【板倉滉】 フェイエノールト戦で感じたライバル心。「俺、彼には負けたくなかったんですよ」
フローニンゲンは2月24日、フェイエノールトの猛攻を凌ぎきって0対0で試合を終えた。
タイムアップの笛が鳴り、「勝ちたかったなあ……」と思っていた板倉滉に、DFテ・ウィーリクが「よっしゃあ!」と抱きついてきた。
4位フェイエノールトと6位フローニンゲンの差は勝ち点4。この試合に勝てば一気に差を1まで縮めるチャンスだったが、負ければ7差まで広がってしまう。残り11試合もある中、今は丁寧に勝ち点1を拾って、フェイエノールトに食らいつくことの方が重要だ。なにより、守備陣にとって強豪チームを“ゼロ”に抑えることは、この上ない快感である。テ・ウィーリクの「よっしゃあ!」の叫びには、そんな思いがこもっていた。
「相手をゼロに抑える――。ディフェンスラインはそこだけですね。ともかく必死に守った。どうにかして1点決めて、勝ち点3をとりたかったけれど、前線の選手もすごく戦った結果の“ゼロ・ゼロ(0対0)”ですので、次の試合に向けてまたやっていきたいですね」(フェイエノールト戦後の板倉)
■フェイエノールトの監督と主将が「アイツ(板倉)のコースを消せ」と叫んだ
速さ、高さ、地上戦の強さ、正確なパスの供給など、テレビ中継の実況は毎試合のように板倉のことをたたえている。例えばフェイエノールト戦、後半アディショナルタイムのこと。ハイボールを難なくヘッドで処理してキーパーにバックパスすると、実況が「板倉はちょっと普通じゃない!」と叫んでいた。決してビッグプレーを披露したわけでもないのに、彼らは板倉の落ち着き払ったプレーに唸っている。
フェイエノールト戦の開始早々、板倉がアンカーの位置に上がり、DFからのパスを受けてマークをはがしてから、味方のMFにつなげたシーンがあった。この一連のプレーで、フェイエノールトは『板倉が中盤に上がったら自由にさせてはならない』と悟った。フェイエノールトのアドフォカート監督、FWベルフハウス主将が「アイツへのパスコースを消しに行け!」と指示を出す声を、板倉はピッチの上で聞いた。
――それから板倉選手が中盤に上がっても、味方からパスが出てこなくなったんですよね?
「でも、それでよかったんですよ。最初はリンセン(フェイエノールトのストライカー)が前掛かりに来ていたのが、“あの一本”で僕が中盤に上がると付いてくるようになった。すると、DFラインに残った選手だけでボールを回せるようになる。だから、味方には『無理して俺に出さなくていいよ』って声をかけてました。敵の動きを見ながら上がってみたり、下がってみたり、相手が迷って嫌がるような動きをしてました。こういう駆け引きは面白いですね」
■「俺、セネシに負けたくなかったんですよ」
試合のことをああでもない、こうでもないと話していた最中、板倉が「セネシもいいねえ。彼はいいわあ」と言った。
セネシ(23歳。アルゼンチン人)はオランダリーグを代表するセンターバックの一人で、固い守備、正確なビルドアップのパス、セットプレーでのシュートのアイデアなどに秀でている。セネシは今度の夏の移籍市場で目玉になることが予想されている。
セネシは前節のトゥエンテ戦(2対2)でちょっと不調だったが、フローニンゲン戦では盤石の守備を見せていた。
「俺、彼に負けたくなかったんですよ。コーナーのマーク、セネシだったから、『絶対にこいつにはやらせない。こいつにやられたら、俺は終わりだ』って思ってやってました。でも、相手にしながら『いい選手だ』と思いました。今日の試合で見たけれど良いよ。落ち着いている。左足うまいし。面白かったですね」
23節を終えた時点で、全試合フル出場(つまり2070分間)しているのは9人。そのうちフィールドプレーヤーは4人しかいない。その中に板倉とセネシが含まれている。
「嬉しいことですよね。監督がこうやって使ってくれているし。その気持ちに応えたいと毎回思う」
最後に「充実の“ゼロ・ゼロ”でしたか?」と訊いた。
「欲を言えば勝ちたかったので、『次につなげたいゼロ・ゼロ』ですね。こんなところで『やったあ』って一喜一憂している暇はない。すぐ中3日で次の試合(対フォルトゥナ)があるから、このまま気を抜かずやっていきたい」
【オランダリーグフル出場選手一覧】
※第23節終了時点
セネシ(フェイエノールト/DF)
T・コープマイナース(AZ/MF)
ワインダル(AZ/DF)
板倉(フローニンゲン/DF)
パット(フローニンゲン/GK)
パスフェール(フィテッセ/GK)
ランプルー(RKC/GK)
ムルダー(ヘーレンフェーン/GK)
ドロメル(トゥエンテ/GK)