米国の銃への考え方は支持政党別で大きく異なる
銃の所有が一般人にも許可されている米国。しかし全員が銃所有に賛成しているわけではない。支持政党別による銃に関する認識の違いを、同国の民間調査会社Pew Research Centerが2017年6月に発表した調査報告書「America’s Complex Relationship With Guns」(※)から確認する。
次に示すのは米国において現状施行されている銃規制の強化追認や、規制の緩和の是非に関する同意率を、回答者の支持政党別に見た結果(銃の規制は州によっても大きく異なるため、回答者の居住地によって質問の解釈が変わる場合があるが、設問の規制や緩和の方向性に違いは無い)。
精神的に問題がある人には銃を購入できないようにする仕組みへの同意率は両派であまり変わりは無いが、それ以外は「銃規制強化追認は民主党支持者」「銃規制緩和は共和党支持者」の方が高い値を示している。銃所有・非所有者間ではほぼ同率だった「旅客機への搭乗が認められない人物のリストや監視リストに載っている人への銃の販売禁止」ですら、両派の間では小さからぬ差が出ている。銃そのものや銃によって生じた事件に対し、両政党間で反応が大きく異なるのも、これなら大いに理解はできる。
これは元々共和党が銃規制だけでなくさまざまな規制への政治介入を避け、経済を優先する立場(保守的考え)を持つのに対し、民主党では銃規制や環境保全問題への積極姿勢を見せており(いわゆるリベラル志向)、支持層もその考えに基づいて支持政党を決めているため。
また、元々民主党支持者は都市部に居住し、共和党支持者は地方近郊部に住んでいることが多いのも一因。属性の仕切り分けできれいに真っ二つに分かれるわけでは無いが、大よそそのような区分ができる。実際、銃の所有者は共和党支持者が圧倒的に比率の上で多く、都市部よりも近郊・地方の方が多い。
銃規制に関しては危ないから、事件が発生したから強化、必要だから緩和といった単純なものではなく、さまざまな思惑が絡んでいることを認識できる結果ではある。
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※America’s Complex Relationship With Guns
2017年3月13日から27日と、同年4月4日から18日にかけて行われたもので、RDD方式によって無作為抽出された電話番号(携帯・固定を問わず)の対象者(18歳以上限定)に専用のウェブへアクセスし回答してもらっている。対象者がインターネットへのアクセス環境を持っていない場合は、タブレット型端末と無線インターネット接続環境が貸与される。対象者数は合計で3930人。国勢調査の結果に基づき、年齢や性別、学歴、居住地域、人種などでウェイトバックが実施されている。
(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。