女子高生にとって理系・工学部は狙い目、理系・工学系女子に期待
大学入学試験がほぼ終わり新学期の準備に入る頃になったが、これからは女子高校生にとって理系大学は狙い目かもしれない。かつては、女性の理系は、生物系か建築系などに少し在籍していたが、工学系にはほとんどいなかった。最近になり、女性エンジニアが少しずつ増えつつある。半導体の世界でも古くから女性エンジニアはいることはいたが、極めて少なかった。今や男性だけではなく、女性の半導体エンジニアも強く求められるようになってきた。
ITも半導体もこの先、50年は発展できる産業である。ここに人材がいないことはこの先も日本が成長できないことになる。となれば円安はますます進み、輸入による物価高が国民を襲う。このような危機的状況の中では、男だけがエンジニアや研究者を続ける意味がない。女性もエンジニアや研究者として力を発揮してほしい。そのためには女性は理系に向かないといった偏見を打破し、女性も男性と対等な立場で仕事するという環境作りが重要になる。経営者の理解も重要だ。
東京工業大学が2024年4月入学から女子枠を広げる。現在学士課程全体で女子学生の割合は10~13%程度しかない。これを20%に引き上げようという試みである。だからといって女性だけ試験の点数を甘くするという訳ではない。女子枠において総合型の学校推薦選抜を設け、高等学校が推薦し、さらに面接で最終的に合否を決めるというもの。面接で落ちたとしても、一般入試で合格すればよいというリターンマッチもある。
こういった試みは東工大だけではない。北から、北見工業大学や山梨大学、富山大学、金沢大学、名古屋大学、名古屋工業大学、島根大学、熊本大学、大分大学、宮崎大学、長崎大学、琉球大学などがあり、奈良女子大学やお茶の水女子大学には工学部もある。女性のエンジニアが活躍するようになれば、日本の産業は活気づく。
産業界も歓迎している。半導体製造装置企業国内トップで世界でも4位である東京エレクトロンの河合利樹社長は、セミコンジャパン2023の講演の中で人材育成に触れ、「ジェンダー問題は解決すべき課題の一つであり、女子学生の枠を広げるという動きを、東京エレクトロンは歓迎するとともに、積極的にサポートしていく」と述べている。事実、東京エレクトロンには女性社員やエンジニアが多い。
かつて米国シリコンバレーのある調査会社が実施したハイテク企業経営者へのアンケートについて取材した。その結果、シリコンバレーで働く人の男女比率は49対51で女性がわずかながら多かった。ハイテク業界の競争が最も厳しいシリコンバレーでは、ジェンダー問題の解決なしで企業は勝ち抜けないことを示している。
日本でも半導体産業の成長性を信じる人たちがようやく増えてきた。2020年代に入り、経済産業省が世界トップクラスの半導体メーカーである台湾のTSMC社を日本に誘致し、新たにラピダス社設立に動きだした。巨大な投資を支援することが決まったが、最大の問題は人材。半導体産業を理解できる人材がとても少なくなってしまった。これでは、せっかく成長性のある半導体産業を再認識しても産業が育たなくなる。
今からでも遅くない。半導体を理解できる人材を育成することは日本の未来につながる。デジタルトランスフォーメーション(DX)もカーボンニュートラルのグリーントランスフォーメーション(GX)も日本の未来に重要な技術であるが、その中核技術は、ITであり半導体である。ITはサービス産業であり、そのテクノロジーこそが半導体なのだ。半導体は産業のコメから産業の頭脳に変わった。頭脳なしで未来はない。その一例として、チャットGPTを開発した米OpenAI社のアルトマンCEOが半導体工場を探しているというニュースはそのことを示している。