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9月に入り投打の不振に続き登板回避まで!大谷翔平の二刀流フル回転はやはり無理があったのか?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
9月に入り投打ともに不振が続く大谷翔平選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【大谷選手が右腕痛で18日の登板を回避】

 エンジェルスのジョー・マドン監督が現地時間9月16日のホワイトソックス戦前に行われたオンライン会見で、18日のアスレチックス戦に予定されていた大谷翔平選手の登板を回避させることを明らかにした。

 指揮官によれば、大谷選手は前日(15日)に行ったキャッチボールで右腕の違和感を訴えたという。そのためメディカルスタッフらを交えて話し合いを行った結果、登板回避を決めたもの。

 またマドン監督は、現時点で医師の診断を受ける予定はなく、経過観察を行いながら今後の方針を決めていくとしており、まだ今シーズン中の登板復帰の可能性を示唆している。

【本来ならシャットダウンすべき状況】

 チームはポストシーズン進出の可能性が絶望的で、すでに残りシーズンは消化試合の意味合いが強い。今シーズンは開幕から二刀流としてフル回転してきた大谷選手のことを考慮すれば、右腕痛を起こした時点で本来なら投手としての出場をシャットダウンするのが妥当なところだ。

 マドン監督も話し合いの中でシャットダウンについても提案したようだが、シーズン10勝に王手がかかる状況からも、まずは今後の回復状況を確認する方向で決着したようだ。

 ただ単純にシーズン10勝の可能性を残すだけの投手なら、シャットダウンさせていただろう。だが大谷選手はベーブ・ルース選手以来103年ぶりの「2桁勝利+2桁本塁打」達成の期待がかかることから、マドン監督にとっても苦渋の決断だったはずだ。

【9月に入り投打ともに明らかな失速をみせる大谷選手】

 今シーズンもマックス・シャーザー投手やジェイコブ・デグロム投手らMLBを代表する先発投手でも身体に異変を起こして登板回避しており、今回の登板回避は決して珍しいものではない。

 さらに大谷選手はシーズン前半戦でも爪が割れてしまい、登板回避したケースもある。ただ腕の不調を訴えたことはなかった。それがシーズンも押し詰まったこの時期に起こってしまったのは、単なる偶然なのだろうか。

 繰り返しになるが、今シーズンの大谷選手はまさに二刀流としてフル回転してきた。マドン監督の方針で、今シーズンは日本ハム時代から続いていた二刀流起用の制限をなくし、登板日前後でもDHとして出場し、登板日もDH解除で打席に立つ機会が多くなった。

 また「誰もやっていないことをしているのだから一番理解しているのは彼自身」との立場から、マドン監督は最終的な起用判断を大谷選手の考えに委ねてきた。

 その一方で大谷選手は、「どんな時でも使って貰えるわけではない。自分から出ないと伝えるつもりはない」という姿勢を貫いており、両者の間に多少のズレがある中でフル回転を続けてきた。

 そうした中で投打にわたり人々を魅了し、今やMVP最有力候補に挙げられる活躍をしてきたわけだが、残念ながら9月に入り投打ともにすっかり失速してしまっている。

 9月の月間成績を見ると、まず投手としては防御率が月別最悪の6.97で、被打率も同じく月別最悪の.356を記録。また打者としても打率.158、長打率.316は、ともに月別最悪だ。

 こうした不振の原因として、フル回転による疲労が影響していると考えない人はいないだろう。また蓄積された疲労から投球フォームのバランスが崩れ、右腕の不調が起こったとも考えられないだろうか。

【今も課題が残る二刀流起用法】

 もちろん起用するマドン監督、そして起用される大谷選手にとっても、二刀流フル回転は初めての経験であり、手探りのシーズンだったことは間違いない。だが今シーズンの起用法では、シーズン最後までコンディションを維持できなかったと考えるべきだろう。

 またこのまま大きなケガもなく二刀流を続けながらシーズンを終えられたとしても、もしエンジェルスがポストシーズンに出場していたならば、さらにプレーを続ける体力を残すことができていただろうか。

 しかも投打にわたり大きな影響力を及ぼす存在なのだ。選手、チームとして最も重要な時期に戦力にならないような事態に陥れば、まさに本末転倒になってしまいかねない。

 残念ながら今回の登板回避は、今シーズンの大谷選手起用法に多少の無理があったことを露呈してしまったように思う。大谷選手が二刀流にこだわり続ける限り、来シーズン以降も続く大きな課題になっていきそうだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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