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TikTokで人生変わった令和世代 vol.2 〜Tani Yuuki、うじたまい、まつり、sui〜

ふくりゅう音楽コンシェルジュ
TikTok(写真:ロイター/アフロ)

●まだ大人に発見されていないポップカルチャー

2020年『鬼滅の刃』を筆頭に『週刊少年ジャンプ』に連載されている漫画『呪術廻戦』、『Dr.STONE』、『チェンソーマン』など次世代ヒット作品が軒並み誕生している。アニメ化も進み、単行本がそれぞれ数百万部以上売れてはいるのだが、『鬼滅の刃』以外の作品に触れている方はまだまだ多くはなさそうだ。まだ大人には発見されていないポップカルチャーなのだ。

同じく、音楽界隈でいえば瑛人による「香水」の爆発的ヒットが記憶に新しいが、2020年はTikTok発のポップミュージックのヒットが多発した年だ。しかし、瑛人以降の次世代ニューカマーたちもまた、大人に気がつかれていない存在となっている。

そんななか、TikTokが独自ヒットを生み出しやすい、ファンダム(熱狂的なファン化)を生みやすい構造を持つことに着目したい。注目すべきは楽曲作品を逆引きして検索しやすいこと。一度好きな楽曲に出会えると、どんどん横へと連鎖していく沼にハマりやすい構造なのだ。

よって人気曲は宣伝せずとも、人気TikTokerたちによってミーム化、いわゆる二次創作がバズりやすい構造を持つ。TikTok文化圏で次世代の表現者が発見され、バズが起き、二次創作が増えていくことで一気通貫でヒット曲が誕生していくのだ。しかし、TikTokが大人に使われていないというわけではなく、すでに認知度も抜群だ。しかしTikTokは、ユーザーそれぞれの嗜好によってタイムラインにあらわれるレコメンデーション機能が個々にカスタマイズされているがゆえに、世代や趣味嗜好によってフィルターの異なる、見える世界が違うコミュニティーがいくつも生まれているのだろう。限られたチャンネルで、参加型ではなく、カスタマイズされたレコメンデーション機能のないあるテレビとは違うポイントだ。

●ポップミュージックのあり方が変わろうとしている

ヒットの熱量、ザワザワ感を巻き起こしやすいのもTikTokのユニークさだ。たった数秒で魅力を伝えることができるポップミュージックとは相性が良かった。いわゆるミュージックビデオの概念に、“参加型”でありSNS要素が折り重なったことでバズに加速が起きた。インターネットの出現以来、地域や時間軸をこえたコミュニケーションが起きた結果、ヒットの選択肢も増えた。O-Zone「恋のマイアヒ」といったインターネット掲示板から派生したヒット曲、Underground Theaterz、MP3.com、MySpace、ニコニコ動画といった、CGMと呼ばれる音楽投稿の手軽さが、ポップミュージックに変化を生んだのだ。

最近では令和ちゃんによる「能動的一分間」という作品が興味深い。TikTokトレンドワード“きゅんです”、“ぴえん”、“ぱおん”等を歌詞に絶妙に取り入れて、ちょうど一分間の長さにセンス良くまとめた、TikTok愛好家の気持ちを代弁したナンバーだ。余談だが、海外ではTikTokはすでに動画尺を3分尺にする機能をテスト中で、それが実装されれば、また新たな表現の広がりも期待されそうだ。

ポップソングは、レコード時代にはA面/B面=46分などインフラとなるフォーマットに特性があった。CD時代では74分強まで収録でき、さらに曲をスキップできるようになった。ダウンロードやサブスク配信時代には、アルバムから単曲志向へと変化が起きた。同じようにTikTokというプラットホームが生み出したフォーマットの普及によってポップミュージックのあり方が変わろうとしている。下記では、TikTokの登場によって人生が変わった要注目アーティストに「あなたにとってTikTokとは?」と、聞いてみた。

●あなたにとってTikTokとは? 〜Tani Yuuki、うじたまい、まつり、sui〜

TikTokに投稿した「Myra」が注目され、国内サブスクチャートで1位を獲得。さらに、Spotifyのグローバルチャートでは4位に輝いたTani Yuuki。その人気はとどまることを知らず、YouTubeの人気コンテンツ『THE FIRST TAKE』への出演へと広がりをみせている。シンガーソングライターが世に出る手段はこれまでオーディションやライブ活動がメインだったが、TikTokによって道が拓けたのがTani Yuukiなのだ。

Tani Yuuki(写真: 石丸敦章)
Tani Yuuki(写真: 石丸敦章)

「こんなに広がってくれるとは思ってなかったので、僕自身びっくりしています。最初にTikTokにワンコーラスだけ投稿したんですけど、それが投稿してすぐに「いいね」が500くらいついて、再生数も何千とかになって。これはすごいことになってるなと。」(TaniYuuki)

東京生まれ東京育ちのマルチクリエイター、うじたまい。不登校になった自らの経験をTikTokで歌った「September 調子はどうだい」が、多くのユーザーに拡散され、瞬く間にSNSで大流行した。時代を代表する開拓者のひとりだ。すでに関連動画再生回数1億回をゆうに突破。現在は、スターミュージック・エンタテインメントに所属し、“身近に寄り添ううた”をコンセプトとして作品をリリースしている。

うじたまい(写真: 石丸敦章)
うじたまい(写真: 石丸敦章)

「音楽レーベル・Star Music Entertainment Inc.の方も(TikTokで)バズった後に歌うまタグをつけてあげていた動画を見て、私を見つけてくれたみたいで。音楽活動もそこからスタートしました。当時は“流行っているものをやろう!”っていうのがあって、とりあえずTikTokでは流行のものを更新してましたね。」(うじたまい)

TikTokのフォロワーが119万人を数え、YouYubeチャンネルにアップしたオリジナル曲「だーりん。」は公開から数ヵ月足らずで100万回再生を超えるという快挙を達成。そして今年5月には配信リリースデビューしたのがまつりだ。顔出しし、実体験をもとに紡ぎ上げられるやさしい世界観と、耳にほっこりと馴染んで離れない歌声が魅力の彼女。TikTokをきっかけに飛躍したシンガーソングライターのひとりだ。

まつり(写真: 石丸敦章)
まつり(写真: 石丸敦章)

「どんどん音楽で繋がる人が増えていきました。ライブハウスで音楽のことを話せる人が増えたぶん、学校の友達とは話が合わなくなったりもしましたけど、全然平気でしたね。その頃には“音楽にもっと時間を使いたい、学校に行く必要ないじゃん”って思い始めて、去年10月に高校をやめたんです。」(まつり)

TikTokで、5月に発表した自身のオリジナル曲「エピソード」がバズった17歳のシンガーソングライター、sui。YouTubeで公開した同曲の動画再生回数は300万回再生を突破。続いてサブスクで公開した新曲「可愛い君が愛おしい!」も上位にランクイン。Spotifyバイラルチャートにも入っている。また10月12日には「ふたりなら」をリリースし、LINE MUSICのチャートで最高位5位まで上昇した要注目の逸材だ。

sui(写真: 石丸敦章)
sui(写真: 石丸敦章)

「“好きなアーティストさんの曲を演奏してYouTubeに上げてみたい”とは思っていました。実際にあげて上げてみたのは高校に入って自分の時間ができてからだったんですけど、ずっと自分は動画を見る側としてTikTokをやっていました。始めるちょっと前に、“にんじんさん”って弾き語りの方の動画を見て。自分もこういう風に活動したら楽しいだろうなって思って、後押しされて始めましたね。一瞬で共有されて、すぐ届くっていうのがTikTokは群を抜いて早いですね。」(sui)

vol.1はこちら

『TikTokで人生変わった令和世代 vol.1 〜りりあ。、ひらめ、もさを。〜』

https://news.yahoo.co.jp/byline/fukuryu/20201216-00212766/

音楽コンシェルジュ

happy dragon.LLC 代表 / Yahoo!ニュース、Spotify、fm yokohama、J-WAVE、ビルボードジャパン、ROCKIN’ON JAPANなどで、書いたり喋ったり考えたり。……WEBサービスのスタートアップ、アーティストのプロデュースやプランニングなども。著書『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本』(ダイヤモンド社)布袋寅泰、DREAMS COME TRUE、TM NETWORKのツアーパンフ執筆。SMAP公式タブロイド風新聞、『別冊カドカワ 布袋寅泰』、『小室哲哉ぴあ TM編&TK編、globe編』、『氷室京介ぴあ』、『ケツメイシぴあ』など

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