Yahoo!ニュース

<こぼれ話>今回のゲームショウ 独断で見る“勝ち組”は?

河村鳴紘サブカル専門ライター
「東京ゲームショウ2024」の様子=筆者撮影

 世界有数のゲーム展示会「東京ゲームショウ2024」が9月26~29日、幕張メッセ(千葉市美浜区)で開催され、4日間の来場者は約27万5000人でした。前年比で3万人増の盛況でしたが、取材をして感じた“勝ち組”を独断で挙げてみます。

◇ポケットペア 良くも悪くも話題の中心

 ゲームショウに出展する狙いの一つは「知名度のアップ」ですが、「注目を最も集めた」という意味でいえば、「パルワールド」を開発したポケットペアでしょう。任天堂と裁判になるだけでも強烈なのに、巨大なブースをどーんと構え、「パルワールド」のPS5版を発表(日本の発売時期は未定)。これだけ派手なことをして、ゲーム業界関係者の話題にならないはずがありません。インディーゲームのコーナーのボードでも、両社の対決を示唆するような書き込みを見かけましたし、良い悪いはともかく話題の中心でした。

 そして、ポケットペアの“やんちゃ”なアクションが、ソニーに“飛び火”していることもポイントです。ポケットペアがソニー・ミュージックソニー・ミュージックエンタテインメントと提携した経緯があるため、「ソニーVS任天堂」の視点にした記事も出ています。ソニーがエンタメ企業に出資をするのは他にもある話で、別にポケットペアがソニーグループの傘下になったわけでもないのですが。ネタがネタだけに一般メディアには、今後も何かと書かれそうです。

◇PS5 Pro 価格の評価は…

 ソニーと言えば、PS5の品不足と悪質転売、度重なる値上げもあって、一部のゲームファンからはすっかり悪役的な扱いをされている感があります。最近では、家庭用ゲーム機「PS5 Pro」(11月7日発売)の価格が約12万円と発表され、「高すぎる」と批判を浴びたのは記憶に新しいでしょう。

 しかし、ゲームショウでは少し風向きが違っていて、SNSでも、会場にいた関係者に聞いても、前向きなトーンがありました。理由の一つに、来年2月にPS5でも発売予定の「モンスターハンターワイルズ」で、PC版を遊ぶための最低・推奨環境を発表したことがあります。要するにモンハンを快適に遊べるPCより、PS5やPS5 Proの方が安くつくし、快適に遊べるのでは……という評価です。

 ゲームで遊ぶのであれば、PCとゲーム機を比較した場合、後者の方がコストパフォーマンスが良いのは、商品の設計を考えると当然です。しかし、具体的な例を出されてから、はたと気づく人が多いのでしょう。PS5の度重なる値上げ、PS5 Proの価格は関係者に聞くと「為替レートやインフレもあるし、仕方ない」という感じ。逆に「ダメだね。売れないし、ソニーは終わった」などという人は、私の知る限りいませんでした。

 そもそも論でいえば、ソニー・インタラクティブエンタテインメントが5年ぶりにゲームショウに出展したこと自体を評価する人ばかり。「やはりハードメーカーは出てほしい」というのが、関係者の偽らざる本音のようです。別にこの流れを狙ったわけではないでしょうが、ソニーは「持っている」と思わされました。

◇コナミの野球ゲーム 出す時期は理想的 

 「持っている」と言えば、コナミが発表した米大リーグの野球ゲーム「eBaseball:MLB PRO SPIRIT」(今秋配信予定)でしょう。米大リーグで活躍中の大谷翔平選手がワンシーズンで本塁打50本と盗塁50を同時に達成する史上初の「50-50」を達成し、本塁打と打点の二冠王に輝きました(三冠王だったらえらいこと)。さらにポストシーズンでの活躍にも期待がかかります。

 要するにゲームを「売り出す」タイミングとしては理想――これ以上に望めないほどの追い風にあります。実際にコナミの株価も一時的に上がったようですし、市場の反応は分かりやすいですね。

 ゲームが大ヒットするとき、ゲームそのものの面白さはもちろんですが、社会的な動きは影響します。コロナの「巣ごもり需要」で、「あつまれ どうぶつの森」やアニメ「鬼滅の刃」がメガヒットしたのは記憶に新しいところ。サービスが始まったときの反響に期待です。大切なのは、大谷フィーバーの熱気が冷めぬうちに配信できるか……ということ。開発陣へのプレッシャーは大変そうで、ぜひ頑張ってほしいものです。

◇より多くの人に知ってもらう重要性

 今回挙げたのは、ゲームショウがきっかけで話題を作った、好感度が少なからずアップしたという視点でチョイスしてみました。会場の盛り上がりでいえば「モンスターハンターワイルズ」や「ドラゴンクエスト3」の方が「上だ」という人もいるでしょうが、いろいろな見方があるということです。

 もちろんゲームショウで「話題になった」からといって、それが今後の成功を保証するわけではありません。しかし、ゲーム以外も含めてエンタメコンテンツは数多くあり、その中で埋もれないためにも、より多くの人に知ってもらうことが重要なのもまた事実です。

 多くの人に触れてもらうきっかけ、消費者との接点を増やすことは、従来以上に重要になるのではないでしょうか。SNSの人気も「一極集中」になりがち。良いゲームが黙っていても売れるなら、メーカーやクリエーターは苦労はしないのですから。

サブカル専門ライター

ゲームやアニメ、マンガなどのサブカルを中心に約20年メディアで取材。兜倶楽部の決算会見に出席し、各イベントにも足を運び、クリエーターや経営者へのインタビューをこなしつつ、中古ゲーム訴訟や残虐ゲーム問題、果ては企業倒産なども……。2019年6月からフリー、ヤフーオーサーとして活動。2020年5月にヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞。マンガ大賞選考員。不定期でラジオ出演も。

河村鳴紘の最近の記事