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「ドラゴンボール超 スーパーヒーロー」北米で首位デビュー。批評家の声は?

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
L.A.プレミアに集合した吹替えキャストと関係者(写真:REX/アフロ)

 19日に北米で公開された「ドラゴンボール超 スーパーヒーロー」が、週末の興行ランキングで見事1位を獲得した。3日間の興行成績は2,000万ドル。ただし、この数字は現地時間日曜午前の段階のもので、日曜の興行収入は推定によるもの。結果的には2,100万ドルまで行くのではないかという声もある。

 いずれにせよ、やはり新作映画で2位だったイドリス・エルバ主演作「ビースト」のおよそ倍で、余裕の首位だ。スクリーン数も、「ビースト」の3,743に対し「ドラゴンボール」は3,018と、少ないにもかかわらず大健闘した。このうち327スクリーンはIMAXで、売り上げは340万ドル。アニメ映画の公開初週末成績において、これはIMAXの史上最高記録だ。

 観た人の評価も良い。Rottentomatoes.comによれば、批評家の92%、一般観客の94%が褒めている。ただし、気に入った人も、そうでない人も、今作はシリーズ初心者向けではないという点で意見が一致する。

「New York Times」のカルム・マーシュは、「初めて観る人がどういう感想を持つのかはわからない。『ドラゴンボール 神龍の伝説』(1986)や『ドラゴンボール超 ブロリー』(2018)に出てきたことにも触れられるなど、今作がキャラクターやここまでの道のりを知っているファンに向けて作られているのは明らかだ。だが、10代の頃から熱心に『ドラゴンボール』を追いかけてきたこの批評家にとって、ファンサービスは少数の特別な人にだけわかる魅力をプラスしてくれた」と書いた。この記事は、見出しからして「『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』は豪華なファンサービス」だ。

 彼はまた、「『ドラゴンボール』は予測がつくし、同じパターンの繰り返しもあるが、それがまた美しいのである」「アニメーション(テクノロジー)が進化し、伝統的なアニメにCG効果が加えられるようになったおかげで、パンチやキックがよりビビッドで迫力のあるものになった」「『ドラゴンボール』シリーズのバトルシーンはいつもスリルたっぷりに描かれてきたが、『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』はビジュアル的にこれまでで最高である」とも述べている。

「Los Angeles Times」の批評の見出しは、「新しい『ドラゴンボール』映画は、シリーズの最高のパパにスポットライトを当てる」。批評家のトレイシー・ブラウンは、「人気がありながらこれまであまり出番のなかった孫悟飯とピッコロに焦点を当てることで、ストーリーに変化が出た」と評価。とりわけピッコロについては、「この映画のハート」だと褒める。「このシリーズにおいて最高の人間関係を描く今作は、ファン必見。だが、アクションがたっぷり詰まったビジュアル以上のものを求める初心者は、まずテレビ版をいくつかチェックしておくことをお勧めする」とも書いた。

 業界サイト「Variety」のマイケル・ノーディンも、「アメリカで2,500スクリーン以上の規模で公開する『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』は、シリーズにおいて最も野心的と言える。だが、今作はファンのためのものという姿勢を崩しておらず、初心者にはニュアンスがわかりづらい。これは批判ではなく警告だ。今作で『ドラゴンボール』シリーズに入っていくべきではない」と、同じ忠告をしている。

「Austin Chronicle」のリチャード・ウィテカーはもっと厳しく、「38年の歴史を持つ『ドラゴンボール』ほど初心者に不親切になったシリーズはない」と批判。作品自体についても、「ほかの『ドラゴンボール』作品と同じで、『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』にも、ファンに愛されるキャラクターが意味のない形でカメオ出演する」と、不満を表す。彼はさらに、それらのキャラクターたちのためにサブのストーリーを作ったせいで、「シリーズで最も面白いものになれたはずの話が邪魔されてしまった」とも、残念な気持ちを述べている。

 8月も下旬に入り、夏の大作映画はすでに全部出揃った。強力なライバルがいない中で、この映画がこの後どこまで数字を伸ばすのか、期待される。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「週刊SPA!」「Movie ぴあ」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイ、ニューズウィーク日本版などのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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