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再選挙の西之表市長選でも市民支持18%なのに、支持10%で市川市長当選のなぜ?

高橋亮平日本政治教育センター代表理事・メルカリ経営戦略室政策企画参事

鹿児島県西之表市長選が法定得票数満たず再選挙になった!

今月1月29日に実施された鹿児島県西之表市長選で6候補の得票が、法定得票に当たる有効投票者数の1/4である2,543票に届かなかったとして再選挙を行う事となった。

この後、西之表市では50日以内に市長選挙を実施する事となる。

市長選で再選挙は、1979年の富津市長選(千葉県)、1992年の広陵町長選(奈良県)、2003年の札幌市長選(北海道)、加美町長選(宮城県)に次いで、これまでに5例しかない極めて稀な事例だ。

今回の西之表市長選は馬毛島への米空母艦載機陸上離着陸訓練移転が争点となった選挙で、候補者が6人も乱立した。

最多得票の候補者は2,428票を獲得したが115票足りなかった。

2位は2,333票と95票差、3位も2,236票で192票差と、再選挙になると結果はどうなるか分からない僅差の接戦になっている。

西之表市長選の予算は約2,000万円だが、再選挙でさらに大きな住民負担が課される事になる。

選挙に関心のない理由に「入れたい候補者がいない」というのをよく耳にするが、選択肢が増える事が必ずしもいい事とは限らないという事例とも言えるかもしれない。

法定得票は選挙により異なり、得票数が同じ時は「くじ」で決める

公職選挙法第95条では、「衆議院(比例代表選出)議員又は参議院(比例代表選出)議員の選挙以外の選挙においては、有効投票の最多数を得た者をもつて当選人とする。ただし、次の各号の区分による得票がなければならない。」と定められている。

図表: 公職選挙法第95条に定められた各選挙における法定得票

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ちなみに同条2項では「当選人を定めるに当り得票数が同じであるときは、選挙会において、選挙長がくじで定める。」とされていて、法定得票を得た上で同点だった際には「くじ」で決める事になる。

西之表市長選でも市民の支持18.3%なのに、支持10.3%で市川市長当選のなぜ?

図表: 西之表市長選挙結果

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ここでもう一つ気にしたいのが、投票に行かなかった人も含めて有権者全体のどれ位に支持されたのかという事だ。

西之表市長選で最も得票した候補者の得票率は23.87%と、法定得票が25.00%という事を考えれば、その差はわずか0.13%という事になるのだが、実際に投票に行っていない市民も含めて考えると、この候補者でも市民の18.25%の支持しか得ていない事が分かる。

こう考えると、「再選挙もやむなしかな・・・」とも思えてくるかもしれない。

しかし、西之表市長選の場合、投票率が77.26%と極めて高かったため、それでもましな方なのかもしれない。

全国にはもっと悲惨な支持しか得られていないにも関わらず、なぜか市長に当選している事例もある。

図表: 市川市長選挙結果の推移

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その一つが私の地元、千葉県の市川市だ。

市川市は東京23区に隣接する人口全国31位の48万に規模のベットタウンである。

市川市長選挙が行われたのは、3年前の2013年11月。

自民・民主・維新・公明・生活・社民推薦の現職市長と共産党推薦の対抗馬の1対1となった市長選挙では、現職市長が得票率72.13%で圧勝した。

しかし、実際には投票率が21.71%と極めて低かった事もあり、現在の市長は市民の15.30%からしか支持されていない。

驚くのは、今回事件として紹介した西之表市長選で最も得票した候補者でも、市民の18.25%の支持を得ているという事だ。

確かに人口規模も違えば、地理的な条件など、自治体の置かれている状況は異なるので単純な比較はできない。

しかしどうにも釈然としないところはある。

ちなみにこの現職の市川市長、初当選の際はさらに激戦の選挙であった事もあり、市民からの支持はわずか10.28%、人口48万自治体で3万9千人の支持しかなかった。

低投票率、低支持のまま当選する仕組みはこのままでいいのだろうか

法定得票の考え方について、公職選挙法の逐条解説では、「当選人たるためには、その消極要件として、法律に定める一定数(いわゆる法定得票数)以上の得票があることがひつようであるが、これは、極端に少ない得票の候補者を当選人と定めることは、選挙人の代表たるにふさわしくないこと等を考慮したためであると考えられる。ただし、この法定得票数を甚しく高く定めると、絶対多数主義を取る場合と同じく、当選人が得られず、再選挙を必要とする場合が多くなる。」とされている。

法定得票率を定める事で、例えば、西之表市長選の再選挙ではいくつかの陣営が協力して候補者を一本化して当選させようという試みを行うかもしれない。

法定得票率がなければ、こうした余地を残さぬままに当選させる事になるため、有権者の意思と当選者との間にネジレが起きる事になる。

その意味では解消の部分はあるだろう。

しかし、逐条解説で示されていることが目的であるのだとすれば、制度として、その基準を有効得票総数にしている事が本当にいいのかを考えざるをえない。

むしろ都市部やベットタウン等でここまで投票率が低くなってくると、むしろ同時に有権者数の一定の支持が得られなかった場合もその条件に加える必要があるかもしれない。

マスコミに注目される極めて稀な千代田区長選の結果に注目

図表: 千代田区長選挙結果の推移

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一方で、国政選挙並みに注目の集まる選挙もある。

小池百合子都知事と「都議会のドン」等と言われる内田茂都議の「代理戦争」とも言われる千代田区長選挙だ。

1月29日に告示となり、2月5日の日曜日が投開票となる。

ワイドショーでも連日のように放映され続けてきたこの千代田区長選挙の投票率がどこまで高くなるかは大きな見ものである。

今回の紹介した3つの自治体。

投票率が77.26%と極めて高く、トップの候補者が2,428票18.25%の有権者支持を得ながら、得票率が23.87%で再選挙になった西之表市長選。

人口が48万もありながら38,620票10.28%の有権者支持を得なかったにも関わらず、市長に当選した市川市長選挙。

得票率48.56%、区民支持20.23%だが、東京23区の区長でありながら8,287票で当選できる千代田区長選。

有権者の皆さんにもよくよく地元の地方選挙についても考えてもらいたい。

日本政治教育センター代表理事・メルカリ経営戦略室政策企画参事

元 中央大学特任准教授。一般社団法人生徒会活動支援協会理事長、神奈川県DX推進アドバイザー、事業創造大学院大学国際公共政策研究所研究員。26歳で市川市議、全国若手市議会議員の会会長、34歳で松戸市部長職、東京財団研究員、千葉市アドバイザー、内閣府事業の有識者委員、NPO法人万年野党事務局長、株式会社政策工房研究員、明治大学世代間政策研究所客員研究員等を歴任。AERA「日本を立て直す100人」に選ばれた他、テレビ朝日「朝まで生テレビ!」等多数メディアに出演。著書に『世代間格差ってなんだ』(PHP新書)、『20歳からの社会科』(日経プレミアシリーズ)、『18歳が政治を変える!』(現代人文社)ほか。

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