競泳「瀬戸大也選手」が白昼不倫で「妻」まで「公開謝罪」~「不倫」をしてはいけない理由
東京五輪代表に内定している競泳男子の瀬戸大也選手が、一般女性と不倫していることをデイリー新潮(電子版)に報じられたことを受け、瀬戸が所属事務所を通じて24日、謝罪しました。
また、妻の優佳さんも同様に謝罪しています。
このように、不倫が発覚すると公開謝罪をしなければならなくなるケースが少なくありません。そこで、不倫はなぜしてはいけないのかを、「結婚」について考えることからアプローチしてみたいと思います。
「結婚」とは何か
人間は男女の性的結合関係を介して種を保存してきました。この関係を規範によって統制しようとするところに、婚姻(結婚)制度が生まれます。
それぞれの時代・社会には、それぞれの要請にふさわしい婚姻制度がありました。私たちが前提にするのは近代市民社会が成立してからの婚姻制度であり、日本では日本国憲法に基づく婚姻制度です。
「日本国憲法」の結婚観
憲法は、婚姻について24条1項で次のように規定しています。
日本国憲法24条1項
婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
この条文から、婚姻が成立する要件として次の3つを導くことができます。
婚姻の成立要件 その1~婚姻は「両性の合意」のみに基づいて成立する
第1に、婚姻が両性の合意のみに基づいて成立することを要求しています。婚姻をする者に自由な独立した人格を認め、婚姻はそれを基礎とする「一種の契約」であるという婚姻観を表明しています。
婚姻の成立要件 その2~夫妻平等の下で相互協力により維持される
第2に、夫と妻が平等の権利を有することを基本とし、相互の協力によって婚姻が維持されなければならないとします。性差別を否定し、夫婦の法的地位の平等と同権を保障しています。これが前提にあって初めて、夫婦相互の愛情と協力による家庭生活が維持されると考えているのです。
婚姻の成立要件 その3~一夫一婦制
第3に、一夫一婦制です。これは、先の2つの点と表裏の関係にあり、近代民法の婚姻の本質とされています。パートナー関係の独占排他性です。過去には一夫多妻制や妻妾制度なども存在しましたが、近代社会では、同時に複数の者と婚姻関係を持つことは公認されていません。
夫婦が「貞操義務」を負う理由
そして、憲法が掲げる「婚姻の成立要件 その3~一夫一婦制」を具体的に体現するために、民法は次の3つの条文を規定しています。
1.重婚の禁止(民法732条)
配偶者のある者は、重ねて婚姻することはできません。
民法732条(重婚の禁止)
配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない。
2.同居協力扶養義務(民法752条)
夫婦は同居し、互いに協力し扶助し合わなければなりません。
民法752条(同居、協力及び扶助の義務)
夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。
夫婦には同居義務が課されていますが、職業上の理由、入院治療などの正当な理由があれば、一時的に別居することは認められます。
協力義務の内容は各当事者の事情によって異なります。具体的には、日常生活の維持、病者の看護、子の養育などあらゆるものが含まれます。
扶助義務とは、相互的な経済的援助を意味します。夫婦は同居して共同生活をするため、相手方が要扶養状態に陥った場合には、相手方の生活を自己の生活と同じように保持する義務があります。
3.不貞行為が離婚原因となる(民法770条1項1号)
不貞行為(配偶者以外の人と性的関係を持つこと)は、離婚原因となります。
民法770条(裁判上の離婚)
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2 裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
以上のとおり、一夫一婦制という婚姻の本質および重婚が禁止され、同居協力扶助義務が規定され、不貞行為が離婚原因になることから、夫婦は相互に「貞操義務」を負うとされ、「不貞行為」(「不倫」~配偶者以外の者との性的関係を結ぶこと)を禁じています。
「公開謝罪」をしなければならない理由
実は、民法には、「婚姻をして、配偶者がいる者は不倫をしてはならない。」といった、不倫を直接禁止する条文は存在しません。
その理由の一つとして、「結婚をした後に、配偶者以外の者と性的関係を結ぶことはしてはならないのは近代市民社会において要請されるのは当然のこと」(つまり、規定するにおよばないこと)という考えから、立法者は、「不倫禁止条項」をわざわざ規定しなかったと推測されます。
不倫は、書いて字のごとし、「倫理」に反することです。「倫理」とは、「行動の規範としての道徳観や善悪の基準」(新明解国語辞典)であり、倫理に反することをわざわざ法で規定する必要はないということです。そして、倫理に反することを行えば、世間から非難の的にされてしまうので、公開謝罪をしなければならなくなるという成り行きです。
なぜ「妻」まで公開謝罪しなければならなかったのか
瀬戸ご夫妻は、大手食品メーカーでCMに起用されています。その理由の一つとして、ご夫婦が前掲の「同居協力扶助義務」を体現している典型的な家族として広く世間から認知されていることが考えられます。
しかし、今回の瀬戸選手の行動は、「同居協力扶助義務」の中の特に「協力義務」を損なう行動と考えられます。瀬戸選手もその点を踏まえて、前掲の謝罪文の中で「支援頂いている企業の皆さま」へ向けて謝罪しています。また、本来は、公開謝罪する必要がない妻の優佳さんも謝罪しているのもこの点を配慮したと推測されます。
なお、判例によれば、不貞行為は、配偶者の一方と相手方の共同不法行為とされています。不貞行為をされた配偶者は、不貞配偶者とその相手方に対して慰謝料請求をすることができます。
このように、不倫は倫理と結びつく行為のため、言ってみれば「部外者」である世間に対してまで謝罪しなければならなくなります。そのため、今回のように本来は謝罪する立場にない「不貞行為をされた配偶者」まで謝罪しなければならないこともあるのです。
理屈はさておき、不倫の代償は少なくありません。配偶者をお持ちの方はそのことをお忘れなく。