ガソリン価格、お盆休みを前に5週連続の値上がり
資源エネルギー庁が8月7日に発表した石油製品価格調査によると、8月5日時点でのレギュラーガソリン店頭小売価格(全国平均)は前週比+1.3円の1リットル=160.1円となった。
これで5週連続の値上がりとなり、当該期間の累計上昇幅は8.2円に達している。160円台乗せは2008年10月14日の週以来、実に4年10ヶ月ぶりのことになる。今年上期は総じて150~155円水準での取引になっていたが、お盆休みという夏休みの行楽需要のピーク期を前に、ガソリン価格の上昇傾向が一段と顕著になっている。
引き続き、海外原油高や円安などのコスト転嫁が継続しており、上流部門からの値上げプレッシャーが継続していることが再確認できる。年初からは10円(6~7%)前後の値上がりとなっている。
■お盆休み明け後に調整リスク
9月には電力料金、10月には乳製品などの値上げが控える中、それに先行する形でのガソリン価格高騰は家計に対する影響も懸念されることになる。昨年の場合、8月のガソリン販売高は月間で543万キロリットルとなっており、1リットル=10円の値上がりでは日本全体で月間543億円の負担増となる計算である。国民1人当たりだと、500円程度の負担が発生していると考えると、分かり易いだろうか。
ただ、ガソリン価格の高騰は既に最終段階が近いと考えている。少なくとも、08年の過去最高値185.1円(08年8月4日の週)を試すような相場環境ではないだろう。
石油連盟が7日に発表した「原油・石油製品供給統計週報」のデータによると、8月3日の週のガソリン推定出荷量は109万6,770キロリットルに達しており、5週連続で100万キロリットルの大台を維持している。原油処理量は4月20日の週以来の高水準に達しており、末端の良好な需要環境を背景にガソリン増産が進んでいることが確認できる。その意味では、現在のガソリン消費環境は150円台後半から160円水準の価格水準を容認していると評価することができよう。
ただ、例年だとお盆休み明け後に末端需要が減退に転じることで、8月下旬には末端からの値下げプレッシャーが徐々に強まる可能性が高い。特に必要以上の在庫を溜め込んでいる印象はないものの、今後は行楽需要の拡大に備えて高水準の在庫を手当てする必要性は薄れることになり、少なくとも価格上昇圧力は後退する傾向にある。
実際、業者間転売価格や東京商品取引所(TOCOM)のガソリン先物相場(当限)は高騰相場が一服しており、既に高値安定期に移行している。
■海外原油高と円安は一服
7月上旬は急激な海外原油高への対応を迫られることになったが、ウェスト・テキサス・インターメディエイト(WTI)原油先物相場は、1バレル=100ドル台前半で上げ一服となっており、急騰傾向が一服している。
米国内需給の改善圧力は継続しているが、今後は末端ガソリン販売のピークアウトに備えて製油所向け原油需要が落ち込む可能性が高く、米原油在庫の減少を基点とした原油価格高騰局面は一服に向かうだろう。中東や北アフリカといった地政学的環境に突発的なトラブルが発生しない限り、110ドル、120ドルと値位置を切り上げている相場環境にはない。
しかも、9月には米金融緩和政策が転換期を迎える可能性から、リスクマーケット全体で買いスタンスを後退させる動きが目立つ。米国では08年から続いてきた中央銀行による資産購入の動きに歯止めを掛ける動きが強まり始めており、資産価格全体の上昇傾向にブレーキが掛かるリスクが警戒されている。
本来は、ドル高・円安となるべき為替市場も、「米金融緩和策の縮小→米金利上昇→ドル高」よりも、「米金融緩和策の縮小→リスク回避→円高」のフローが重視されており、為替市場の観点からも国内ガソリン価格が急騰する地合ではなくなっている。円安トレンドそのものが変わったとは考えていないが、直ちにコスト高を転嫁する必要性が後退する中、ガソリン価格は高止まりからやや軟調地合に転換していくことになるだろう。1リットル=150円台後半に収束する可能性が高いとみている。