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「実力」で再び甲子園へ! 大島の躍進に見る21世紀枠の意義とは?

森本栄浩毎日放送アナウンサー
7年前のセンバツに21世紀枠で出た大島。今度は実力で甲子園に登場する(筆者撮影)

 高校野球は、九州大会を最後に、全国10地区の大会で優勝校が決定し、20日からの明治神宮大会でシーズンを終える。読者の皆さんも、センバツ出場校の顔ぶれを予想されていることだろう。

21世紀枠の意義体現した大島

 来春も21世紀枠は3校が選出されることになっている。この枠を巡っては「出尽くした」感があり、廃止論も出始めている。しかし、7年前のセンバツにこの枠で出た奄美大島の大島が鹿児島大会優勝に続いて九州大会でも準優勝し、「実力」でのセンバツ出場を確実にした。21世紀枠の理念を継承し、さらに力をつける。まさに21世紀枠の意義を体現した歴史的快挙と言える。

「実力」で甲子園に戻ることの価値

 21世紀枠は、部員不足や施設面でのハンディ、災害など、困難を克服して、学業と部活動を両立させているチーム。近年、継続して好成績を収めながら、あと一歩で甲子園出場を逃しているチーム。野球部の頑張りが、校内や地域に好影響を与えているチームに甲子園のチャンスを与えようという理念のもと、2001(平成13)年の73回大会に導入された。筆者は加えて、その後、「実力」で出場することにこそ、大きな価値があると思っている。

実力で再出場は58校中8校

 今春まで21世紀枠で出場したのは58校。うち、その後に「実力」で出場をかち取ったのは、宜野座(沖縄)、鵡川(北海道)、華陵(山口)、利府(宮城)、彦根東(滋賀)、山形中央土佐(高知)、帯広農(北海道)の8校である。特に彦根東が優秀で、09(平成21)年に21世紀枠で出場して以降、近畿大会で大阪桐蔭を破ったり、甲子園で春夏ともに勝利したりしている。大島が来春、選ばれれば9校目となるが、離島勢としては初めてである。

奄美の子どもたちに勇気与えた7年前の甲子園

 野球留学、強豪私学全盛の昨今、公立校にとって甲子園への道は険しくなるばかり。とりわけ、少子化に悩む地方のチームからすれば、甲子園など夢のまた夢、といったところか。それに一石を投じたのが21世紀枠である。出場によって地元が盛り上がり、地域の子どもたちが甲子園を実現可能な目標として意識できる。まさに7年前の大島の出場は、奄美の子どもたちに勇気と感動を与え、再び、夢の舞台を手繰り寄せる原動力となった。

甲子園の春夏連覇校を完封

 試合はネット配信で見ていたが、甲子園春夏連覇経験のある興南(沖縄)を3-0で破った準々決勝には感動した。再試合もあって1回戦2試合で19回を投げていた最速146キロ左腕の大野稼頭央(2年)が、緩急を駆使して強豪を完封。最後は感激のあまり、監督と抱き合って涙していた。配信の模様は、在校生が見守る高校の体育館や島内のホールでも映し出され、大変な盛り上がりだったようである。これこそ、野球部の頑張りが、校内や地域に好影響を与える典型だろう。

現エースは7年前、甲子園にいた

 7年前のセンバツは、その大会で優勝する龍谷大平安(京都)に2-16で大敗したが、アルプススタンドは満員に膨れ上がっていた。実際に取材したわけではないので詳述は避けるが、当時小学生だった大野も、父に連れられてアルプスにいたようである。彼が強豪校からの誘いを断って、島から甲子園をめざしたのも、この体験があったからだろうことは、容易に想像できる。

7年前、応援団最優秀賞

 スタンドで思い出したが、平安の校歌演奏に合わせて、大島のアルプスから手拍子が起こり、「嬉しくて涙が出た」と平安の原田英彦監督(61)を感激させた。この大会で応援団最優秀賞を受けたのは当然だろう。来春、どこまで入場制限が緩和されるかわからないが、同じシーンが、大島の校歌演奏の際に見られることを期待している。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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