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妻の不倫で離婚したのに、子供の親権も奪われてしまう⁈父親が本気で親権を取得する場合に必要なこととは?

後藤千絵フェリーチェ法律事務所 弁護士
(写真:アフロ)

1 妻の不倫で離婚した場合、残された子供の親権はどうなる?

世間では有名人の不倫疑惑が、毎日のように取り沙汰されています。

最近でも、国際結婚をしていた女性が夫と子供を海外に置いたまま、日本で不倫をしていたという疑惑報道がありました。

もし不倫疑惑が本当であれば海外に子供たちを残しての不倫ということになります。

一方で、夫のモラハラが原因だと言う報道もあり、不倫はやむを得ないことだと言う意見もあります。

本件は、家事事件を扱う弁護士としては様々な争点(問題点)のある案件であり、非常に興味深く、今後の展開に注目しています。

2 不倫をしていてもやはり女性優位?

それでは、まず一般論として、妻が不倫をしていた場合、子供の親権は取れるのでしょうか?

子供の親権はやはり母親が優位であると思われておられる方も多いと思います。

不倫をするような妻とはもうこれ以上婚姻生活を続けられないと言った気持ちになり、離婚すること自体には全く抵抗はないものの、子供たちと離れることは堪えがたいと考える父親は多いでしょう。

妻の不倫などが原因の離婚では、「何としてでも子供の親権を取りたいのですが、どうすればいいのでしょうか?」と言って、相談に来られる男性も実際に多くいらっしゃいます。

現実問題として、男性が親権を取れる余地はあるのでしょうか?

あるとして、どのような方法をとればよいのでしょうか?

今回は、男性の親権に注目したいと思います。

3 親権を取得する際に、一番優先されるのは?

日本においては、未成年者の子どもがいる場合には、両親のどちらかを親権者と決めないかぎり、離婚することはできません。

話し合いでスムーズに親権者が決まれば問題はありませんが、親権者をどちらにするかはいわば「もめるポイント」

親権についてお互い一歩もひかないと言った事態も珍しくありません。

まして、妻が不倫していた場合には、なおさらです。

不倫していた妻には絶対に親権を渡したくない!と思うのも父親として当然の感情でしょう。

では、両親のどちらかを親権者と決める際に、裁判所が重視するのはどういったことなのでしょうか?

裁判所が親権を決める際の判断基準では、「どちらが子供を主に育てていたか」が最も重視されます。

妻が不倫をしていたとしても、育児はしっかりやっていた、と言った場合、やはり妻が優位になります。妻が不倫をしていたとしても、子供の親権は妻が取得する可能性が高いのです。

ただ、妻が虐待や育児放棄をして不倫していた、というようなケースは、父親が親権をとれる可能性があります。

また、子供が15歳以上であれば子供の意志が尊重されるため、不倫をしていた母親よりも「父親と一緒に暮らしたい」と子供が裁判所にはっきりと言えば、夫が親権を取得できる可能性がでてきます。

4 男性が本気で親権取得するために、必要なこととは?

父親が本気で親権を取得したいと望むのであれば、まず母親の問題行動を洗い出し、その証拠を残すことが重要です。問題行動とは、育児放棄や家事放棄、DVやモラハラ、アルコール依存症等々……育児に支障があるような行動を指します。その問題行動を立証できるのは、画像や録音、メール、LINE、日記、メモなどの具体的かつ客観的な証拠です。こうした証拠は裁判において効果を発揮しますので、できるかぎりたくさんの証拠を収集しておきましょう。

裁判所は、「従来の養育・監護実績」を重視します。

親権を取る上で母親が優位である理由は、普段から子供の世話をしているところです。いままでほとんど子供の世話をしてこなかった父親が、一般的に不利と言われます。

しかし、父親でもいままでの養育監護に問題がなければ、その養育実績を重視するのは当然のことで、父親が親権を取得する可能性が出てきます。そのため、母親の問題点を的確に指摘し、客観的証拠を出して立証すれば、父親も巻き返しができるのです。

また、裁判所が重視することのひとつに、「子供の福祉」があります。

つまり、父親、母親どちらの元で養育されるのが子供の利益に適うかを考慮します。

一般的には、父親は会社員として一日中フルタイムで働いている家庭が多く、母親よりも子供と過ごす時間が短いものです。この点が、先に述べたように親権取得において母親が優位である理由のひとつでした。

ただ、昨年からのコロナ禍で今後はテレワークが主体となる職場も増えてきています。これからは男性が圧倒的に不利とはいえなくなるかもしれません。

父親が絶対に子供の親権を取ろうと思うのであれば、離婚を考え始めたら、子供中心の生活にシフトすることが重要です。

どんなに多忙であっても時間をやりくりして子供と過ごす時間を確保し、まずは子供との信頼関係を厚くすることです。大変かもしれませんが、こうした姿勢が後々裁判所から評価されるポイントとなります。

例えば、妻がすでに子供を連れて一方的に出て行ったなど、現在、すでに別居をしていることもあるかもしれません。そういうケースであっても、生活費(裁判時には、婚姻に必要な費用として含まれます)は必ず支払って、積極的に家族に関わっていく姿勢を見せる必要があります。

その上で、妻や子供とのLINEやメールなどのやりとりを残しておきます。妻が一方的に連絡を拒否し、子供に会わせない場合などには、それらの事実が証拠になるからです。正当な理由なく子供に会わせないことは、妻側にとって不利な要素です。

また、子供の養育環境を整えることも重要です。自身の経済力や健康状態をアピールするばかりでなく、養育を補助してくれる親族が近くにいると有利になりますので、そうしたことも視野に入れましょう。

5 父親が親権を取得するために

日本においては、たとえ母親が不倫をしたとしても、それだけでは父親が親権を取得するのは難しいと言えます。親権取得に関しては母親がかなり優位にあると言え、父親が親権を取ることは並大抵のことではありません。

親権取得まではさまざまな困難があって、気持ちが折れることもあるかもしれませんが、親権取得まではけっしてあきらめないという強い気持ちが大切です。

一方で、親権を取ることだけにこだわり、「子供の利益」を見失っては本末転倒です。一番優先すべきは「子供の利益」だからです。

実際に親権が取れた場合にも、母親との面会交流は、虐待などの正当な理由がない限り続けた方がよいでしょう。

子供にとっては、2人は父親と母親であり、離婚はしても両親が自分を愛してくれていると確認することがとても大切なことだからです。 

冒頭のケース、仮に日本で起きた不倫問題であれば、それまでの育児の状況が適正である場合は、親権取得は母親優位と思われます。

しかし国際結婚のケースにおいては、仮に親権を争う場合、事態は複雑です。

親権問題の基本は、まずは夫婦間での話し合いです。

子供にとって何が一番良いのかを夫婦かでよく話し合うことがとても重要です。その際に、単に子供を自分の元に置きたいという理由からではなく、冷静かつ客観的な視点から子供の利益を考えることが最も大切であることは言うまでもありません。

フェリーチェ法律事務所 弁護士

京都生まれ。大阪大学文学部卒業後、大手損害保険会社に入社するも、5年で退職。大手予備校での講師職を経て、30歳を過ぎてから法律の道に進むことを決意。派遣社員やアルバイトなどさまざまな職業に就きながら勉強を続け、2008年に弁護士になる。荒木法律事務所を経て、2017年にスタッフ全員が女性であるフェリーチェ法律事務所設立。離婚・DV・慰謝料・財産分与・親権・養育費・面会交流・相続問題など、家族の事案をもっとも得意とする。なかでも、離婚は女性を中心に、年間300件、のべ3,000人の相談に乗っている。

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