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「りあるキッズ」“再会”について、綴らないわけにはいかないこと

中西正男芸能記者
(写真:アフロ)

漫才コンビ「りあるキッズ」として活動していた長田融季さんと安田善紀さんの久々の再会を報じた雑誌「FRIDAY」の記事がネットでも配信されました。

融季さんとは吉本興業在籍時から家族ぐるみの付き合いをさせてもらってきましたし、安田さんとも幾度となくお話もさせてもらってきました。

YouTubeで活動を再開する時に融季さんから電話をもらい、どんな思いでYouTubeを始めるかを聞きました。共通の知り合いの芸人さんの反応なども踏まえ、こちらからも僕が思うことを伝えました。

「お金の話だし、迷惑をかけた人が明確にいらっしゃる。皆さんにしっかりと本当に“ごめんなさい”が済んだ時点で、その時の思いまでを含めて話を聞かせてください。それがみんなにとって一番良い形だと僕は思うし、それならば力いっぱい話が聞けます」

逆に、安田さんからも話を聞いてきました。2014年に融季さんがトラブルで吉本興業を離れるまでの葛藤。そして、離れてからの苦悩。とても重たい話でもありました。

14年、本来ならば「りあるキッズ」は勝負をかけて東京進出するはずでした。30歳を前に最後の戦いに出る。東京で3年やって売れなければ、芸人をやめる。覚悟を決めたところで融季さんのトラブルが表出し吉本をやめることになりました。

その流れで、コンビは解散。安田さんはこの上なくハシゴをはずされた形で、東京で孤独な戦いを続けてきました。

これまで安田さんが会わなかったのには、しっかりとした意志と理由がある。会ってもプラスはない。だからこそ、いろいろ考えて、会わないことを決めた。二人の人生が交わることはないと僕は思っていました。

融季さんのYouTubeデビュー、そして、二人の再会。そんな展開が出てくるたびに、二人をよく知る芸人さんや関係者とあらゆる話をしてきました。取材というか、互いに互いの気持ちを抑えるような場でもありましたが、その中でいろいろな話も聞いてきました。

久々の再開となった日、安田さんは記者がいることを知らずに約束の場所に向かいました。

会わなかった理由をいったん横に置き、会いに行った安田さん。そこで、待っていたのは想像すらしていなかった状況でした。その場で怒りを爆発させたと聞きます。

自分自身、芸能記者を22年やってきた中でつくづく思いますが、記者は人間関係の修復屋でもないし、何かあった人を再び世の中に戻す再生工場でもありません。世の中の関心や伝える意義と向き合って、取材すべきことを取材し、それを過不足なく伝える。それが本道だと考えています。

ただ、書く仕事をする中で、いろいろな“何かあった人”にインタビューをする機会にも、僕は数多く恵まれてきました。

相方が“闇営業”騒動の渦中にあった田村淳さん。

税金問題から復帰する際の徳井義実さん。

新型コロナ関連でバッシングを受けた石田純一さん。

誰かの肩を持つなんてことではありませんが、何かあった人の取材はより一層センシティブな要素を含むものでもあります。取材のタイミング、その後の流れ、関係各所との調整。自分の範疇でできる下ごしらえは、極力丁寧にやってきたつもりです。

融季さんが多くの人に迷惑をかけたのは事実です。それは本人も痛いほどわかっている。その中での再出発。しかも、人知れず包丁職人を目指すとかではなく、全世界に発信するYouTubeを主戦場として活動する。そこで必要なことは何なのか。

迷惑をかけた人にしっかりと話をして、理解を得る。迷惑をかけた人の数だけ、その流れを繰り返す。ものすごく難しい話ですが、もう一回人前に出る仕事を始めるならば、必須だと僕は思いますし、思うからこそ、直接本人に伝えました。

融季さんは根っからの芸人。良くも悪くも、強く思います。

奔放な面を見せるのも芸人さんの魅力ではありますが、その後味を必ず“笑い”に帰結させるのも芸人さんならではのムーブ。

人前に出る決意をしたのならば、多くの人を心の底から笑わせてほしい。勝手ながら、そう願わずにはいられません。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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