川崎の住宅街にある首都圏屈指の源泉かけ流し療養泉!2食付き1万円以下の湯治プランは食事も大満足
旅行・グルメ・おでかけライターのsatochinです。神奈川県川崎市の住宅街に突然あらわれる「有馬療養温泉」。ビジネスホテルのような外観からは想像できない、黄金の膜が張る赤茶色の源泉かけ流しの極上温泉と、神奈川の新鮮な海鮮を中心とした食事が楽しめます。近場で湯治はいかがですか?
神奈川県にもあった「有馬療養温泉」
有馬温泉と聞くと兵庫県と思いませんか?ところが川崎市宮前区にも「有馬療養温泉」があるんです。東急田園都市線鷺沼駅からはバスで約5分、駅から歩くと20分ほど。住宅街の中に唐突にあらわれるこちらは、温泉マニアの間では有名な温泉です。
多くの帝や武将を治療した有馬西明寺霊泉
今から1337年前、大化3年12月に役小角(えんのおづの)という行者が、有馬龍宿山に霊泉源となる滝を発見。人々を様々な病気から救った「有馬西明寺の霊泉」や「誠の泉」として古文書に記されています。
さらに聖武天皇の子どもである阿倍内親王の病気を治し、村上天皇・朱雀上皇、源頼朝・北条時頼など多くの帝や武将達も、この霊泉で治療したという記録もあります。有馬西明寺は聖武天皇がお礼として建てたお寺です。
残念ながら大地震により霊泉の湧出は止まり、有馬西明寺も現在の川崎市小杉へと移転しました。
復活した霊泉
昭和40年(1965年)当時の宮前区は、田んぼに囲まれた土地で上水道も整備されていませんでした。移転してきた創業者の安岡孝さんが井戸を掘り、湧いてきた水をお風呂で沸かしてみたところ、水が赤黒く変色。このお風呂に入ったら疲れがとれ、持病のリュウマチの痛みも軽減。水質を調査してもらうと良質の温泉だという事がわかりました。
そこで近所の人にも自宅のお風呂を無料で開放。多くの人が訪れるようになり、昭和41年(1966年)に「有馬療養温泉」を設立しました。料金は無料のままでしたが、あまりにも多くの人が利用するようになったので、保健所から指導が入り、昭和43年(1968年)に療養温泉施設として登録。足腰の悪い人も利用できるようにと、旅館としての営業も始めました。
実は有馬療養温泉があるのは、かつて有馬西明寺の境内だった場所。井戸から湧く水は古文書に残る記録と同じ黄金に輝く霊泉と特徴が一致。地震で途絶えていた霊泉が復活したのです。
ここの温泉をたいそう気に入り、足しげく訪れていた当時の厚生大臣園田直氏が「霊光泉」と命名。皇后陛下に献上しました。旅館脇の八幡宮敷地には、その記念碑が建っています。
有馬療養温泉は日帰り入浴と宿泊が可能
電車と徒歩でのアクセスは上で紹介しましたが、車の場合は駐車場が近くに何ヶ所かあるので、受付で訪ねてください。
日帰り入浴は大人1,300円。バスタオルとフェイスタオルつきで2時間までです。20時を過ぎると800円となりますが、レンタルはフェイスタオルのみで時間も1時間までとなります。受付でお金を払ってタオルを受け取ります。
入口左手にあるのは談話室。日帰り入浴の人は、こちらで休憩できます。2階にも休憩室がありますが、筆者が出かけた時は使用不可となっていました。
2階・3階の和室は宿泊者や日帰り入浴で個室利用する人用。3階の廊下には湯治で長期滞在する人用の冷蔵庫と電子レンジがありました。
筆者は1人で6畳和室を利用。
ちょっと建物は古いですが、エアコンもテレビもあり、Wi-Fiが早い!
洋式トイレつきのお部屋。冷蔵庫やドライヤーもあります。
浴衣、バスタオル、フェイスタオル、歯ブラシセットもあって、アメニティは十分揃っていました。お布団は自分で敷くのですが、自分のペースで動けるので楽でした。
館内や浴室には手すりが多く、高齢者や体の不自由な人にも利用しやすい宿です。
体の芯から温まる赤茶色の温泉
湯船は男女とも内湯がひとつずつ。
泉質は単純鉄冷鉱泉(旧泉質名 単純炭酸鉄泉)低張性・中性・冷鉱泉。源泉が20.9度なので、蒸気式の浴槽内主熱交換器、外部予備熱交換器で40度前後に加温しています。が、それ以外は加水、循環ろ過、消毒なしの源泉かけ流し。首都圏でこれだけ徹底した源泉かけ流しの温泉は貴重です。
源泉は透明ですが、鉄分が含まれているので、酸素にふれ熱が加わると赤茶色に変色します。
ちょっと手や足を入れると、あっという間に見えなくなるほど濃い赤茶色です。成分表を見ると炭酸水素イオンは223.9mgと結構多く含まれているのですが、加温しているせいか泡付きは感じられませんでした。
ライオンの口から出ているのは源泉そのもの。少し舐めてみたのですが鉄の味が濃い!
40度とそんなに熱くはないお湯なのに、湯上りは汗がまったくひかない。そして、睡眠の質が悪い筆者が朝までぐっすり眠れたのにもビックリです。
温泉の営業は22時までと少し早めの時間に終わりますが、営業が終了した22時にはお湯を全部抜いて、毎朝新しい源泉を投入しています。源泉の井戸には今も毎日金色の膜が張っているそうですが、ポンプで汲み上げると膜が壊れてしまうそうで残念。ただ、冬の寒い朝などは湯船の表面に金色の膜が張り、虹色に輝くそうですよ。
筆者が出かけたのは夏。朝一番の湯船の表面をじ~~っくり見たら、薄い油膜のようなものが見えました。いつか金色の膜を見たいものです。
入口正面に飾られている一番右側の額は、温泉に浮かぶ成分を和紙に写したものです。
東京湾の新鮮な魚介が並ぶ食事
今回は食事少なめ湯治プランでの利用です。湯治や小食の人のためのプランと書かれていたので、夜中お腹空いたときのために、こっそり夜食を荷物にしのばせていきました。
が、どこが食事少なめやねん!とツッコミをいれたくなるくらい、十分なご馳走が出てきました。
食事はお部屋に運んできてくれます。アルコールは1階の自動販売機で購入できるほか、持ち込みも可能です。
この日の夕ご飯は、神奈川県の三浦半島の先にある猿島で釣ってきたというカサゴ。そのカサゴが丸々1匹煮魚として中央に鎮座していました。
他にはカサゴと横須賀のタコのお刺身、タコとワカメと胡瓜の酢の物、青菜のおひたし、オクラと茗荷の和え物。
鶏肉・椎茸・蕪・四角いがんもどき?の煮物、カサゴと玉ねぎの味噌汁。ご飯はおかわり自由。
どこが食事少なめですか?
困ったことにどれもおいしくて、箸が止まらない。あっという間に完食してしまいました。
翌日の朝ご飯。
三浦半島の剣崎で釣ってきたというイサキの塩焼き。きんぴらごぼう、シュウマイ、いんげんの胡麻和え、煮豆、漬物、味付け海苔、そして卵。お味噌汁は豆腐とワカメでした。もちろん、ご飯はおかわりできます。
しつこいようですが、食事少なめ湯治プランです。
イサキはもちろん、細く切ったきんぴらや味がしみしみのシュウマイもおいしい。煮込みシュウマイというのかしら?やわらかくて、噛むとお肉や野菜の旨味が口の中に広がります。
こちらのシュウマイ、創業者の奥様が初めてシュウマイをお土産で頂いた際に、どうやって食べるのか判らず、「火が通れば食べれるだろうから煮てみよう」と始めたのがきっかけだそうですよ。
デザートのヨーグルトだと思って最後までとっておいた白い小鉢は、蒸した卵でした。
中からおいしいお出汁が出てきて、半熟の黄身にからみます。こんな卵料理初めて食べました。できることなら白米と食べたかった。てっきりデザートだと思っていたので。
この卵は川崎のブランド卵「HE-BARA NO MEGUMI」という大木養鶏場さんから分けてもらっている卵。大木養鶏場さんは有馬療養温泉から車で15分ほど。大人気の卵は朝少量ですが一般販売をしているそうです。卵かけご飯もおいしいそうなので、車やバイクの人は帰りに寄ってみてはいかがでしょう?
とにかく、夕食も朝食もおいしくて大満足でした。
実はご主人たちが釣ってきたお魚を、旅館の食事に使用しているのだそうです。趣味かと思ったら船舶免許をもっているとか!釣ってきた魚や釣り仲間が持ってきてくれた魚が調理されて出てくるので、どれも新鮮なのです。
そして、奥さんが料理上手!家庭料理なのだけど、どれもほっと安心できる味なんです。
家庭的なサービスも魅力
今回いろいろお話を聞かせていただいたのは、三代目となる安岡一剛さん。お仕事中にも関わらず、古い貴重な文献やお写真も見せていただきました。
ネットのクチコミには、こちらのあたたかい接客が気に入っているという声も多く見かけました。グイグイ来るわけじゃなく、聞くと答えてくれる、この絶妙な距離感が心地いいです。
番台ではときどき看板犬がお出迎えしてくれますよ。
ちなみに2食つき湯治プランは、1人で宿泊する場合9,200円(税込10,120円)~。2人1室だと8,700円(税込9,570円)~。素泊まりはもっと安いです。関東では貴重な含鉄泉に入り放題で、この値段はとってもお手頃価格だと思いませんか?
遠くに出かけなくても、近くでできる湯治。田園都市線で渋谷駅から鷺沼駅まで22分。出張で東京や神奈川に来る人は、温泉とおいしいお料理に癒されて、ビジネスホテルに泊るより仕事がはかどるかもしれませんよ。