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英国防省がイラン製軍事ドローン枯渇の見解を出した直後に奇襲:ウクライナ空軍が14機中11機を迎撃

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。

2022年10月からロシア軍はミサイルとイラン政府が提供した標的に向かって突っ込んでいき爆発する、いわゆる神風ドローンの「シャハド136(Shahed136)」、「シャハド131(Shahed131)」で首都キーウを攻撃して、国際人道法(武力紛争法)の軍事目標主義を無視して軍事施設ではない民間の建物に攻撃を行っている。一般市民の犠牲者も出ている。毎日立て続けにロシア軍はイラン製軍事ドローン「シャハド136」と「シャハド131」を大量に投入してウクライナ全土に攻撃を行っていた。

英国防省は2023年2月25日に、2023年2月15日からイラン製軍事ドローンが使用されていないことから、イラン製軍事ドローンの在庫が枯渇したのではないかという見解を示していた。

だが英国防省がイラン製軍事ドローンは枯渇したのではないかというインテリジェンス・レポートを発出した2日後の2023年2月27日には、英国防省のインテリジェンス・レポートを否定するかのようにロシア軍が14機のイラン製軍事ドローンで奇襲をしかけてきた。そのうち11機はウクライナ空軍によって迎撃されて破壊された。

英国防省では定期的にウクライナ情勢に関するインテリジェンス・レポートを公表している。2022年11月にもロシア軍のイラン製軍事ドローンが枯渇したのではないかという見解を示していた。だが2022年11月も英国防省がレポートを発出するとすぐにロシア軍はイラン製軍事ドローンを使用してウクライナの軍事施設や民間インフラを標的にして攻撃をしてきた。

ロシア軍が英国防省のレポートを待って、イラン製軍事ドローンが枯渇してしまったと油断させてから攻撃をしているとは考えにくい。実際には一時的にイラン製軍事ドローンの在庫はなくなっていたかもしれないが、すぐに追加で調達したのだろう。そしてイラン製軍事ドローンでの攻撃がなかった間もロシア軍はミサイルなどで空中からの攻撃は止まっていなかった。

▼ウクライナ空軍がイラン製軍事ドローン14機中11機を迎撃と発表(2023年2月27日)

▼英国防省がイラン製軍事ドローンが枯渇した可能性があるとの見解を発表(2023年2月25日)

▼イラン製軍事ドローン「シャハド136」

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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