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プロ野球オフの「勝ち組」と「負け組」その2「もう醒めた?オリックスの補強熱、話題重視の阪神他」

豊浦彰太郎Baseball Writer
一度の失敗ににめげず補強は続けて欲しい(写真:ロイター/アフロ)

オフの「勝ち組」と負け組」。前回のその1では勝ち組を取り上げた。その2では、私的負け組を紹介したい。

オリックス バファローズ

個人的には最も残念に思うチーム。14年オフには40億補強で話題をさらったが、昨季その補強選手のほとんどが機能せず5位に終わると、このオフは途端に音なしになった。ぼくは、カネにモノを言わせるような金満補強を必ずしも否定しない。有望な若手を獲得し育成するのが王道だとは思うが、一昔前のヤンキースや巨人のような「とりあえず獲っとけ」的な補強を行う球団が存在することは、プロ野球全体を楽しむためには必要だと思っている。

ただし、札束で横っ面を引っぱたくチーム作りで重要なことは、カネを掛けることは強化の可能性を高めることではあるが、即勝利を保証するものではないこと認識することだ。野球は偶然性に左右されるスポーツだ。どんな実績ある選手も故障や不調に見舞われるというのはよくあることだ。ホンネを言えば、14年オフのオリックスの補強はピークに達した、またはそれを若干過ぎた選手がほとんどで「あとは基本的に坂を下るだけ」だったことは否めない。しかし、重要なのはそれで諦めないことだ。

2015年に22年ぶりのポストシーズン進出を果たしたMLBのブルージェイズは、12年オフに「超、超大型補強」を敢行したが、翌13年はその補強選手のほとんどが期待外れで最下位に転落した。しかし、それでも諦めず、補強を続け昨季ようやく地区優勝を果たした。効率は悪かったと言わざるを得ないが、それも授業料で「ゲームの一部」だ。一度の失敗で醒めてしまうくらいなら、金満補強の道には足を踏み入れるべきではないと思う。

阪神タイガース

このオフ、マット・マートンとの再契約を見送り、基本的にはキャリア晩年にある藤川球児を獲得。金本知憲と掛布雅之をそれぞれ一軍と二軍の監督に迎え入れた。この動きが示しているのは、この球団は「戦力アップのための補強を行う気は特になく、ファンやメディアの注目を集めるネタを確保することが重要と考えている」ということだろう。実は、マートンの代役として契約したマット・ヘイグは中々良い選手ではあるのだけれど。

横浜DeNAベイスターズ

昨季大幅観客増を果たしたマーケティング戦略は中々のものだ。先日発表された横浜スタジアムの買収も大いに評価したい。この球団は間違いなく、プロ野球経営に新風を吹き込んでいる。しかし、それはビジネス面だけの話。旧人類が指揮を執るためかその編成は、「在京セの恩恵に浴し、巨人のコバンザメとして生きていく」戦略だったホエールズ時代から進歩していない。中畑清で味を占めた監督動員力の確保には抜け目なかったが、崩壊状態の先発投手陣をはじめとする戦力面の課題にはほとんど手が付いていない。クライマックスシリーズにいまだ縁がない唯一の球団であることは、決して偶然ではない。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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