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誰がなるのか?――新チャイナ・セブン予測(6)

遠藤誉中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
2017年、第19回党大会の宣伝「より美しい明日のために」と庶民の実態(写真:ロイター/アフロ)

 いよいよ第19回党大会が始まる。誰が新チャイナ・セブンになるのか、そのリストは14日にすでに決まっている。そして約1週間後の一中全会で採決される。今さら予測しても仕方ないが、やはり気になる。

◆基本枠組み

 いよいよ18日から5年に一度の党大会が始まる。

 チャイナ・セブンを保つのか否かということも含めて、まずこれまで本コラムの「新チャイナ・セブン予測」シリーズで考察した結果に基づいて、基本枠組みを、おさらいしておこう。

1. 集団指導体制を変えることはない。民主集中制を変えることはないから。

2. 党主席を設けることはない。党規約には中共中央総書記に関する任期制限は明文化していないので、総書記を3期務めようと思えば、合法的に可能だから。

3. 同一政権内で中共中央政治局常務委員会委員の人数を変えることはない。つまり現在のチャイナ・セブンという人数を、習近平政権第二期に移るときに変えることはない。チャイナ・ファイブにしたりチャイナ・スリーにしたりということはない。今回は7人のままだ。

4. 国家主席を3期務めるということがあったとしても、第19回党大会でそれを決めることは絶対にない。なぜなら、これは憲法で「一期5年、最大二期」と制限されており、立法機関(全人代)で決めることなので、憲法改正手続きに着手しない限り変化はない。

5. 習近平が年齢制限(不文律「七上八下」の慣例)を破って三期続投をするため、という目的で、王岐山(69歳)をチャイナ・セブンに残すことはない。但し、王岐山は他の権威ある役職に就く可能性はある。それは習近平の三期続投のためではなく、反腐敗運動の主役として有能な人物だったからである。

 概ね、以上のように基本枠組みをもとに、それならいったい誰が新チャイナ・セブンのメンバーになるのかを予測してみよう。

◆新チャイナ・セブンの顔ぶれ

 10月14日に閉幕した第18回党大会七中全会で新チャイナ・セブンの最終リストが採択された。もちろん公開はされないが、誰が新チャイナ・セブンになるのか、概ねの予想を考えてみよう。

 まず、「七上八下」という慣例を破らないことが考えられる。

 となれば、習近平と李克強が残る。二人の肩書は変わらない。

 つぎに重慶市の陳敏爾(ちん・びんじ)書記が新チャイナ・セブン入りする可能性が高くなった。第19回党大会の一中全会における党内分業としては、現在の劉雲山氏の後任として思想・宣伝担当になる可能性が高いが、来年3月に開催される全人代で国家副主席に推薦されることになる可能性が高い。

 習近平の側近だから、身びいきにしているという見方もあるが、筆者が独自に得た情報によれば、「ともかく腐敗問題で捕まる可能性の低い人」を選んでいるとのことで、浙江省時代からの部下なので、習近平は陳敏爾の為人(ひととなり)を熟知しているからというのが最大の理由のようだ。新チャイナ・セブンから「腐敗分子」が出たらおしまいだ。もう誰も彼もが「賄賂、汚職、口利き…」に染まっているので、よほど古くから熟知している人でないと「怖い」のだという。

 そのため栗戦書(りつ・せんしょ)(中共中央書記処書記)も新チャイナ・セブンに入る可能性が高い。

 習近平が最初に地方に出た河北省からの知り合いで、栗戦書の身辺が潔白であることを知っているからというが、彼に関しては、少々ややこしい経緯がある。

 というのは今年7月、香港メディア「南華早報」に栗戦書の子女に関する腐敗問題が載ったからだ。「南華早報」はアリババの馬雲が、習近平への忠誠を誓うかのように買い取って中共傘下に置いてはいるが、実際のコントロール権は江沢民の大番頭、曽慶紅が握っている。

 拙著『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』のp.63&64やp.119~129辺りにも書いたように、曽慶紅がいなければ、こんにちの習近平はいないと言っても過言ではないほど、習近平は曽慶紅のお蔭で出世街道を歩いてくることが出来た。

 しかし習近平が反腐敗運動を始めてしまったものだから、腐敗の頂点にいる江沢民とその配下に恨まれることになった。もし「権力闘争」というなら、この敵対関係以外にはない。

 「南華早報」に載った栗戦書の子女に関する腐敗スキャンダルは、すぐさま削除され謝罪文も掲載されたが、この辺りが本当に「真っ白なのか」という疑問点は残る。

 筆者は『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』を書いた時点で、すでに孫政才に関して「腐敗のにおいがつきまとっている」ことを書いているが(p.196~202)、それでも重慶市書記になり政治局委員になっていた。その意味で、栗戦書の場合も危険因子として残らないではない。

 それでも習近平の栗戦書に対する信頼の方が勝っているのだろう。仕方がない。

 栗戦書は現在中共中央政治局委員だが、陳敏爾は中共中央委員会委員でしかない。陳敏爾の場合は習近平と同じように政治局委員という段階を飛び級で、いきなり常務委員になることになる。これは、そう不正常なことではない。

 栗戦書はおそらく、王岐山のあとを継いで、中共中央紀律検査委員会書記に就任するのではないかと思われる。

 但し、筆者が独自に得た情報と日本の毎日新聞の情報は内容的にほぼ一致しているが、中国大陸以外の海外中文メディアは違う。陳敏爾は新チャイナ・セブン入りしないだろうという分析が多く、まさに一中全会が始まってみないと、何とも分からない側面も否めない。

 それ以外に新チャイナ・セブン入りするであろう人物としては、胡春華(広東省書記、政治局委員)、汪洋(国務院副総理、政治局委員)などが考えられる。ほかに韓正(上海市書記、政治局委員)、趙楽際(中共中央組織部部長、政治局委員)、劉奇保(中共中央書記処書記、政治局委員、中央宣伝部部長)などの名が挙がっている(なお、彼らのプロフィールはそれぞれ『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』のp.188~p.230に書いてある)。

 これらも全て、一中全会における投票が終わらないと、何とも言えない。

◆全体的傾向として

 党主席制度復活から集団指導体制撤廃に至るまで、さまざまな噂が湧いては消えた1年だったが、全体的傾向としては、ほぼ常識的な線に収まりつつあるのではないかと思う。違うのは10月16日にコラム「習近平思想を党規約に――新チャイナ・セブン予測(5)」に書いた「習近平思想」くらいのもので、後継者に関しても、これまで通り次期メンバーに委託する可能性が高い。 

 となれば、なおさらのこと、「権力闘争」ではなかったことになり、習近平はあくまでも腐敗により一党支配体制が崩壊するのを防ぎたかったことになる。筆者がくり返し書いてきたように、ラスト・エンペラーになりたくないという思いが習近平には一番強いものと考えられる。

 また親日政府あるいは売国政府と呼ばれないようにするために、「反日」は絶対に揺るがないだろう。「反日デモ」が起きないのは、それが反政府デモになることを知っているので、反日デモが起きない程度まで、政府自身が反日の軸をぶらしてないということだと解釈すべきだ。建国に到るまでの中国共産党拡大の真相を覆い隠すために、反日の旗を降ろすことは絶対にない。

 その上で、習近平思想に関するコラムで述べた「中華民族の偉大なる復興」への道は強化していくことだろう。北朝鮮問題を考えれば、軍をいっそう強化していくことも避けられない課題だ。中米新蜜月を維持しながら、これからの5年内にアメリカを追い越そうと考えている。

中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。日本文藝家協会会員。著書に『中国「反日の闇」 浮かび上がる日本の闇』(11月1日出版、ビジネス社)、『嗤(わら)う習近平の白い牙』、『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』、『習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン』、『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』、『 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。

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