プロ野球オフの「勝ち組」と「負け組」その1 「王者は広島、続くは巨人、ロッテ&中日も実は勝ち組」
暖冬と言われてきたが、ここにきて寒さが厳しさを増している。しかし、冬来たりなば春遠からじ。あと10日足らずでプロ野球はキャンプイン。球春はそこまで来ているのだ。それで、2015-16年オフの各球団の活動を評価してみたいと思う。題して「ストーブリーグの勝ち組と負け組」。2回に分けてお伝えする。まずは「勝ち組」から。
広島東洋カープ
2つの大きな課題をベストシナリオでクリアしたこの球団は、まちがいなくこのオフの王者だ。前田健太を最適なタイミングでリリースし、最大限の見返りを得た。ポスティングがもう1年遅ければ、2000万ドルを手にできた保証はない。今季終了後には現行のポスティング制度が失効する。次期制度の中身の交渉では、MLB側はNPBサイドのメリット低減を図って来るだろう。前田は今回の健康診断で「イレギュラーが見つかった」だけに、1年後だったら故障等で価値が減じる可能性も否定できなかった。
一方で、黒田博樹の残留は決まった。彼が引退していれば両エースの喪失となり、ここ数年の全国的なカープブームや地元ファンの熱狂に水を差すことになるところだった。実際にはカープは前田を(いやな言い方だが)「うまく売りきった」訳だが、「マエケンの夢を叶えてあげた」善玉の評価を得て、黒田の現役続行の決断によりファンの夢と希望を繋ぎとめた。球団自らの努力による成果というよりラッキーな部分も否めないが、これは結果オーライだろう。
読売ジャイアンツ
いまや、真剣に戦力強化に取り組んでいるのはこの球団とソフトバンクだけと言い切っても良いかもしれない。ギャレット・ジョーンズ(登録名はギャレット)は、四球を選べず三振が多いという粗さが嫌われてメジャーでの評価は低かったが、パンチ力は間違いなく一級品だ。肝心なのは、高橋由伸新監督が彼が日本野球に慣れるまである程度辛抱強く使い続けてあげることだろう。その点、原辰徳前監督は見切りが早すぎた。また、三軍制の発足も大いに評価できる。
千葉ロッテ マリーンズ
今江敏晃を引き止めず彼の人的補償も求めなかったことで、ともすれば「やる気なし」の烙印を押されがちだ。しかし、人気者とはいえ年俸は2億円で四球を選べず長打力もない32歳を引き止めないというのは、緊縮予算の球団にとってひとつの見識だと思う。東北楽天から受け取る金銭補償1億6000万円も、結果的にヤマイコ・ナバーロ獲得の原資になっており、「社内留保」ではない。
中日ドラゴンズ
もっとも誤解されている球団だろう。このオフ(というか昨シーズン中から)世代交代は果たしたし、26歳でメジャー66発のダヤン・ビシエドも獲得した。彼は究極のフリースインガーだが、ウィリー・モー・ペーニャくらいの活躍は期待できるだろう(よもや、21世紀のチャーリー・スパイクスではあるまい)。39歳になる多村仁志を獲得したのも育成枠でのことで、若返り方針と矛盾する行為ではない。むしろ、他球団もこれくらいの案をひねり出せと言いたい。
次回のその2では「負け組」として、オリックス、阪神、横浜DeNAを取り上げる。