理系学生の就活に変化。深刻なエンジニア不足が影響する日本の就職活動とは。
世界情勢の影響やDX・AI化など、デジタル環境が急加速する中、国内でIT人材は2030年には最大で79万人不足すると経済産業省が発表したことは多くのメディアが取り上げた。中でも情報セキュリティ人材の不足はここ数年注目を浴びている。ここで考えるべきはIT人材の定義で、どんなIT技術でも良いわけではなく、コロナの飛沫感染データで再注目された富岳などのビッグデータ、IoT、AI、データサイエンスなど先端IT人材のニーズが高まっている。
そんな中、株式会社ディスコは202卒理系学の序盤の就職活動(専攻分野別)を発表している。IT人材不足で企業が理系人材に注目を集めている中、理系学生の意識はどう変化しているのか。
理系学生の8割以上がインターンシップに参加
ひと昔の理系学生の就職活動は、教授の意向や研究作業でなかなか時間捻出が難しく推薦枠での就職先を探すイメージがあった。ところが、近年は状況が違うようだ。文系学生とほぼ変わらないインターンシップへの参加率で1日以内のプログラムは、いずれの属性も8割以上が参加経験を持っている。参加時期の内訳は、いずれの属性も8月が最多となっていて、全体的に前倒しになっている文系就活とさほど変わらない。
理系学生の意識や行動が変化している背景には、コロナ禍の影響があるようだ。レポートには、オンラインのみで実施されたプログラムへの参加が7割強となっており、時間に制限のある理系学生がオンライン就活を駆使して可能性を広げていることが分かる。
第一志望になったきっかけは
理系学生が第一志望になったきっかけで最多だったのはインターンシップ等のプログラムに参加して興味を持ったが大半で、理系学生の就職活動でもインターンシップの重要性が浮き彫りになっている。となれば、企業は学業に影響をなるべく出さないプログラムを開発してオンラインを駆使しながらインターンシップ市場でPRすることが優秀な理系学生を採用することに直結するので、この2年で様々なプログラムが登場している。
さらにデータでは、理系学生が企業を選択する際に重要視しているのは将来性が最多、給与・待遇が2位となっていて、こちらも文系学生と思考状況も大きく差はない。関西の現役理系就活生は下記のように話している。
「先輩たちがコロナ禍の就活で苦戦している姿を見ていたのと、大学の推薦枠が景気の影響もあって減っていて、自力で就職活動をしなければいけない現実を理解していたので、研究も気になりますが早期市場に意図的に飛び込みました。世の中がエンジニア不足と騒がれていて、自分たち理系学生に注目が集まっていることも分かっていますがいざ活動してみると理系学生ということだけでは評価されませんし、今企業が何を求めているのかを理解することが重要だと考えています」
たしかに、データからも推薦の利用予定者は理系全体の3割強となっていて、ひと昔と状況は異なるようだ。
「面白そう」と感じる仕事
最後にデータから読み取る中で理系学生の意識・傾向が分かるのは面白そうと感じる仕事で、
・理系全体で最多は結果が目に見え、カタチになる仕事(58.1%)
・ 機械・電気系学生は、世界を相手に働ける仕事や特許や特殊な技術力を生み出す仕事などが他の専攻学生より高い。
・ 情報系学生はチームワークで成し遂げる仕事が高く、土建系学生は地域・地元に貢献できる仕事が高い
今、市場や企業が求めている高度なIT技術をもった人材を考えると、理系学生がはたらく未来に描いている仕事はマッチしている。一方で、学生が社会のリアルを理解して、目先の給与や待遇、面白そうという企業選びにならない為の情報提供は社会や大学側からはまだまだ発信が足りていない。
日本でエンジニア不足という大きな課題がある中で、将来のエンジニアを創出していく為には日本の古い就活文化を新しい時代にアップデートさせていくことがひとつのカギになる。
学生自身が、主体的にはたらく未来に興味を持ち、現実を理解した上で企業や職種を選択できるように大人たちがサポートをすべきだ。引き続き、変化が激しいコロナ禍の就職活動に注目したい。
はたらくを楽しもう。