方法として注目しているのが、冒頭で紹介したキングコング西野さんのオンラインサロン「西野亮廣エンタメ研究所」です。
現在の「西野亮廣エンタメ研究所」の会員数はなんと2万2000人を突破。
間違いなく、日本最大規模のオンラインサロンだと言えます。
その歴史については下記の記事を見て頂ければと思いますが。
特に注目すべきは、「西野亮廣エンタメ研究所」の会員数が1万人を突破したのは2018年9月で、2万人突破が今年の1月だったこと。
昨年秋からの4ヶ月ほどで1万人を増やし、さらにこの1ヶ月でも2千人増えていることになりますから、西野さんがオンラインサロン運営に本気になってから会員数が加速度的に増えてきたのが良く分かります。
ここで、興味深いのは、西野さんのオンラインサロンは情報商材ビジネスとしてではなく、新しい形の「街」として運営されているという点です。
■新しい機会に出会える街づくり
上記の記事にもありますが、西野さんのオンラインサロンに参加したメンバーは、単純に西野さんの発信する情報を日々摂取するだけでなく、様々な「機会」に参加することができるようになります。
絵本「えんとつ町のプペル」の出版の際には、出版後の話題づくりなどを西野さんと議論したようですし、その後西野さんがリリースしたサービスにも様々な形でサロンメンバーが関わっているそうです。
また、成人式の「はれのひ」の夜逃げの際に実施したリベンジ成人式には、数百名のサロンメンバーがボランティアとして参加したとか。
ある意味サロンメンバーは会員になっているからこそ、西野さんのプロジェクトに参加することができるわけです。
インターネット時代以前に、普通の会社員や大学生が、普通に生活していたのでは遭遇すらできない機会と言うこともできるでしょう。
これを人によっては「お金を払ってなんでさらにボランティアで働かされるんだ、これも搾取だ!」と思うかもしれませんが。
例えば、西野さんのオンラインサロンを、キッザニアのような場所だと思ってみてください。
キッザニアはこども向けの施設なので、ご存じない方もおられるかもしれませんが。
簡単に言うと、こどもが様々な職業を体験することができるテーマパークです。
参考:キッザニア
当然入場料を支払って入るわけですが、こども達はそこで「仕事」を楽しく体験します。
一応バーチャルなお金はもらえますが、もちろん大人からすると出ていくお金の方が大きいわけです。
でも、それで良いんですよね。
大人からすると、こども達にプライスレスな体験をしてもらうことができるわけです。
西野さんのオンラインサロンのように、成功しているオンラインサロンの多くは、こうしたキッザニアの大人版的構造になっている印象です。
入場料としてのお金を払い続けてでも、普段生活していたのでは遭遇できない機会に遭遇できる仮想の街になっているのです。
単純に役に立つ情報を毎月お金を払って受け取りたいだけなら、雑誌の定期購読や有料のメールマガジンという手段は昔からありました。
オンラインサロンの本当に面白いのは、会員が単なる情報の受け取り手ではなく、自らもサロンの参加者として、一緒に街づくりに貢献し参加できるところです。
オンラインサロンの会費は、教材料というよりも、街づくりの参加費であり、ある意味税金のようなものだと思った方が良いのかも知れません。
特に西野さんの場合は、オンラインサロンとクラウドファンディングを組み合わせることで、企画に合わせた資金調達を可能にしているようです。
■そのオンラインサロンの会費は何に使われている?
そういう意味で、皆さんにオンラインサロンに入る前、そして入ってから是非チェックして頂きたいのが、そのオンラインサロンのオーナーの集めた税金の使い方。
はたしてオンラインサロンという新しい街のリーダーが、集めた税金を自分一人のためだけに使っているのか、サロン全体、街全体の発展のためにも使ってくれているのか、という点です。
西野さんに至っては、レターポットというサービスにおいて、オンラインサロンメンバーが働いているお店を検索できる機能を追加。実際にサロンメンバーの事業に好影響が出るように工夫をされたり。
ついには自分の出身地である兵庫県川西市に「えんとつ町のプペル美術館」をつくることに決め、建設予定地の近くにスナックをオープンするなど、現実の町づくりに貢献することに踏み出しています。
だからこそ、これだけ多くの人達が西野さんのオンラインサロンに参加し、西野さんの仮想の街の人口が2万人を超えて増え続けているのでしょう。
これは西野さんが有名人だからできたと思う方も多いかも知れませんが、実は同じようなアプローチは私たちにも参考にできるはず。
西野さんにとっても、一人ではできないけどオンラインサロンがあるからこそできるようになったことがたくさんあるはずで、規模は小さくとも同じような新しい街づくりは、私たちでも挑戦できるはずです。
情報商材ビジネス型のオンラインサロンも全てを否定するわけではありませんが、本当のオンラインサロンの可能性は、この街づくり型のオンラインサロンにあるはず。
オンラインサロンのネガティブな面ばかりに注目するのではなく、ポジティブな可能性をどう拡げるかという点にも注目すべきではないかと思います。
いつにもまして無駄に長い記事になってしまいましたが。
皆さんのオンラインサロン探しの1つの参考になれば幸いです。