圧倒的増加を見せる中国…主要国の一次エネルギー消費量推移をさぐる
・一次エネルギーをもっとも多く消費している国は中国、次いでアメリカ合衆国(2017年時点)。
・エネルギー消費量は2009年に米中が逆転し、以降は中国がトップ継続。中国は増加を続けているが、アメリカ合衆国はほぼ横ばいに。
・リーマンショックの2009年には多くの国で経済後退の影響を受けて消費量の前年比がマイナス。一方で新興国の中国やインドなどでは影響をほとんど受けていない。
10年間で大きく消費が増える国、減る国
イギリスに本拠地を構える国際石油資本BP社が毎年発行しているエネルギー白書「Statistical Review of World Energy」には、主要国のエネルギーに関する多彩なデータが盛り込まれており、これを用いることで各方面から諸国のエネルギー動向を推し量れる。今回はそれを活用し、中期にわたる主要国における一次エネルギー(※)消費動向を見ていくことにする。
最新の公開分となる2017年分データでは、一次エネルギーをもっとも多く消費している国は中国、次いでアメリカ合衆国の順。
直近の2017年時点における上位国10か国について、過去10年分をさかのぼり、その動向を追ったのが次のグラフ。上位5位に限っては折れ線グラフも別途生成した。
中国の工業化が急激に進んでいることは、他の各種資料でも明らかだが、それに伴い一般市民の生活水準も向上。それが元々人口の多い同国のエネルギー消費量増加に拍車をかける形となっている。つまり(人口増加)×(一人あたりのエネルギー利用量増加)で、累乗的に消費量は増えていく。産業面でも似たような状況なのは明白。
上記グラフにある通り、米中両国間でエネルギー消費量が逆転したのは2009年。アメリカ合衆国が景気後退や省エネ化の促進でエネルギー消費量を漸減している一方(技術や経済力、工業力の伸張が、必ずしもエネルギー消費量の増加には連動しないことは要注意)、中国は漸増を続けているのだから、両国間でクロスが生じるのも当然の話。双方のエネルギー政策、消費動向に変化は無く、時間の経過とともに差異はさらに開く傾向にある(アメリカ合衆国は経済が復調してきたこともあり、ここ数年は横ばいとなっている)。
また、インドと日本においては、米中同様に日本の漸減・インドの増加により、こちらも2009年に逆転現象を起こしている。ただしインドでは、中国ほど大規模な増加率はまだ示していない。もっとも2017年の前年比はプラス4.3%。非常に大きな伸び率に違いない。
前年比の推移をさぐる
これら諸国のエネルギー消費量について、前年比計算をした上でグラフとして生成したのが次の図。多数国を一枚に収めるため、多少見難くなるが、あえて棒グラフにしている。
多くの国で2009年の値が大きなマイナス値を示している。これはリーマンショックの直接の影響を受けて、産業・消費が停滞、その分エネルギー消費量も減少したのが原因。その反動もあり、2010年はそれなりにプラスを示しているが、それ以降は息切れしている国も少なくない。
一方で、上記に挙げた中国やインド、さらにはブラジル、イランでは金融不況やリーマンショックの影響もほとんど受けず、ほぼ継続的にエネルギー消費量を増やしている。特に中国とインドはその上げ幅も大きく、絶え間無い伸びを示しているのが分かる。他方、オリンピック開催中のブラジルでは伸びが失速し、2015年以降は複数年でマイナス値を示している。他の経済指標にも似たような動きがあり、同国の経済が複数要因で失速したことが表れている。
エネルギー系の記事では繰り返し述べているが、そして本文でも言及しているが、「エネルギーの消費量」はあくまでも産業・経済の発展を示す一つの指標に過ぎず、絶対的なものでは無い。例えば他の条件が同じなら、人口が多い国の方が量も大きくなるのは当然の話である。また、エネルギーの消費効率(要は無駄使いしているか否か)でも大きな変化か生じる。単に多ければよいわけでは無い。GDPなどと同等に、一律に扱うのは難がある。
今件「一次エネルギー消費量」はそれらを把握した上で、眺めることをお勧めしたい。
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※一次エネルギー
自然界に存在するそのままの形を用い、エネルギー源に使われているものを指す。化石燃料(石油、石炭、天然ガスなど)、ウラン、そして水力、火力、さらには太陽熱・太陽光・地熱などの再生可能エネルギーが該当する。他方「二次エネルギー」も存在するが、これには電気やガソリンなど、一次エネルギーに手を加えて得られるエネルギーなどが対象となる。
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