冷夏予想の影響が大きく反映された景気ウォッチャー調査結果
先行き判断DIが落ちた。少量ではあるが気になる
2014年7月8日付で発表された景気ウォッチャー調査の結果は、現状判断DIが前月比でプラス2.6ポイントの47.7、先行き判断DIは0.5ポイント減の53.3となり、現状プラス・先行きマイナスという結果に落ち着いた。景気判断のコメントは「景気は、緩やかな回復基調が続いており、消費税率引上げに伴う駆込み需要の反動減の影響も薄れつつある」となり、消費税率改定で直前までの駆け込み需要の反動も合わせ減退していた消費性向が回復基調にあることを言及している。
このうち先行き判断DIに関して3か月ぶりに減少を示したことから、「早くも景気先行き感の失速」との懸念が一部で言及されている。元々基準値50を超えていることや、0.5ポイント位ならば誤差の範囲でしかないのだが、それでも気になることに違いは無いので、もう少し詳しく調べてみることにした。
まずは先行き判断DIの詳細は次の通りとなる。
基準値50を下回っているのは、「商店街・一般小売店」「衣料品専門店」「その他サービス」「住宅関連」。それ以外はすべて基準値を上回っており、平常以上の堅調ぶりを期待しているようすがうかがえる。これはひとえに夏のボーナスによって市場が活性化するのに加え、今年は昨年以上のボーナスの額面アップで、消費者の財布の紐が緩むことが期待されているからに他ならない。
一方、今回マイナスを示した「先月比における」先行き判断DIは次の通り。例えば合計値はマイナス0.5と出ているが、今回月の6月は53.3、前回の5月は53.8で、53.3-53.8=マイナス0.5という次第である。
特に大きなマイナスへのぶれが目立つのは「百貨店」「スーパー」「衣料品専門店」「家電量販店」「通信会社」「その他サービス」。「家電量販店」は先月の上昇の大きさの反動によるところも多分にあるが(何しろ5.3ポイント下落してもなお60を超えている)、それ以外の項目はやや気になるところ。
コメントの中身を見ると原因は……
そこで減少幅の大きな項目も含め、景気ウォッチャー調査の具体的なコメントを確認したところ、多分に「冷夏予想」が景気の先行きにブレーキをかけている雰囲気が見受けられた。コメントが収録されているファイルで「冷夏」が含まれる場所は全部で33件におよび、大よそ「冷夏と予想されていたが違った、直近の予想で平年並みに変わったので安心」が1、「冷夏らしいので売上が減る懸念、不安」が4、その他「冷夏の方が良い」が少数意見という比率となっている。
そして案の定、「懸念、不安」の回答事例は、大きく下げた項目で多数見受けられる。例えば次のようなコメントが寄せられている。
・懸念材料は、冷夏と予想されている気候が、どの程度影響を及ぼすかが不透明な点である。(百貨店)
・長期予報のとおりの冷夏になれば、7~8月の売上が期待できない。(家電量販店)
・エルニーニョ現象の影響で冷夏が予想されているため、夏型商材である飲料水、アイス、ビールなどの売上が減少することが懸念される。(コンビニ)
・予報どおりエルニーニョの影響で東日本が冷夏となった場合、好調に推移しているカジュアル衣料でも夏物商材の動きが鈍くなる。(衣料品専門店)
つまり、先行き判断DIが6月において大きく下げた要因としては、多分に「冷夏予想で消費が減退し、景気回復感が足踏みする」との懸念によるものと考えられる。
現状では今夏の予想は…?
一方、現状の気象庁の発表ではエルニーニョ現象の可能性は引き続き高いものとして言及されているものの、今夏の平均気温長期予想は「8月西日本高め」「9月西日本低め」に差し変わっており(「2014年6月25日時点の季節予報(気象庁)」)、少なくとも暑さが本番となる7月から8月においては、冷夏となる可能性は低いとの予測が成されている。
回答コメントの中に「予想が冷夏から変わった」と「冷夏になるらしい」が混在しているのは、予想が冷夏から切り替わったタイミングもあり、まだ巷に浸透が進んでいない時期だったからのようだ。仮に情報の浸透が早ければ、回答結果ももう少し違うものとなっていたかもしれない。
ともあれ、次の景気ウォッチャー調査の結果は2014年7月分となるため、まさに夏本番、そしてボーナス支給月であることから、小売店にとって正念場、天王山となる。今現在の進行中の台風8号の直撃の影響もあわせ、今後の気象動向と、景況感の行先が気になるところだ。
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