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お盆休みのガソリン価格は、去年の3割安

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト
(写真:アフロ)

帰省や行楽地に向かう自動車移動が活発化するお盆休みを迎えているが、今年のガソリン価格は例年と比較すると家計部門にとって「やさしい」状況にある。資源エネルギー庁の調査によると、直近の8月10日時点のレギュラーガソリン店頭現金小売価格は、全国平均で1リットル当たり141.3円となっており、去年のお盆シーズンの169.2円を29.2円(16.5%)下回っている。これは、この時期としては2012年の139.6円以来の安値となる。

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2008年のお盆休みは184.4円という記録的な高値を付けたため、お盆休みの自動車移動を抑制するような動きも報告されていた。昨年も急激な円安による原油輸入コストの高騰と消費増税が重なったことで、お盆休みとしては過去2番目となるガソリン高に見舞われていた。しかし、昨年後半以降の急激な原油安の影響で、今年は比較的安定したガソリン価格水準でお盆休みを迎えることができたと言えよう。

なお為替相場は1ドル=125円の節目を打診する急激な円安環境にあり、食品や衣料品などの分野では原材料輸入コストの高騰を反映する形で、強力な値上げプレッシャーが報告されている。しかし、ガソリン価格に関しては、原料となる原油価格がドル建てベースで前年同期の4割水準まで落ち込んでいることもあり、原材料を海外ほぼ100%依存する商品としては珍しく、小売価格レベルでの値下げが可能な状況になっている。

昨年7月14日の169.9円をピークに今年2月9日の133.5円まで急落した後は、改めて円安圧力が強くなったことや海外原油相場の反発を受けて、7月6日の145.2円まで切り返していた。しかし、海外原油相場が再び下値模索の展開となる中、その後は5週連続の値下がりとなった状態でお盆休みを迎えることに成功している。

足元では、海外原油相場が再び今年の最安値を更新していること(参考:リーマンショック後の最安値に近づく原油価格)、円安ペースが鈍化していることを考慮すると、秋の行楽シーズンには更に家計にやさしいガソリン価格が実現している可能性もあろう。円相場の急落などが回避できれば、シルバーウィーク前後には130円台前半から中盤まで値下がりしている可能性が高い。そして、冬が需要期になる灯油価格についても、直近では1リットル当たり83.8円となっており、昨年12月の90~100円水準からは大きく値下がりした状態にあることも確認しておきたい。

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マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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