トランプホテル前でテスラ車爆破犯はトランプ&マスク支持の愛国者。事件は「警鐘」? ── 深まる謎
![](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/abekasumi/02053977/title-1736195316484.jpeg?exp=10800)
アメリカでは新年早々、二つの大事件が起きた。一つは南部ニューオーリンズでの大型車暴走事件、もう一つは西部ラスベガスでのテスラ車爆破事件。
本稿ではこのラスベガスでの事件を追う。
何が起こった?
1日午前8時40分ごろ、ネバダ州ラスベガスのホテル「トランプ・インターナショナル・ホテル・ラスベガス」前に駐車中の電気自動車(EV)、テスラ・サイバートラック(以下テスラ車)が突然爆発、炎上した。
テスラ車が駐車されていた場所はホテル前のバレーエリア(入り口付近で係員が駐車サービスを提供する場所)。運転席にいた容疑者1人が死亡、7人が軽傷を負った。
容疑者はマシュー・アラン・リヴェルスバーガー(Matthew Alan Livelsberger、37歳)。ABCニュースなど複数の米メディアはリヴェルスバーガー容疑者が爆破させる直前に車内で拳銃自殺したと報じている。
炎上した車内から銃器2丁、花火用の迫撃砲、ガスボンベ、ガソリン缶などが発見されている。この銃器2丁は爆発事件の2日前の30日に容疑者自らが合法的に購入したものだった。
テロの可能性も視野に入れて容疑者のバックグラウンドや事件の動機について捜査が進められているが、現時点で筆者が不可解に思った点を以下に記す。
容疑者のバックグラウンド。エリート軍人で父親になったばかりだった
リヴェルスバーガー容疑者は米陸軍特殊部隊のグリーンベレー(Green Berets)に所属する現役の軍人だったと報じられている。本人のものとされるLinkedInによると米軍歴は19年以上。グリーンベレーは米陸軍の中でエリート中のエリート、世界でもトップクラスの特殊部隊として知られる。
駐留先のドイツの米軍基地を発ち、事件当時は休暇中だった。
![マシュー・アラン・リヴェルスバーガー容疑者。](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/abekasumi/02053977/image-1736195220823.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
私生活では、容疑者は今年、父親になったばかりだった。
コロラド州に再婚して間もない妻と8ヵ月になる娘がいるようだが、問題を抱え、1年ほど精神衛生面の支援を受けていたと複数のメディアが伝える。これが具体的に何を意味するかは不明だが、軍人はPTSDがつきものであるし、カウンセラーに会いに行くのはこの国でよくあることなので、そのような類の支援を受けていたのかもしれない。
容疑者の不倫疑惑をめぐって夫妻は争いとなり、クリスマス明けごろに容疑者は自宅を出て、先月28日にコロラド州でテスラ車をレンタルし、ラスベガスへ向かった。
コロラド州からは距離にして800マイル(1300km) も離れている。走行スピードにもよるが普通に考えて車でゆうに13時間以上はかかる距離だ。
ラスベガスには爆破する2時間弱前に到着したと、BBCに情報がある。
![Trump International Hotel Las Vegas](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/abekasumi/02053977/image-1736287705849.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
筆者はこのニュースを最初に聞いたとき、トランプ&マスク氏への政治的な反発で、反トランプ派による事件かと思った。それほどの長距離をわざわざ移動し、トランプ次期大統領に関連した場所を選び、側近であるイーロン・マスク氏がCEOを務めるテスラ社の車両を使っているから。
しかし調べていくと、どうやらそういうことではないようだ。
トランプサポーターでトランプ氏に投票。愛国者だったと報道
米メディアは、容疑者はトランプ支持者で、大統領選でもトランプ氏に投票したと報じている。「非常に愛国的な兵士であり愛国的なアメリカ人だった」という証言がいくつか見られる通り、軍関連者に多い「愛国者」でもあったようだ。
ではマスク氏はどうか。
容疑者の携帯電話に2つのノートが残されていて、そこにはトランプ氏に加えマスク氏らへの支持を表明する内容のものがあったという。
一方で、多様性や公平性などへの取り組みなど国や軍に対して個人的かつ政治的な不満があったとされ、この国は「弱者」と「私腹を肥やす者」によって率いられているといったような内容が書かれ、この爆破を「警鐘」と呼んでいたと報じられている。何の警鐘だろうか?大きな事件を起こすことで、多くの国民の関心を集めようとしたのかもしれない。
一方で、それほど熱心なトランプ支持者であるならば20日経てばトランプ政権が発足するのに、なぜこのような事件を今、起こしたのだろうか?謎がさらに深まる。
大型車暴走テロとの共通点
同日にニューオーリンズで発生した大型車暴走事件はテロ事件であると認定された。二つの事件との関連性は確認されていないが、複数の共通点がある。
例えば、容疑者は共に米軍に関連する者(現役と退役)で、事件に銃を使い、レンタカーを使い、レンタカーは同じアプリを使っている。そして自宅から遠方の地で全米を揺るがすほどの大事件を起こし、共に亡くなった。
もっとも注視すべきなのが、この2人の容疑者が共に同じ米軍施設に駐留していた過去があるという事実だ。ノースキャロライナ州のフォートブラッグ(現フォートリバティ)という基地で、時期は異なり、互いを知っていたことを示す証拠は見つかっていないが、偶然が多すぎやしないか。
さらに昨年トランプ次期大統領のフロリダ州ゴルフコースで起こった暗殺未遂事件犯もこの基地をたびたび訪れていたと囁かれている。あくまでも噂なのだが、この「3人の人物」について、アンナ・パウリナ・ルナ下院議員(フロリダ州)が、フォートブラッグ基地に関する内部告発者を呼びかけている。
(Text by Kasumi Abe)無断転載禁止